10-3

 2月になって、私のお誕生日には、いつものホテルではなくて、近くの洋食屋さんでと私からお願いした。


「香波 こうやって だんだんと大人になっていって、そのうちワシから離れてしまうのかと思うと少しさびしいが、ますます綺麗になっていくのでうれしいよ」と、お父さんが言ってきた。


「お父さん・・ まだ、先のことですよ まだ、しばらくはお世話になります」


 お店の人が日生のものですと言って、前菜に焼き牡蠣が並べられてきた。


「おぉー 香波の故郷のものをと言っておいたのだよ 懐かしいだろー」と、お父さんが自慢げに私に言ってきて


「えぇ わざわざ 頼んでくださったのですかー うれしい」と、私は言ったのだけど、実際はあんまり食べたことが無かったのだ。島の生活では、手に入ることは無かったから。でも、お父さんが私に気を使ってくれているのが嬉しかった。


 その日の夜、お姉ちゃんが


「香波 お店 衣替えするね クレープはやめて、ホットサンドとジュースだけにするわ それと、ティクアウトに力を入れるわ 多分 コロナが蔓延して、大変なことになるからね」


「お姉ちゃん そのコロナって 大変なの?」


「うん 収まればいいけどね なんか 大変なことのような気がする 人に感染するから・・」


「そう 私には、ピンとこないけど・・」


「あとね すみれちゃんが うちのテイクアウトの商品を自分のとこでも扱いたいんだって それに、もう1台 自分のところの販売車を増やすらしいよ あの人もやり手よねー」


「・・・評判いいみたいですね あそこのパン」


「うん 調子好いみたい だから、うちのホットサンドの扱いの件 香波 打ち合わせしておいてね 全部 任すから」


「えぇー お姉ちゃん そんなー 私 困ります なんにも わからないですし・・」


「いいの 自分で考えてやってみてー 私ね 木屋町にもう1軒 お店 考えていたんだけど 中止にしたの なんか、人も集まらないしね 嫌な感じもするし こんな時は、香波みたいに 怖いもの知らずのほうが、好い考えが浮かぶと思うし、思いっきりやって 失敗しても、私が責任持つからね」


「もうー お姉ちゃんは いつも そんな調子なんだからー 私 振り回されてるんだよー」


「いいの 香波は賢いんだから 信頼してる それに、もう18なんだから、少しぐらいはお化粧すればー そのままでも、可愛いんだけどさー」と、抱きしめられて、また、誤魔化されてしまった。


「私は お姉ちゃんが言うんだったら、頑張るからね」


 その日は、お姉ちゃんのベッドにもぐりこんで、寝てしまった。


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