第4話

『謹賀新年!』


 冬の夜空に重なる声が響いた。そしてそれに呼応するように、本殿が輝きを増す。

 その入口の光の中から俺の知らない顔が現れた。その人たちも父から五円玉を受け取り、また知らない顔を呼ぶ。


『謹賀新年!!』


 人から人へ状況が伝達され、各々がまだ年を越せていない知人を迎えるために動いた。

 このままでは人が溢れると見越して、別の神社へ移動する者。自宅から追加の五円玉を持参する者。あたたかい服や毛布を用意する者。

 きっと誰しも、一緒に新しい年を迎えたいと思う人がいるのだ。


『謹賀新年!!!』


 人は、繋がっている。

 たとえ始まりは俺一人だとしても、この繋がりは瞬く間に広がっていき、やがて日本中を繋ぎ合わせるのだろう。


『謹賀新年‼‼』


 ──昔の人はそれを、〝縁〟と呼んだそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る