孤独な王女は隣国の王子と幸せになります

@karamimi

第1話 婚約者とお姉様に裏切られました

温かな陽気に包まれた昼下がり、王宮に備え付けられている訓練場で魔力を放出する。


私、カトリーナ・マレッティアは、マレッティア王国の第7王女で15歳。この世界では、全ての人が多かれ少なかれ魔力を持っている。魔力がないと、生きていけないのだ。そんな私は、普通の人以上に魔力量が多く、定期的に放出しないと命の危険に晒される。


そのため、こうやって毎日訓練場で魔力を放出しているのだ。


「あら、カトリーナ。またこんな訓練場で魔力を放出しているの?毎日毎日、大変ね」


話しかけて来たのは、第6王女で2つ上のセリーヌお姉様だ。


「はい、魔力を放出しないと、生きていけないので」


「無駄に魔力が高いと言うだけで、公爵令息のダーク様と婚約できるのだから、いいわよね。たかが元男爵令嬢の娘の分際で!お父様をそそのかしたあんたの母親と同じで、運だけはある様ね」


相変わらず嫌味なお姉様だ。王妃様の娘でもあるセリーヌお姉様は、元男爵令嬢の母を持つ私の事を毛嫌いしている。そもそも婚約者のダーク様の事は、お父様が決めた事であって、私が決めた訳ではないのだ。



「それにしても、ダーク様も気の毒よね。あなたの様な、魔力だけ高い女と無理やり結婚させらるのだから」


いつもの様に嫌味を言い続けるお姉様。さすがにもう聞き飽きたわ。この人、私に嫌味を言う以外、生きがいはないのかしら?


お姉様を無視して王宮に戻ろうとした時だった。


「やあ、カトリーナ。こんなところにいたんだね」


噂をすれば、ダーク様だ。美しい金色の髪に、グレーの瞳をした男性。公爵家の嫡男で、私にもいつも優しく接してくれる素敵な男性だ。実は私はずっとダーク様に憧れていた。


ダーク様との婚約が決まった時、天にも昇る程嬉しかった。唯一の味方でもあったお母様を亡くして以降、ダーク様が私の唯一の生きる喜びだ。彼が側にいてほほ笑んでくれるだけで、とても幸せな気持ちになれる。


そんなダーク様、いつも


“カトリーナ、辛い思いをさせてごめんね。あと少しで一緒になれるね。それまで、どうかこの王宮で耐えてほしい”


そう言ってくれる。彼が心配してくれるだけで、私は嬉しいのだ。



実は私が16歳になったタイミングで、ダーク様の元に嫁ぐことも決まっている。後半年もすれば、私は王宮を出て大好きなダーク様と結婚できる。お姉様の嫌味を聞くのも後少しと思えば、どうって事はない。


「まあ、ダーク様。わざわざこんなところに来てくださったのですね。さあ、お部屋に戻って一緒にお茶にしましょう」


すっと、ダーク様の手を取る。すると次の瞬間、なぜか振り払われたうえ、風魔法で吹き飛ばされた。さらに、セリーヌお姉様が炎魔法を私に向かって放ったのだ。


一瞬何が起こったのかわからなかったが、すぐに防御魔法で防いだ。でも、その炎魔法がお姉様に跳ね返る。


「キャァァァーー、熱いわ!誰か」


ものすごい勢いで叫ぶお姉様。大変、すぐに火を消さないと。でも私より先に火を消したのは、ダーク様だった。


セリーヌお姉様の叫び声を聞いて、飛んできたメイドや護衛騎士たち。


「一体どうされたのですか?まあ、セリーヌ王女様!一体どうされたのですか?」


服は焼け焦げ、髪はちりちりになり、あちらこちらやけどをしている。すぐに手当てをしないと。そう思い、お姉様の元に駆けつけようとしたのだが…


「セリーヌ王女に近づくな。おい、そこの護衛騎士、カトリーナがセリーヌ王女に急に攻撃魔法をかけたんだ。すぐに地下牢に連れていけ。それから、彼女は魔力量が多い。魔力を無力化するリングも付けろ」


「ダーク様、一体何を言っているのですか?私はただ…」


「黙れ!僕はこの目で、君がセリーヌ王女を傷つける瞬間を見たんだ。いくら君が僕の婚約者だからと言って、姉を殺そうとするなんて信じられない」


「カトリーナ、ごめんなさい…私の事をそこまで嫌っていただなんて…」


ダーク様の腕の中でメソメソ泣くセリーヌお姉様。呆然と立ち尽くす私に、すかさず魔力を無力化するリングを付け、そのまま連れていく護衛騎士。


ふとセリーヌお姉様の方を見ると、ダーク様に抱きかかえられて泣いていた。でも次の瞬間、私の方を見てニヤリと笑った。


あぁ…私はきっとセリーヌお姉様に嵌められたんだわ。ダーク様はお姉様の協力者だったのね…


全てを理解した瞬間だった。



~あとがき~

新連載始めました。

よろしくお願いしますm(__)m

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