23-2

産まれた直後興奮してみんなのテンションが異常に高かった

でも翌日になると私たちを含めて家の中が落ち着いていた


「名前、どうする?」

「…」

「何か希望あるか?」

母乳を上げ終えたタイミングでレイが尋ねてきた


「…シアってどうかな?」

「シア?」

「元の世界で幸せに歩むって書くの」

「幸せに歩む…シア」

レイがつぶやいたとき赤ちゃんがキャッキャと声を出した

2人顔を見合わせもう一度赤ちゃんを見る


「シア?」

呼んでみると再び声を出し手足を動かしている


「決まり…だな」

思わず笑いだす


「お前の名前はシアだ。シアが幸せになる為ならなんだってしてやるからな」

レイは自分ではまだ何もすることが出来ない小さな天使を愛おしそうに抱きしめた


《コン、ココン》

「サラサちゃんいい?」

ドアがノックされた直後ナターシャさんの声がした


「どうぞ」

中から答えるとすぐに扉が開いた


「体調はどう?辛くない?」

「うん。大丈夫」

普段に増して心配性を発揮するナターシャさんに思わず苦笑する


「どうかした?」

「え?ううん。ただ心配性が2人に増えたなって…」

「心配性?あぁレイと私ってこと?」

そう尋ねながら笑い出す


「流石にレイよりましだと思うんだけど」

「…いい勝負だと思うぞ?」

レイ自身は自覚があるようだ


「ま、いいけどね」

「マリクは?」

「あの子はまだ寝てる。起きて姿が見えなければココに来るでしょ」

生まれる前から頻繁に私のお腹に触れに来ていたマリクの事だから間違いなく来るだろう


「それより、名前は決まった?」

ナターシャさんはレイからシアを抱き受けて尋ねる


「シア。私の前にいた世界で幸せに歩むって書いてシア」

「素敵な名前じゃない。良かったわね~シア」

あやしながら優しく声をかけるナターシャさんにシアは嬉しそうに笑い声をあげている

ナターシャさんはしばらくシアを抱きしめたり頬をつついたりと構い倒していた


「そうそう。食材のストック貰おうと思って」

「あ~落ち着くまでナターシャが作るんだっけ?」

「そうよ。食事もだけど家事全般ね」

「え?それは悪いよ…私もちょっとくらい手伝う」

「いいの。シアの事もサラサちゃんの体も大事にしないとだし…こんなときくらい頼ってよ」

ナターシャさんが満面の笑みで言ってくる


「サラサちゃんに何かあったらシアが困るしね。もちろんずっと寝てろなんて言わないけど」

「ナターシャさん…」

「服とか作るのもいいんじゃない?」

「服かぁ…確かにシアの服作りたいかな」

私はそう言いながらレイを見る


「どうせならマリクとおそろいとかいいんじゃねぇの?」

「おそろい!それ素敵じゃない」

ナターシャさんが食いついた


「わかった。じゃぁ2人のおそろいの服作ってみる」

「よろしくね~。だからその間の家事は任せて」

「ふふ…ナターシャさんには負けました」

苦笑しながらインベントリの中を確認する


冷蔵庫がそれなりに大きなサイズなのでストックするのも問題ないだろう

「とりあえず3~4日分渡すね。インベントリの方が鮮度保てるからそっちのストックが減ったらまた出すよ」

「了解」

ナターシャさんは一旦マジックバッグにしまっていく


「レイはどうするの?2週間ぐらい休む?」

「そうだな。至福のひと時を堪能させてもらうか」

再び自分の手の中に戻ってきたシアにデレデレになっている


「わかったわ。カルムにも言っとくわ。レイは家にこもる親バカは暫く放置ってね」

「…カルムもだけどナターシャも大概、言い方酷いよな?」

「気のせいでしょ。レイが休むなら私代わりに行こうかなー?マリク愚図るかな?」

「毎日じゃなきゃ大丈夫なんじゃない?買い物行ってる時も何ともなさそうだし」

「そう?ならちょっと考えてみようかな」

かなりワクワクしてる感じが見て取れる

未練はないもののたまには思いっきり体を動かしたいのかもしれない

というよりはカルムさんと出かけたいだけか?


「じゃぁサラサちゃんはゆっくりね」

「あ、うん。ありがとう」

お礼を言い終える前にナターシャさんは既に部屋から姿を消していた


「…あいつパワーアップしてないか?」

「してる」

「俺あいつのスイッチ入った時もう勝てる気しねーんだけど」

「それは…多分みんなだと思う。カルムさんが勝ってるのだって見たことないし…」

2人で言いながらナターシャさんには逆らわないでおこうと心に決めたのは言うまでもない

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