第127話 激しいイチャラブ波動

 次々と結成される様々な戦隊たちの活躍によって、護衛艦フワデラに入ってくるEONポイントが急激に増えてきた。


 まさにガッポガッポウハウハレベルの増収だ。


 そのおかげで、あと半年は掛かるであろうと思われていた悪魔勇者討伐作戦の予算はひと月足らずで到達することができそうだった。


 予定していた日程が繰り上がる可能性が高まってきた。悪魔勇者の居場所についても、なるべく早めに把握しておきたいところだ。


 悪魔勇者と直接対峙したことがあるのはシンイチとライラだ。二人は悪魔勇者の捜索に当たって、一番重要な情報を持っていることは間違いない。


 私は二人から悪魔勇者についての聞き取りを行っていた。


「何度も同じ話をさせて申し訳ないな。それでシンイチに右腕を落とされた悪魔勇者は……」


「真っ黒な蝙蝠怪人みたいなのが飛んできて連れ去って行きました。ちょうどその時、死んだと思っていたライラが息を吹き返したので、奴らを追うどころじゃなくなってしまって……」


 その後、シンイチはライラを連れて戦場中から離れる。そして陽が落ちるのを待ってから、未だ混乱の極みにあった戦場に向けて幼女化解除ビームを放った。


「大半の幼女化解除は出来たと思いますが、あくまでその時に戦場から見える範囲でしかなくて……」


「悪魔勇者や私たちのように戦場から離れていた者たちは、幼女のままということだな」


「ええ」


 その後、シンイチとライラは北を目指した。それ以外の道は、撤退する人類軍と妖異軍で溢れていたからだ。


 蝙蝠怪人は悪魔勇者を西に連れて飛び去ったことはシンイチの証言で分かっていた。


 ドラン平原から西に進み続ければ、悪魔勇者の国であるセイジュウ神聖帝国がある。未知の力で幼女に変えられてしまったのだ、慎重を期して自国に戻ったというのはかなり確度の高そうだ。


「悪魔勇者は現在幼女となっていて、その右腕が失われている。特徴的な外見ではあるな。いや、もしかして悪魔勇者の力で再生したりする可能性も考えられるか」


「幼女化スキルは対象を本当にただの幼女にしてしまうんです。が残ることはあるんですが……身体能力は幼女のはずです」


 外見的な特徴というのはおそらく、竜子のようにワイバーンが幼女化された場合、角と羽と尻尾が残るといったものだろう。


「ショゴタンって巨大アメーバの妖異がいますよね? アレを幼女化すると、幼女の全身に目と口の模様が浮かび上がってきます」


 思っていたよりグロかった。


「そ、そうか……あくまで幼女の状態で右腕を失ったということは、もし本来は再生能力を持っていたとしても、その力が発動されることはないわけだ」


 私の言葉を聞いたシンイチが何かひらめいたという顔をする。


「もしかしたら、奴の率いる妖異の中に寄生して右腕に擬態するようなのがいるかもしれません」


「あーっ、アレみたいな? ミギー腕だし」


「それです! もし右腕があんな感じになっていたとしたら、一見すると普通の幼女にしか見えないかもしれませんね」


 確かにそうかもしれない。


 何しろ悪魔勇者の能力も、セイジュウ神聖帝国にどんな妖異がいるのかも、我々は全く把握していないのだ。


 帝国の常識が通じない異世界に我々はいる。一見すると荒唐無稽に思えることでも、その可能性をむやみに排除するべきではないだろう。


 それまで黙って話を聞いていたライラが口を開く。


「たとえ幼女化しても元々持っていた性格自体は変わりません。あの悪魔は傲慢で傍若無人な態度を隠すことはないはずです。いくら幼女の姿でもその振る舞いを見れば、きっと一目でわかると思います」


「確かにそうだね! さすがライラ!」


「シンイチさま……」


「ライラ……」


 チュッ!


 二人から強烈なラブ波動が放出され始めた。


「ちょーっ! そこまで! そこまで! おいシンイチ! 貴様、まさか幼女のライラに、へへへへ、へんな、へんなことしたりしてないだろうな!」


「「へんなこと?」」


 二人が「チョット、ナニイッテルカワカリマセン」という顔をする。


「いやいやいや、いくら夫婦だからって、今のライラは幼女! 幼女なんだぞ! て、てて帝都条例! 帝都条例違反じゃまいか!」


「あっ!? そういうことですか? 酷いな艦長さん、俺がライラの身体に負担を掛けるようなことするわけないじゃないですか」


「そ、そうか。そ、それなら良いんだ。ちょっと艦長妄想が過ぎたな。申し訳ない。だが、人前でいちゃつくのは関心しないぞ」


 一応、注意しておくことにする。こんなの乗組員クルーの前でやられたらかなわん。


 私の注意を受けて、シンイチは素直に謝罪。


「す、すみません。気が緩むとつい……ルカにもよく𠮟られます」 


「気を付けてくれ、事情を知らない第三者が見たら通報ものだからな」


「「はい。気を付けます」」


 しっかりハモッていた二人の返事に、艦長、逆に不安になってしまった。


 とりあえず会議はここまでにして解散し、私は艦橋へと戻ることに。


 その途中、ふとシンイチの言葉が、頭の中をリフレインする。


『俺がライラの身体に負担を掛けるようなことするわけないじゃないですか』


 ん?


 つまり負担をかけないことはしてるってこと?


 ん?


 艦長は考えるのをやめた。


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