第31話 再転換

 ある日、調査部の隆史は余命1か月と宣告された膵臓ガン患者の瑠璃子43歳の元に来ていた。抽選枠で当選して調査部も審査部も通ったが、本人がタッチを拒否する可能性のある事柄への最終確認のためだった。


 瑠璃子はトランスジェンダーで、男性で生まれたが心は女であったため、性転換手術で陰部を切除してシリコンバッグを使った豊胸手術も受けて、女性ホルモン療法をしていた。淳史のタッチで陰部は元に戻らないが、シリコンバッグを異物と判断して除去され、女性ホルモンも無くなり、一からやり直すことになってしまう。努力を重ねると同時に偏見と闘ってきた瑠璃子にとって、タッチは受けたいが元の姿に戻ることを嫌がり、苦渋の決断となるため、悩んでいる。


 すると、横にいた3か月前にできた彼氏がやさしく語りかけてきた。


「命が助かるなら受けるべきだ。どんな姿になってもまた君を愛するから」


それを聞いた瑠璃子は迷いが晴れ、タッチを受けようと決意した。


 タッチが行われ、瑠璃子のガンが消えると同時に乳房も無くなり、女性ホルモンも無くなった。


 一か月後、その後が気になった淳史と隆史が、瑠璃子のもとへ会いに行った。


「ちょっと聞いてよ。彼ったら私のおっぱい無くなって青髭が出だしたら離れていっちゃったのよ。こんなことなら幸せな気持ちのまま彼の腕の中で死んでいきたかったー。本当くやしー。あれ?ちょっと待って、隆史ちゃんあんたよく見たらいい男ねー。連絡先教えてくれない?」


 隆史は無理やり笑いながら、うまくはぐらかして、その場をしのいだ。元気そうな姿を見て、彼女なら何度でもやり直せると感じた隆史と淳史であった。


 その帰り、隆史の事を本当の兄のように慕っている淳史は、真千子とやり直す気はないか聞くが、こちらもうまくはぐらかされ、帰路についた。

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