第7話 設立2年前の裏切り
財団設立2年前のある日、社会科教師の真千子は勤務先である私立高校の保健室にいた。何でも相談し、信頼していた養護教諭の
真千子は自分の家に淳史と鈴子を呼んだ。半信半疑の鈴子は、持っていた画びょうで自分の指先を刺し、淳史に治せるか聞いてみた。災害が起きたあの日以来、力を使っていなかった淳史は、自分自身でも力を疑っていたが、傷口にから少し離れた手首をつかんで念じてみると、血が止まり、傷口がふさがっていく様子を確認し、驚く鈴子と真千子と淳史。さらに鈴子はカッターで自分の腕を切って、淳史にお願いすると、こちらも綺麗に治して見せた。真千子は竹刀の素振りでできた自分のマメも治せないかと聞くと、淳史は息切れをしながら今日は疲れたからもう出来そうもないと答えた。なぜこの力が身についたか考察する3人。仲間を助けたいと強く願った結果授かったのか。そもそも生まれた時からこの力があったのか。どれも根拠はなく憶測の域から出ない。結局分からず、考えるのをやめた。
数日後、鈴子は口伝で集めた病人やけが人を週に2回ほど、淳史に人助けボランティアと言って、タッチさせていった。
それから何週間かすると鈴子は羽振りがよくなり、高価なものを身に着けるようになってきた。不審に思った真千子が鈴子を問い詰めると、病人からお金を受け取っていたことを白状し、憤る真千子と淳史。真千子は、「今後、淳史に近づかないで」と鈴子に言うと「分け前をあげるから一緒にやっていこう」と開き直って誘ってくるも、真千子はきっぱり断った。しかし、それでも鈴子は引かずに、「高額の治療費を出すと言ってきた人との約束を最後にしてほしい」と願い出たが、やはり真千子は断った。
数日後、鈴子へ高額の治療費を出すと言ってきた相手は、どうやらヤクザだったらしく、襲われることを恐れ、鈴子は姿を消した。
真千子は、人は強大な力を手にすると正しい判断ができず、人格が変わってしまうということを知り、信頼していた人の性格を変えてしまったことに罪悪感を覚えていた。さらに、淳史の力を間違った方向に使われないよう管理する必要があると考え、勤務していた学校へ退職届を出し、淳史を守っていこうと決意する真千子であった。その時、校舎から合唱部が歌う『勇気一つを友にして』が聞こえていた。
一方淳史は、自分の責任で親友を亡くし、生きることの意味を見いだせていなかったが、ここ数日間の人助けが妙に心地いいと感じていた。それを感じ取った真千子は、人助けを通じて淳史の閉じこもった心も癒していきたいと考えた。
この時、淳史が治療した数人と口伝で広がった噂で、週刊誌がタッチについて取り上げはじめてきていた。
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