13.「君の事が知りたいと思うんだ」

「もう朝なのか」

 いつものように目が醒めるとノロノロとベットから出て少し体を動かす。

 子どもの頃からメイドさん達に厳しく躾けられていたから規則正しい生活サイクルが身についているんだ。

 携帯を開くと相倉さんからLIMEにメッセージが届いていたから返事を書いておいた。

 僕が書いたメッセージが女子寮にいる彼女に届いていると思う。

 誰かとこういう風にやり取りする事に充実感を得ている。

 昨日の出来事を思い出すと学校に行くのが億劫になるけど何とか頑張ろうと「よし!」って気合いを入れて寮の部屋を出た。


 登校時間にはまだ余裕がある。僕は中庭をゆっくりと歩いて校舎の方へ向かう。

 この学園に入学してから慌ただしい毎日を過ごしている。

 初日に話しかけてきた小阪さん、僕はまだ彼女に苦手意識がある…………。

 クラスは別だけど初めて友達になった相倉さん。

 お昼に一緒にお弁当を食べた事、初めて家族以外の人と連絡先を交換した事。

 そういえば同じクラスの御崎さんとも話をしたんだっけ。

 中学の頃は友達がいなかった僕が短い時間で仲良くなれそうな人を見つけるなんてね。

 御崎さんとも連絡先の交換をしたいけれど教えてくれるかな? 


 でも、彼女達はきっと“ハーレム・プロジェクト”の為に僕と親しくなりたいだけなんだろうな。

 学園に通う女子みんなにチャンスがあるわけだから必死にもなる。

 最終的に選ぶのは自分だけど本当に恋愛関係になれるような子に出会えるのかな? 


 教室に入ると一斉に視線を向けられる。

 最初入学した時とは随分変わったなと思う。

 授業の休み時間にクラスの女子から話しかけられる機会も増えてきた。

 話してみると良い子ばかりだと言う事はわかるのだけれど、どうしても彼女達が何を考えているのか探るような態度を取ってしまう。

 僕自身しっかりと向き合っていかなくちゃいけない。


「おはよう」

 隣に座っている御崎さんに挨拶をすると——

「——おはよう」

 今日も挨拶を返してくれた、最初に彼女に声をかけた時は無視されていたからその時と比べると今はちゃんと僕の事を認識してくれているんじゃないかな。


「御崎さんに後で話があるだけど時間あるかな?」

「話? 一体なによ」

 疑うような視線向けられても僕は怯むことなく話を続けた。

「放課後、時間あるならちょっとだけ付き合ってほしいんだけど」

「何か企んでる?」

 企むなんて酷いなあ…………。

 僕はただ、御崎さんと連絡先を交換したいだけなのに。

 彼女は特に予定は無いみたいで放課後、僕の話を聞いてくれる約束をした。

 これから授業が始まるというのに僕はその時が待ち遠しくて仕方が無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る