富める者へのラブレター
「法王院雪久様。
突然、この様な手紙を渡されて驚いていると思います。
私は3年C組の滝川青乃といいます。
ずっと抱いている想いを伝えたくて、この手紙を書いています。
あなたの事が好きです。
あなたは私の理想の人です。
私はあなたの経済力に惚れました。
あなたの顔でも、性格でも、学力でもありません。
あなたの持つお金が大好きなのです。
将来、お父様が最高経営責任者である法王院ホールディングスを受け継ぐ長男のあなたは、やがて一代では使い切れない財をお持ちになるでしょう。
既に帝王学が施されたあなたは更なる繁栄をさせこそすれ、決して家業を潰したり、他人にのっとられたりはしないでしょう。
あなたには成功者の貫禄があります。
実家より大変なお小遣いをいただいていると話に聞きました。
なのにあなたはガールフレンドもなく、今まで恋人を作った事がありませんね。
自分で言うのもなんですが、私のセンスは非常に磨かれています。
私を恋人にしていただければ、ただの散財ではなく、あなたの気に入る趣味のいい豪遊をし続ける自信があります。
私があなたに捧げられるものは、お金が続く限りの一心不乱の愛しかありません。
私の実家は貧乏で、高校を卒業したら、その翌日から性風俗で働く事になります。
残念な事に、私の成績と性格の悪さと実家の借金がそれ以外の就業をよしとしないのです。
どうか、私を救って下さい。
あなたが「髪型を縦ロールにしろ」と言われたら縦ロールにします。
「いつも高笑いをしろ」というのなら、羽根扇子を手に高笑いをします。
口調を「およろしくてよ」というのなら、そうします。
今の私とはどれもかけはなれたものばかりですけれど。
お願いです。どうか私を見捨てないでください。
お金が続く限り、心からあなたを愛します。
そして、あなたからお金が尽きる事はないと私は確信しています。
一生の愛を約束します。
友達には財産目当ての愛など不純だという人もいますが、顔のよさや性格のよさ目当てが純粋で、何故財産目当てが不純なのでしょう。
年老いて衰える美しさより、お金が尽きない限りの純粋な愛を。
今日の放課後、告白の木の下で待っています。
きっと来て、私に答えてください。
青乃より。」
法王院青乃はたまたま見つけた、十二年前のラブレターをマホガニーの机の引き出しの奥に戻した。
今、彼女は雪久との間に一男二女をもうけている。。
夫以上の愛と財産を捧げると不倫の愛を何度かそそのかさる時もあったが、生涯、夫への愛は曲がる事がなく一途だった。
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