第18話 傾国さん

 3週目初日の午後の実技である。今日は前の週と同じ遺跡ダンジョンではなく、森タイプのフィールドダンジョンだった。フィールドダンジョンを囲むように空白地帯があり、更にそれを囲むように金網のフェンスが張り巡らされている。ダンジョンに併設されたギルド施設に到着すると5人のそろいの迷彩服に身を包んだおそらく担当官であろう人達と装備もバラバラな5人の冒険者であろう人達が待っていた。


「本日の講義を担当することになりました、山田であります!」


 迷彩服をきた体格のいい男性が声を張り上げる。


 本職は自衛隊員かレンジャーでしょうか?冒険者の方々とは少し雰囲気が違いますね。


「本日よりダンジョンでの立ち回りかた、及びパーティでの立ち回りかたについてをお教えします」


 少し緊張しているようですね。初めての担当官というところでしょうか?


「ダンジョン内は危険に満ち溢れております!疑問に思った事はどんな些細な事でもどんどん質問してほしいであります!」


 一生懸命さが伝わってきます。同じ迷彩服を着た4人も似たような気持ちなのかほっこりした雰囲気になっています。


「それでは準備運動から始めるであります」


 いつもより多めに柔軟、軽く流す程度に筋トレ、しっかり目に柔軟を行い担当官の前に集合します。


「パーティわけをします。名前を呼ばれたらそれぞれの担当官の前に集まるであります!」


 一番左のAチームの担当官に呼ばれたのでそちらへと向かいます。そこにはすでに2人呼ばれており、1人は何と言いますか…絶世の美女というか傾国の美女とでも言いますか…お化粧は最小限という感じなのに目鼻立ちははっきりとしていて、スラッとした長身に出るところは出、引っ込むところは引っ込むバランスのとれた下品にならない程度にセクシーな体つき、今は邪魔にならないようにまとめていますがおろせば長そうな濡れ羽色の黒髪、おじさんには目の毒ですね、失礼のないように気を付けましょう。もう1人はそんな傾国さんを必死にナンパしているチャラ…パリ…今どきの若者風のプリン頭の男性です。傾国さんは無表情のように見えますがプリンくんのナンパにだいぶお困りの様子。


「よろしくお願いします!」


 視線に気を付けながら2人の間に割って入ると約1名から露骨に舌打ちをされました。


「助かりました、ありがとうございます」


 プリンくんがぶつぶつ文句を言いながら明後日の方を向いているすきに小声でお礼を言われました。ふむ、声だけでも破壊力抜群ですね。


 そうこうしているうちに他のメンバーも集まってきます。プリン頭のギャ…パリ…今どきの若者風の少し気の強そうなかわいい感じの女性です。プリン2号はプリン1号を見つけるとそちらに合流しました。


「やっぱり、運命だね!!」


 次にやって来たのはマコトでした。運命かどうかは置いといて、やはり知っている顔がいると安心します。これから命を預けあうパーティになるのですから。


 そして、最後にやって来たのが


「俺がこのパーティのリーダーのチャン サンヨンだ!!よろしくな!!」


 赤メッシュ君でした。

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