第39話 白バイ隊員
GW前の木曜日。
彩葉は学校の昼休みを愛琉とルナと一緒に過ごしていた、3人は学校の購買でハンバーガーやいちごオレなどを買ってきて食べている。
「そういや彩葉?アンタ車の免許取ったんだって?車は何か買うの?」
愛琉がそう聞くと、「今のところは買う予定はないかな、バイトでトラックに乗るから取ったからね」と答える。
車の免許を取得したことにはルナの方が羨んでいた。
「いいなぁ…私も車の免許が早く欲しいんだよね」
ルナがそう言うので「何か乗りたい車でもあるの?」と愛琉が聞くと、ルナはタクシーの運転手になるのが夢らしい。
子供の頃にタクシーに乗った際に、そのタクシーのドライバーが女性でその姿がなんともカッコ良かったらしく自分も将来なりたいと思ったらしい。
「タクシーの運転手だと普通二種免許が必要だよね?確か普通免許を取って通算3年以上の運転経験で21歳以上が条件だったと思ったよ」
彩葉がそう説明すると、ルナは既にそのことについては知っている感じだった。
早く通算3年以上を経過させたいらしく、18歳を迎える1ヶ月程前に教習所に入校して普通免許を取りたいみたいだ。
「彩葉ってバイト先のトラックに乗る為に準中型で取ったんでしょ?いくらだったの?」
ルナが気になったのか聞いてきたので「私が行った教習所では29万だったかな、費用は全額バイト先が負担してくれたよ」と彩葉が言うと愛琉とルナは羨ましいと2人で顔を合わせて言っている。
「正直、普通免許と準中型免許どちらがいいと言われるとその人が乗る範囲に合わせればいいと思うけどさ?料金差で見ると4〜5万くらいしかないし、教習時間も準中型免許の方が僅かに増える程度なんだよ。それにうちらの場合は二輪の免許を所持してるから普通免許を所持免許無しで取る人より準中型免許を取る方が結果として安いよ、トラックで教習といっても2tトラック程度なんて普通車に毛が生えた感じだったしね」
彩葉が自分がやってきたことを簡単に説明すると愛琉とルナは自分達が普通二輪免許を既に所持してることを考慮するのを忘れていたらしく、確かに言われてみれば総重量3.5t未満でアメ車のハマーなどの総重量3.5t超えする車両も乗れない現行の普通免許を取るより、準中型免許を最初から取ってしまい総重量7.5t未満まで乗れた方がお得だと思った。
愛琉はスマホで普通免許と準中型免許の料金差を免許無しで普通免許、二輪免許所持で普通免許、免許無しで準中型免許、二輪免許所持で準中型免許と様々なパターンを調べてみた。
「うわぁ…何よこれ!最初から準中型を取るより、普通を取得してから準中型を取りに行くとトータル的に高く付くじゃん…まじ御役所のいい儲けだわ。私もこれなら準中型1択だね!中免あるから学科も車に関することだけだし、免無しで普通取る人より安いもん」
愛琉も準中型免許で取りに行くと言うと「私も愛琉に同意、普通で取るメリットが私達にはないね」とルナも準中型免許で取得するみたいだ。
教習所の話をしていると昼休みが終わるチャイムがなり、午後の授業が始まった。
午後の授業も適当にやり過ごすと、ホームルームの時間となり担任の新庄先生が簡単に話を済ませると下校の時間となった。
彩葉、愛琉、ルナの3人は各々バイトがある為、今日は学校で別れてバイト先に向かう。
昼休みに車の免許の話をしていたが、愛琉は誕生日を迎えたら彩葉同様に一発試験で大型二輪免許を取得しに行くと言っており、その後に準中型免許を取りに行くみたいだ。
ルナの方は、特に乗りたい大型バイクが今のところないので大型二輪免許は取得せずに準中型免許を取得する方向で考えているらしい。
3人はバイク通学者用の更衣室でバイクに乗る服装に着替えると、各々のバイクのエンジンを始動してバイト先に向かって走り出した。
校門を出ると3人は左手を上げて別れの挨拶を済ませると彩葉は、国道50号線に出て笠間方面へと走っていく。
しばらく走っていると突然、白バイのサイレンの音が鳴り響き「前のFXの運転手さん!白バイの後についてきて下さい!」と彩葉は誘導された。
彩葉は突然の出来事に「え!?私スピード出したっけ?え?なぜ?…」と頭の中が混乱しながらも白バイの指示に従いながら後ろについていくと、安全を確保できる広さの路肩に停車した。
「運転手さん?マフラー変えてますよね?結構響いているけどちゃんと芯入ってる??」
若い女性の白バイ隊員が聞いてくるので「入ってますよ」と彩葉は答えた。
マフラーを確認した白バイ隊員はインナーサイレンサーが入ってることを確認すると、ハンドルを全切りした際にタンクに干渉しないか確認したがハンドルは純正なので当たることはない、もちろんホーンも鳴る。
「マフラーだけ少しうるさめだけど年式古いバイクだしインナー入ってるから、今回は注意ということで!あと免許証確認していいかな?てか、お姉さん若いね…高校生?」
女性白バイ隊員に聞かれると免許証を渡しながら「高校生です」と彩葉は言う。
免許証を確認した白バイ隊員は18歳で大型二輪免許を所持している女子高生を見たのが初めてだったのか職務中であることを忘れて話してきた。
「おぉ…18歳!女子高生で大型二輪持ってる子を初めて見たよ!しかも乗ってるバイクがナナハンのFXなんて渋いね!車の免許も普通じゃなくて準中型なんて珍しいね!私もバイクが好きで白バイ隊員になったんだ、佐々木莉子って言います」
白バイ隊員の佐々木が世間話を始めたので、彩葉は少し戸惑ったがとりあえず免許にキズがつくことは免れたのでホッとした。
佐々木はもう一度、彩葉のFXを見渡すと「如月彩葉ちゃん!改造は程々にしないとダメよ♡」と彩葉の肩をポンと叩くと「それじゃ、運転気をつけて」と言って白バイに乗って走り去って行った。
「可愛らしい感じの顔の白バイ隊員だったな…なんかゴツい人達のイメージあったけど、綺麗な人もいるんだね…あぁとりあえず免許が無事でよかったぁ…」
彩葉は独り言を呟くと安心したのか変な汗が出てきた…
なんか一気に疲労感に襲われた。
「白バイのサイレンの音がトラウマになりそうだなぁ…」
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