第03話 02月16日
昨年は新型ウイルスの流行で当院も大変だったが、こうしてまた年を重ねられるのも、来院してくださる患者様や働いてくれているスタッフさん、関係各所の御助力あってのことだ。本当に感謝に尽きない。
長いような短いような私の事務長生活。その感謝に応えるためにも私は一意専心に働いてきた。手前味噌もいいところだが。
不器用で馬鹿で、どうしようもない、「ドラ息子」と呼ばれても仕方のないほどダメな私だったが、それでも自分なりに真っ直ぐ努力していたつもりだ。
おかげで浮いた話の一つもなく今日まで過ごしてきた。
もちろん学生時代や
というか、本気で人を好きになったことなど一度もない。
今までお付き合いして下さった女性達には申し訳ないが、今では顔も名前もウロ覚えだ。
そんな寂しい私を置いてけぼりに、学生時代の友人や卸会社の営業さん、近くの薬局にお勤めの男性薬剤師さんなどからは結婚や出産の御話を聞く。ウチで働いてくれている事務員さんや看護師さんも多くが既婚者だ。
はっきり言って
私とて、いい歳の男だ。
今年こそ良い出会いがあれば結婚したい。
だからと言って最初から恋人にする目的で従業員を雇うなど許されるのか。
否、そんなことを考えていてはクリニックなど運営できない。あくまで当院の業務を不自由なく実行できる人財を採用すべきだ。
アイドル事務所じゃないんだ。見た目だけで選んでどうする。確かに〈受付事務〉なのだから、多少は清潔感や見た目の美しさも大事だけれど…。
「とにかく、募集かけるか!」
私は事務所の固定電話をとり、広告代理店の電話を押した。
なお当院で勤務してくれている職員は、
驚くかもしれないが、町の小さな診療所や調剤薬局で『事務職員が正社員』という方が少ないだろう。腎臓内科(透析)や夜間診療をしているクリニックならイザ知らず。ああ、でも隣の調剤薬局みたいにチェーン店なら正社員の事務員さんも居るのかな?
兎にも角にも、そんなわけで当院もパート雇用である。
過去に色々な求人誌や折り込み広告、求人サイトなど試したが、私は〈タブンワーク〉という求人情報サイトが一番肌に合うよう感じた。
求人原稿の内容に関しても、給与面や福利厚生など前回から殆ど変わっていない。打ち合わせも電話とメールで済んだ。
ちなみに以前に『年齢制限とかできますか? 例えば30歳までとか…』と尋ねたことがあったが断られた。そういった文言は人格否定や人物否定につながるのでNGらしい。『学生不可』というのも職業差別になるからダメだそうだ。『高校生不可』はOKらしいが、その区別は否定にならないのか。
それに正社員求人にはよく「大卒以上」とか「〇〇の実務経験者のみ応募可」とか書かれているのを見かける。そういうのも結局は差別に繋がるのではないか?
………ああ、いかん。話が逸れすぎた。
そうして代理店の担当者に電話をしてメールで原稿の確認などを行い、掲載依頼は無事に完了した。
期間は次の月曜日から3週間だ。貴重な医療機関での求人ということで、飲食や販売よりも1週間だけ掲載期間が長いらしい。
おまけに今はキャンペーン期間らしく更に通常より掲載期間を長くして頂いた。
あとは良い応募者が来てくれることを、願うばかりだ。
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