第33話 松原のチームへの貢献

パートナーが発表されてから10日たったある日の誰もいない放課後の校舎。

そこで、オレー松原楓は、廊下の壁にもたれスマホをいじっていた。

すると、聞きなれた声が聞こえた。


「あんたも呼ばれたの?」


「ん?笠音か……。リーダーに呼ばれたからな」


「リーダーね……松原は、チームやめたくならないの?」

笠音は、そう言ってオレの隣へ来て腕を組んだ。


「別に。どちらかというとオレは雨野のこと気に入っている。笠音は、雨野のこと嫌いか?」

オレは、スマホの画面見たまま笠音に聞く。


「私は、最初、チームをやめたいと思ったわ。けど、抜けた後のことを考えるとデメリットしか生まれない……」


「まぁ、そうだな。1位のチームを抜ける意味がわからない」


オレは、適当な返事をすると、笠音がキレたのかオレのスマホを取り上げた。


「聞いといてその態度はどうかと思うけど?」


「聞いてたって………ちゃんと反応しただろ?」


「ほんとっ、男子って嫌い」


「それを本人の前で言うなよ。さすがにオレも傷つく……」


オレがそう言うと笠音は、黙ってスマホを返してくれた。


「で、あんたはさっきから何してんの?」


「小野寺からのメールの確認」


「小野寺さん?なんで他のチームの人と連絡取り合ってんのよ」


予想通りの反応だったのでオレは、思わず笑ってしまう。


「落ち着けよ、笠音。オレは、小野寺とは何もない。ただ、少し手伝ってるだけだよ」


「何それ……そのこと千佳は、知ってるの?」


「そりゃもちろん。隠す必要は、ないからな」


「そう……あとで千佳に詳しく聞くわ」


こうして話すのをやめてしばらく待っていると足音が聞こえてきた。


「おまたせしました。穂乃果さん、楓君」


「やっと来た……萩原は来ないのか?」

オレがそう言うと武内が口を開いた。


「あぁ……萩原は、どうしても部活が抜け出せないから来れないそうだ」


「なるほど。で、リーダーさん。今日は何のための集合?」


「そろそろ三条君に言おうと思いまして……そこで、皆さんにそれぞれやってもらいたいことがあります。まず、楓君と康二君は、今から三条君を呼んで来てください。穂乃果さんは、芽衣さんを……もしも行くことを拒否されたら私を呼んでください。では、次は二号館の校舎裏で集合です」


そう言って雨野は、一人でこの場を立ち去った。

三条に何を話すのだろうか。

疑問に思ったが、考えるのめんどうだしまぁいいか。


「行くぞ、武内」


「あぁ……三条の奴ならさっき噴水前で見つけた。その辺りを探すぞ」


オレと武内が噴水のある方へと足を向けたときには、すでに笠音の姿はなかった。



───────15分後。


集合場所の二号館の校舎裏には、オレと

雨野、笠音、武内、氷川、三条という謎のメンツが集まった。


「で、今から一体何の話をするんだ?」


三条は、一人だけチームが違うことから警戒していた。


「今日は、三条君に氷川芽衣さんとの関係をお尋ねしたくてお呼びしました」

雨野がそう答えると三条は、ふっと笑った。


「関係?オレと氷川は、初対面だ」


「だそうですが、芽衣さんは、どうなんですか?」


雨野は、面白そうに話を進める。


「私も初対面よ。関わりなんてない」


氷川は、そう言ってなぜかオレをチラッと見た。

こりゃ、話が長くなるな。

雨野は、三条と氷川に緊張感を与えて口を滑らせようとしている。

さて、どこまで二人は、嘘をつき続けるのだろうか。


「そうですか……噂では、私のチームに裏切り者がいると聞きました。その人は、三条君と手を組んでると……」

雨野は、そう言って三条の方を見た。


「あぁ、そうだな。オレは、お前のチームの氷川と松原と手を組んでいる」


「あら、急に素直に答えてくれましたか。さっきまで関係はないとおっしゃっていたのに……」


「状況が変わったからな」


「そうですか。ですが、残念ですね……松原君は、裏切り者では、ありませんよ」


「どういうことだ?」

三条は、そう言って一瞬オレを見た。


「雨野、もうやめてもいいか?」


オレは、黙っているのをやめ雨野に確認した。


「えぇ、いいですよ楓君。演技は、もう十分です」


当然、何の話かわからない三条と氷川は、

困っていた。


「簡単に言うと、オレは雨野に言われて裏切り者を演じてたってことだ」


「二重スパイってこと?」


氷川は、突然の出来事に動揺が隠しきれてなかった。


「あぁ、そうだよ。氷川、騙して悪かったな」


オレは、思ってないことを口にした。


「ちっ、あんたのこと信頼してたのに」


氷川は、いつもと違って暗い声を出す。

そりゃ怒るよな。

一緒の裏切り者だった人が実は、裏切り者じゃなかったのだから。


「二重スパイってことは、雨野は当然オレの計画を知っているんだな」


「もちろん、楓君に聞きましたから。ですが、あなたが楓君に嘘の計画内容を話しているとなると私は、何も知らない状態になります」


そう、ここが一番重要なことだ。

もし、三条がオレに嘘の計画内容を話していたら当然、本当の計画内容を、オレは知らないことになる。


「私は、三条君がスパイである者に計画を簡単に教えるなんてことはしないと思います。なので、お聞きします。三条君、あなたのしようとしている計画を教えてください」


雨野は、教えてくれないことを前提に尋ねた。


「お前に話すわけないだろ」


「では、私がその計画に協力すると言ったら?」


オレは、雨野の言葉に少し驚いた。


「面白いことを言うじゃねぇか。まず言っとくがオレは、裏切り者に嘘をつくようなめんどくさいことはしない。松原には、本当のことしか言ってない。オレは成績上位者を下へ落としていくことが目的だ」 


「上位者を……面白いことをしますね」


「協力したくなったか?」


「遠慮しときます。私は、私のやり方で上に立ちたいので」


「そうか。お互い違う方法で頑張ろうぜ。ところで氷川……お前が裏切り者だとバレたがどうする?引き続きオレと協力関係であるか?」


三条は、氷川に尋ねた。


「私は……」


「芽衣さん、私はあなたが三条君と手を組もうと何も気になりません。あなたは、あなたの考えがあることでしょうし。ですが、このチームから抜けることだけは許しません」


「わ、わかった。三条君、あなたとの協力は、引き続きやるわ」


「そうか。松原は、どうする?」


「オレは、お前の計画より雨野の方に興味があるからな……お前に協力なんてしない」


「それは、残念だ……話も終わったようだし、オレは帰る」


三条は、そう言って立ち去ろうとした時、雨野が口を開いた。


「三条君、あなたは、上位者をと言いましたが、もちろん私もその中に入ってますよね?」


「あぁ、もちろん」


「そうですか、なら楽しみにしてますね。どんな方法で私を1位の座から引きずり下ろすのか」


「そんなこと言ってられるのも今のうちだからな雨野」


「ふふっ。何があろうと私は、絶対に1位であり続けますから」


三条は、この場から立ち去ったので雨野も続いて立ち去ろうとしたのでオレは、雨野の後を着いて行く。

もちろん、笠音と武内もだ。


「氷川のことほっといていいのか?」

オレは、雨野の横に並び尋ねた。


「特に私達のチームに影響はなさそうですし、いいんじゃないですか?今日、この日まで特に困ったことはありませんでしたし」


「そっか。まぁ、雨野に任せるよ」


これでやっと三条と氷川の前で演技をしなくてすむ……そう思ったが、オレにはまだ二つの事をやりとげていない。

このチームにいる限りオレのやるべきことはなくならない。

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