【No. 119】じゃあちょっと子供の頃に手放した本と大人になってから再会した話でもしますね、まあこれ小説って言うよりただの体験談なんですけど

 皆さんは自分が手放した本と別の場所で再会した経験ってありますか。僕はあるんですよ。それも子供の頃に地元の古本屋っていうか、古書店半分ホビーショップ半分みたいな店に買取に出した児童書と、十年くらい経ってから別の地域の図書館で再会したっていう話なんですけどね。ガオレンジャーの年に出たケイブンシャの『スーパー戦隊大百科』っていう本なんですけど。まずケイブンシャの大百科って皆さん通じます? ちょうど僕が小学生の頃まで出てたんですよ。年度で言うと2001年ですね、その直後に倒産しちゃったんですけど。だから戦隊で言うとガオレンジャーまで、仮面ライダーで言うとアギトまでしか出てないですね。でもケイブンシャの大百科っていうと昔はウルトラマンとか怪獣物とかの子供向け図鑑の人気ブランドで、ほらあの文庫サイズのちょっと分厚いやつですよ、一般の怪奇映画とかオカルト系とかの百科もあってよく小学校の図書室に置いてあったりしたので、多分皆さんも一度は見たことあると思うんですけど。その手の百科系で今も生き残ってるのって小学館のてれびくんデラックス愛蔵版、いわゆる超全集と、講談社の超百科系ですよね。でもこれらはB5版サイズの大きい本じゃないですか、それに対してケイブンシャの大百科は文庫サイズにぎっしり情報が詰め込まれてて、昔の子供的にはまさに怪獣博士的なワクワク感があったと思うんですよね。その源流を遡ると1971年の『原色怪獣怪人大百科』に行き着くんですけど、まあ僕はオタクじゃないんでそのへんの経緯は割愛しますけどね。そのケイブンシャの倒産前の最後の年にやってたガオレンジャーっていうのがちょうど、戦隊シリーズ25作記念のアニバーサリー作品で、まあこの前年のタイムレンジャーの時に石ノ森章太郎原作のゴレンジャーとジャッカーの2作を改めてシリーズに含める形で「スーパー戦隊シリーズ」の定義の再編があったりして、続くガオレンジャーで大々的に25作記念のお祭りをやったって流れなんですが。今なにげに言いましたけど「スーパー戦隊」って皆さんに通じます? いわゆる戦隊物とかレンジャー物とか言われてるやつの正式なシリーズ名なんですが、これはもともと1981年のサンバルカンの頃から一部書籍で使われていて、昔はざっくりゴレンジャーとジャッカーも含んでたんですが、1988年のライブマンの時に東映と石ノ森サイドで何か権利関係で揉めでもしたのか、石ノ森原作の2作を外してバトルフィーバーからを「スーパー戦隊」として扱う形になったんですけど、後のダイレンジャーの頃に和解が成立したみたいで、じゃあゴレンジャー・ジャッカーとバトルフィーバー以降を包括するシリーズ名を改めて付けようってことで、一度は「超世紀全戦隊」とかいう意味不明なシリーズ名を公式が使ってた時期があるんですが、まあお察しの通りこれが全然定着しなくて、数年でどこの出版社も使わなくなって、ギンガマンの頃に出た歴代戦隊の超全集なんて『戦隊ヒーロー超全集』ってタイトルになってましたよね。それが改めて『スーパー戦隊』になったのがタイムレンジャーの時って話なんですけど。それで、さとう珠緒が出てたオーレンジャーの頃から、本編外のビデオ作品で「VSバーサスシリーズ」ってのがリリースされるようになって、これは『カーレンジャーVSたいオーレンジャー』みたいな感じで、その時点での最新作とその一個前の戦隊が共演するというものなんですが、よく皆さん誤解されるのは、この「VSたい」っていうのは別にヒーロー同士が仲間割れするわけじゃなくて、単に東映では『マジンガーZ対デビルマン』の昔から、正義の味方同士の共演物に「たい」という表現をずっと使ってきてるので、そっちの意味なんですけどね。それでガオレンジャーの年のVSバーサス物は順当に行けば『ガオレンジャーVSたいタイムレンジャー』となるところなんですが、まあ記念作だからお祭りをやろうってことなのか、『ガオレンジャーVSたいスーパー戦隊』ってタイトルで歴代戦隊からの選抜メンバーとの共演をやったんですよ。これが原作リスペクトに満ち溢れた大変素晴らしい作品だったんですが、その作中で、歴代戦隊の戦士一人一人を、色じゃなくて「剣の戦士」「技の戦士」「力の戦士」「女性戦士」のカテゴリに分けてその活躍シーンを流すパートがあったんですね。ここで例のケイブンシャの『スーパー戦隊大百科』の話になるんですが、当時の僕はこの『ガオVSたいスパ戦』の歴代戦士の紹介シーンを見て、まあ歴代の全員が漏れなく紹介されてるのは分かりきってはいるんですが、一応確認してみようってことで、ビデオを見ながらこの大百科の各戦士の紹介ページに一個一個「」とか「」とか鉛筆で書き込んでいったんですね。それでまあやっぱり全員漏れなく紹介されてたんですが、その後、中学生くらいの頃にこの大百科を他の本と一緒に地元の古本屋に買取に出したんですよ。それから大学進学で地元を離れて、二十五くらいの時に転職で実家の隣の県に戻ってきたんですが、引っ越したばかりの時に一度この地域の図書館を覗いてみたら、児童書のコーナーに例のケイブンシャの『スーパー戦隊大百科』があって、まあここまで話せばオチが見えてると思うんですが、それが僕が子供の頃に「ケ」だの「ワ」だの書き込んだその本の現物だったんですよね。僕が古本屋に売った本を誰かが買って、それが時を経てこの図書館に寄付か何かされたってことだと思うんですが、地元の図書館ならまだしも県を跨いでるものだから、こういう偶然ってあるんだなって流石にびっくりしましたよね。それで、図書館に置かれたことで多くの子供がこの本を手に取ってると思うんですけど、その何人に一人がこの「ケ」とか「ワ」とかの書き込みの意味がわかるんだろうって考えたらちょっと楽しくなりますよね。『ガオVSたいスパ戦』が通じるレベルの子だったら、この書き込みにもピンときて、前の持ち主の癖というかオタクオーラみたいなものを感じ取ってくれてるかもしれないと思うんですよ、まあ僕自身は別に言うほどオタクでもないんですけど。

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