第10話

 次の日、藍里はハッとして目が覚めた。何かお尻から冷たい感じが……。

 飛び上がってみるとお尻の辺りから血が。そう、藍里も生理が来てしまったのだ。幸いまだそこまで大量ではないのだが、ショーツはもちろんズボン、敷布団の上に載っている敷きパッドが血で汚れた。


「最悪」


 自分自身も時雨に恋をし、ひさしぶりに幼馴染に会って成長した姿に浮かれてしまったのか? と思いながらも敷きパッドを丸めて持って洗面所に向かう。まだ朝も早い。台所には時雨はいるとして洗面所に向かうまでにお尻の血のシミが見えないよう前後逆にして、制服一式も持っていきこっそり部屋から出て洗面所に向かう。


 ちなみに生理用品はさくらが買ってきて、血で汚れた場合は自分達で洗う。もちろん敷きパッドとかと同様だ。それはさくらと藍里母娘が時雨と同棲する時に決めたルールでもあった。


 藍里はまず新しい生理用のショーツに夜用のナプキンをつけてタオルと共に置いておく。夜用にしたのもこの数年自分の血液の流出する量が多いとわかっているからである。

 全部服を脱いでシャワーを浴びる。髪の毛はしっかり束ねて。

 まだ始まったばかりなのかそこまでは出てくることはなかった。


 もしかして、と昨日のちくんとする痛みは恋の苦しみではなくて生理前だったからなのかと。


 浴室で体をタオルで拭き、ナプキンをつけたショーツを履き、浴室から出る。


 ついでにシャツも替えて制服を着る。その時だった。


 トントン


 扉を叩く音。藍里はびっくりした。

「藍里ちゃん?」

 時雨の声だった。きっとシャワーの音が聞こえたからか来たのだろう。今からショーツやシーツに着いた血液汚れを流そうとしたのだが。


「う、うん」

「ごめん……洗濯したいんだけどシャワーならまた後で呼んでね」

「わかった」


 藍里は心臓がバクバクと言っているのに気づく。鍵はかけられる洗面所だった。


 慌てて血液洗剤を取り出してかけたらたくさん出てしまって慌てる。

 しかもいつもよりも朝早く目が覚めて少し眠い。

 生理が来るたび女じゃなきゃよかったのにと口走ってしまう藍里。さくらも頷いていた。


 でもこの数日辛いだけで乗り越えればなんとかなる、また汚したりしないだろうか。それを時雨に見られてしまったら。恥ずかしい、そんな気持ちばかりだ。


 完全には落ちたわけではないかある程度汚れは落ちた。血液洗剤の独特な匂いが鼻にツンと来る。

 この匂いだけでも勘付かれやしないか、ましてや洗濯機の中に敷きパッドが突っ込まれていたら……わかってしまうだろう。


 いや何か聞かれたらもう替えたくて、といえばいいのか。いつも一週間に一回カゴに突っ込んであとは時雨に任せている自分に反省する。


 いつもならこれくらいなのかな、と思う生理の日もなぜか藍里が思ってたのよりも早すぎて事前にナプキンを仕込むこともできなかったと思いながらも、生理はうつる、さくらからうつったんだろうという高校生ながらの安易な考えを思い浮かべる。


 ショーツ、パジャマは洗濯機に入れたが一部洗って濡れた敷きパッドはどうすればいいのか。むやみに入れるとパンパンだから時雨に出されてバレてしまうのではないか……。

 藍里はぐるぐる悩んでいた。


 確かに今入れるのパンパンだと目視して藍里は悩む。

「どうしよう」

 すぐ近くには大きなカゴ。藍里は堪忍して洗った部分を折り畳んだ敷きパッドを詰め込んだ。


 結局は諦めた。このまま入れてくれるのだろう……と藍里は洗面所を出た。

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