第59話 近藤彩沙の申し出

「穂乃果さん、付き合わせてしまい申し訳ありません」


生徒会室を出た雨野は、隣にいる笠音に謝る。


「別に……暇だったし」


「そうですか。あれ?近藤さん、どうかしましたか?」


雨野は、目の前で誰かを待っている様子の近藤に声をかけた。


「雨野さん、少し笠音さんをお借りしてもいいかしら?」


近藤がそう言うと雨野は、笑顔で頷いた。


「えぇ、どうぞ。穂乃果さん、先に教室で待ってますね」


そう言って雨野は、去って行った。


「あなた、大変ね。いつも雨野さんの側につきっきりで………」


「好きで千佳の側にいるわけじゃない。それより、そんなことを話すために私を呼び止めたの?」


「いいえ、あなたに勝負の申し出をするためよ」


近藤が、そう言うと笠音は、驚いていた。


「何で私?勝負なら1位の千佳の方がいいんじゃないの?それとも私の順位が低いから私に勝負を申し込んだの?」


「どれでもないわ。私は、笠音さんと勝負がしたい。ただそれだけよ」


「わかった。その勝負引き受けるわ。で、勝負内容は?」


「ダウト………なんてどうかしら?」


「いいわよ。それなら学力とわず勝負出来るし」


笠音は、近藤と話しながらスマホに勝負内容をメモった。


「じゃあ、当日は、よろしくね」


「えぇ、よろしく」


────────────


「笠音とダウトで勝負か……勝てるのか?」


放課後、オレ達のチームは、カフェで集まっていた。


「それは、わからない。ダウトは、嘘が通用するかしないかで勝敗は変わるから」


「そうだな。北原は、誰と勝負するか決まったか?」


オレは、北原に話題を振る。


「うんっ!決まったよ。私は、紗希ちゃんとバドミントンで勝負することになったんだっ」


豊田とバドミントンか。

一体、どちらが先に勝負を申し込んだのだろうか。


「椎名さんと山野さんは、決まりそう?」


近藤は、2人に尋ねた。


「私は、まだ……勝てるような方がいたらいいんですけど」


「私もまだ。勝負したい相手もいないしゆっくり考えようかと」


「そう。まぁ、まだ時間はあるし2人はゆっくり考えてもいいと思うわ。江川君は、決まった?」


次に近藤は、江川に聞く。

こういう姿を見ていると近藤がリーダーらしくなったと実感できる。


「いやオレはまだ……」


と言いかけた時、チーム全員がいる中、松原は、声をかけてきた。


「よう、大山。もしかしてチームの作戦会議中か?」


松原は、周りの空気を一切読まず話しかけてきた。


「それをわかっているなら話しかけないで」


近藤が松原に向かって言う。


「そんな怒るなよ近藤ちゃん。友達のチームがどんな話をしているかぐらい聞いてもいいだろ?」


松原がそう言うと近藤の機嫌は、さらに悪くなる。


「松原、何か用があったんじゃないのか?」


オレは、これ以上悪い空気にならないために尋ねる。


「あぁ、そうだった……江川、オレと勝負しろ」


「オレと?」


江川は、聞き返す。


「スポーツが得意なんだろ?オレもスポーツが得意だからさ勝負しないか?そうだな……サッカーは、どうだ?」


「サッカーか。別に文句はない」


「じゃあ、勝負を引き受けてくれるってことでいいか?」


「あぁ、いいぞ」


「なら、決まりだな」


そう言って松原は、立ち去った。

立ち去ったその時、山野が気まずそうな顔でいたのをオレは、見逃さなかった。

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