第37話 遊び心2(輪投げ)
37-1
「ただいま」
「パパだ!」
「パパおかえりー」
玄関からした声にマリクとリアムが飛び出して行く
その少し後に2人はカルムとレイと共に中に戻ってきた
「ただいま。バルドは相変わらず作品作りか?」
皆が自分たちの方を向く中バルドだけは集中している為気付かない
「あたり。驚くほどの集中力」
「本当だな。こいつらが暴れてても気にしないんだろ?」
「そうなのよ。私でもあんなに集中する自信はないわ」
カルムさんとナターシャさんが言う通りバルドの集中力は驚くものだった
夢中になっているだけとはちょっと違う
完全に自分の世界に入ってしまっているのだ
「まぁキリがつくまで好きにさせてあげましょう」
そうやって見守ってあげるのが私たちの役割だろうとそう言うとみんなが温かい目で見守っていた
「そーだサラサ」
「ん?」
「これ、何かに使えるか?」
「縄?しかも長さが見事にバラバラね?それに木の棒と板…」
レイがそう言いながら床に山積みにしたのは大量の縄と20センチ程のバチのような木の棒、そして30センチ角の木の板だった
縄は30センチほどのものから1メートル程のものまで様々だ
「量はこの5倍くらいある」
「何でまたそんなに?」
「今日行った廃村の調査で見つけたんだ。職人達が半端材をため込んでたみたいでな。何となくお前だったら使い道見つけんじゃないかと思って持って帰ってきた」
「そう言われてもねぇ…」
あれがほしいと思って作ることはあっても材料ありきで考えたことが無いだけに難しい
「30センチ角の板だけなら並べれば床材になりそうだけど…そういうんじゃないんだよね?」
「そうだな。どうせなら遊べるものがいい」
「遊べるもの?」
「おもちゃ?」
「新しいおもちゃ?」
レイの遊べるという言葉にマリクとリアムが食いついた
「流石に1メートルじゃ縄飛びも出来ないしねぇ…」
「どうせなら大人も子供も一緒になって競えるものがいいんじゃないか?」
カルムさんがぼそりと言う
「…カルムさん、地味にハードル上げるのやめて…」
「はは…まぁサラサなら大丈夫だろ」
恨めしそうに見ながら抗議するとカルムさんは笑いながら言い切った
本当勘弁して欲しい
「それにしても…縄に棒に板、ねぇ…」
私は何とか記憶をたどる
子供が遊べるもの
子供のおもちゃ
「そもそも縄を使った玩具なんてあったかなぁ…」
困ったことに縄のおもちゃで浮かぶのが犬のおもちゃくらいしかないのだ
「サラサちゃんでもこんなに悩むのね」
「いつもポンポンアイデア出してくんのにな」
何となくみんなが好きかって言ってるような気がする
「縄…縄飛び、綱引き、縄梯子…どれも長さがいるよねぇ…しかも木なんて使わないし…あ、でも気の棒だけなら達磨落としとかできるかなぁ…」
「だるまおとし?」
「この木の棒を輪切りにしたのを積み上げてね、ハンマーみたいなやつで木を抜き落としていく遊び。でもそれだとハンマーも作らなきゃか。それに上の達磨は加工したいしなぁ…」
「…それはそれで面白そうだけどな」
「なら図案だけ起こしとこうか?ゲイルさんに渡せば作ってくれるかも。木だけで出来るから問題ないと思うし、ゲイルさんのところにある魔道具使えば問題なく加工できるはず」
「ああ、頼むよ」
カルムさんは上機嫌だ
多分試作品が出来たら持って帰ってきて、遊び方をレクチャーすることになるんだろう
それはそれでありかな?
それにしても3つを使えて簡単に作れる玩具…
再び考え始めるものの中々浮かばない
「できたぁ!」
空気を変えたのはバルドだった
そう言えばずっと作り続けてたはず
「すごい集中力だったわねバルド」
「そう?」
「そうよ。カルム達が戻ってきたの気付いてないでしょう?」
「…そういえばいつの間に?」
キョロキョロと周りを見回すバルドに苦笑する
「それだけ夢中になれることが見つかったのはいい事だけどな」
レイがそう言うとバルドは嬉しそうに笑う
「バルドお兄ちゃん終わったならあそぼ―」
リアムがくっついていく
コアラのように抱き付きバルドは身動きが取れない
「遊ぶのはいいけど先にお片付けするからちょっと待って」
「わかった!」
リアムは頷くとすぐにバルドから離れた
その様子を見ていた私の中であるおもちゃが浮かんでいた
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