第41話 古代神殿の後始末

「うわぁぁぁぁ! 気付かれたぁぁぁぁ!」


 暗視ゴーグルに浮かび上がってきた無数のミ=ゴ。


 パッと見たところ数十匹はくだらない。


「ギィィィィィィィ!」


 さらに悍ましいのは一番奥にいる5メートル以上はありそう巨大な個体。そいつがゆっくりと浮き上がりつつあった。

 

 しかも浮かび上がったそいつの下半身から、ボトッ、ボトッと音を立てて新たなミ=ゴが産み落とされていく。


「「ぴえぇぇぇぇん!」」


 恐怖で涙がチョチョ切れている私と南大尉の首根っこを坂上大尉が引っ掴んで階段の上に放り投げた。

 

「撃ちます!」


 私たちを投げた反動で前に出た坂上大尉がグレネードランチャーを巨大ミ=ゴに向けて発射する。


 続けて4機のティンダロスもグレネードをミ=ゴたちに向けて放つ。


 ドゴォォォン! ドゴォォオン!


 閃光と爆音でミ=ゴたちが大混乱に陥る。


「撤退だ! ここから逃げるぞ!」


 私たちは古代神殿の出口を目指して駆け始めた。ティンダロスたちが牽制射撃を行いつつ後退。


 ヴィルフォアッシュが両手で魔鉱石を抱えて走っている姿がちょっと面白かった。


 脳カプセルが置かれている広間に戻ると、ここに置いていた飛行ドローンからフワーデの声が響いてきた。


「タカツ! 私にティンダロスの機銃を付けて!」


 ティンダロスの1機が飛行ドローンの横に走り寄ってきた。


「私がやります!」


 坂上大尉が機銃の付け替えを始める。


「タカツ! 私はここに残って敵を足止めするから、その間に安全なところまで逃げて! その後……」


「ミサイルだな?」


「うん!強化型徹甲弾頭搭載タクティカル・トマホーク10発! いつでも行けるよ!」


 ブォォォォン! ブォォォォン!


 階段下から無数の羽音が聞こえてくる。その音からも無礼な侵入者に対するミ=ゴたちの怒りがハッキリと伝わってきた。


「 機銃付替え完了!」


 坂上大尉の声と同時に、飛行ドローンが浮かび上がる。


「ティンダロス1番機と2番機はフワーデとここに残ってミ=ゴを迎撃。残りは私たちと脱出する!」


「「「了!」」」


 私たちが古代神殿前を出る頃になると内部から銃撃音が響き始めた。


「タカツ! ワタシが先導するから付いて来て!」


 機銃を取り外したティンダロス4番機からフワーデの声が聞こえてきた。


「お前、ミ=ゴを迎撃してるんじゃないのか?」


「今はヤマガタがドローンを操作してる!」


 ミ=ゴを迎え撃つ山形砲雷科長の喜々とした笑顔が目に浮かぶ。


 山形の奴……今最高に楽しんでる最中に違いない。


「ミサイル誘導するとき少し大変だから、ヤマガタに手伝ってもらえると助かる!」


 私の考えを察したのかフワーデがすかさず山形へのフォローを入れる。まぁ、フワーデの負荷を軽減しているのなら問題ないか。


 ティンダロスがトコトコとは吹雪く山道を進んで行くその後を、私たちは必死で付いて行った。




~ 対地攻撃 ~


 20分ほど走ったところで、私たちは古代神殿を見上げることができる岩陰に身を潜めた。


「神殿内の様子はどうだ?」


 私がフワーデに尋ねると、ティンダロスから彼女の声が発せられる。


「まだ戦ってるよ! 最初のグレネード攻撃がよほど怖かったみたい! 今はちょっと銃撃するだけでみんな混乱しちゃうの! おっきな個体もドローンを凄く警戒しててほとんど動かないの!」


「トマホークの方はどうだ?」


「いつでも発射できますよ! 艦長!」


「山形ぁ……」


 フワーデではなく山形砲雷科長の声がスピーカーから聞こえてくる。その声にはこれからミサイルを撃てるという期待に満ち溢れていた。

 

 はぁ……まぁ、山形が幸せならそれでいいか。


「目標、古代神殿! タクティカル・トマホーク……」


 私は一呼吸おいて、ティンダロスに向って号令を下す。


「ってぇぇぇ!」


「わかったー!」


 スマホに送られてくる映像には護衛艦フワデラのMk.41 垂直発射システムVLSからタクティカル・トマホークが煙と炎の中から射出される様子が映し出されていた。


 しばらくすると夜空に明るい光体が、海側より飛翔しているのが確認できた。


「な、なんですかあれは!?」


「天から光の矢が……」


「神の怒り……」


「ま、魔法な、なの?」


 事前に説明はしていたのだが、北方人と白狼族には奇跡や魔法のように見えてしまうのは仕方のないことなのだろう。


 私自身、夜空に輝きを放ちながら飛ぶ10発のミサイルに対して、そこに神の意志が宿っているかのように感じていた。


 チュドーーーーン! ドドーン! ドドーン! 


「全弾着弾!」


 ティンダロスのスピーカーから山形砲雷科長の声が響く。


 私は攻撃の結果を双眼鏡で確認する。


 古代神殿は跡形もなく破壊されていた。




~ 後始末 ~

 

 その後、私たちは下山。


 私は一端フワデラに帰艦し、破壊された古代神殿に派遣する調査チームを編成した。


 彼らには残ったミ=ゴの殲滅と魔鉱石の採掘調査、さらにフワーデと砲雷科の率いるティンダロス10機を同行させて可能な限り魔鉱石を持ち帰ってもらう。


 またイザラス村のカラデアを通して、古代神殿を破壊したことと魔鉱石の存在を村長に説明。その後の話し合いによって魔鉱石の採掘はイザラス村が行なうことになった。


 道中の安全のためホドリスとミカエラ、そしてイザラスの三人に銃火器を貸し出すことを条件に、村が採掘した魔鉱石は今後1年間はフワデラだけに提供、以降はフワデラが最優先で購入できる契約を締結。


 こうして……


 護衛艦フワデラは魔鉱石の継続的な供給基地の確保に成功した。


 

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