第15話 お小遣い稼ぎ 1
朝は午前六時に起きて、朝食を作る。
食後に二時間ほどかけて畑いじり。
九時頃、牧場へ早朝バイトに出かけていた甲斐が帰宅すると四人で揃ってダンジョンに潜る。
昼までひたすらスライム狩りをし、ポーションと経験値を貯めると、お待ちかねの昼食だ。
魔法を使った後は空腹も限界なので一時間たっぷりと使い、料理と食事に没頭する。
昼からはそれぞれの自由時間。
私はもっぱら畑を広げたり、裏の山道を散歩ついでに手入れする。
甲斐は午後も数時間、牧場へバイトに行く。合間に鶏小屋の手入れも欠かさない、勤労青年だ。
宣言通り、半壊していた鶏小屋を直して鶏十羽を育てている。雄鶏が一羽、残りは卵目当ての雌鳥だ。毎日は卵を産まないので、大体一日に四個から五個、無精卵だけを回収する。
ちなみにこれは鑑定が出来る奏多さんのお仕事だ。有精卵は残し、鶏を増やす予定で、いまはかわいいヒヨコちゃん待ちだ。
奏多さんは畑の野菜を使って色々なレシピを研究中。ご近所の奥様方から教わった田舎料理から、レシピサイトまで漁って和洋中華と多彩な料理を作っていた。
出来上がった料理は時間経過なしの【アイテムボックス】にしまっている。
料理をする元気がないほどに疲れ果てた時用や、ダンジョン内での間食にと大変役に立っている。
晶さんは以前から請け負っていた、コスプレ衣装の制作と錬金術を用いたアクセサリー作りに没頭している。
錬金術スキルのおかげか、器用度が上がったらしく、裁縫のスピードもかなり早く成長したようだ。
アクセサリーや手慰みに作った小物はネットのフリマサイトで販売しており、なかなか人気らしい。コスプレ衣装の勉強で得た知識で、ゲームやアニメの人気作イメージのアクセサリーを作ってみたところ、かなりの話題になったようだ。
作品そのままのデザインではなく、あくまでモチーフ風に作らないといけないので大変みたいだが、楽しそうに作っている。
そんなわけで、午後の自由時間。
それぞれが好きに行動している中、私は畑を広げたり、雑草を抜いたりと忙しく動いていた。こんな時は甲斐の【身体強化】スキルが羨ましい。
こつこつと畑を広げ、苗や種を植えていく。水やりは魔法のシャワーなので、これだけは楽だった。
「んー、やっぱり魔法の水をやると、野菜が生き生きするね」
青々とした葉をそっと撫でながら呟く。
追加の肥料を与えたりなど、他に試してもいないので、やはり水が原因だ。
奏多さんの【鑑定】結果でも、魔法で生成した水は魔力がよく作用すると出ていたし。
野菜の出来は味に直結する。
ここ最近収穫した野菜はどれも濃厚で美味しかった。お高い有機野菜も真っ青な、最高品質の野菜の味だ。
「魔力混じりの水だと、野菜の品質が上がるのかな……?」
せっかくなので、お供え用に作っている花や果樹にも水魔法で水をあげてみた。
続けて魔法を使い疲れたのでポーションを飲む。小腹がすいたので【アイテムボックス】から取り出したチョコレートバーをかじりながら、ふと思いついたことがあった。
「魔法の水で品質が上がるなら、さらにポーションを混ぜたら、どうなるのかな?」
それは、ほんの好奇心からの思いつきだった。幸いポーションはノアさんにあげる分、自分たちに何かあった時用を除いても、大量に手元にある。
「一本だけなら、実験に使ってもいいよね」
誰にともなく言い訳し、魔法で作り上げた水の塊にポーションを振りかけた。
そのまま使うと、植物には濃度が濃い気がして、それだけの理由だ。
「さて。ポーション入りの魔法のシャワー、どうなるかな~?」
わくわくしながら、やわらかな小雨程度の強さで野菜に降らせていく。
ついでに、先程種を植えたばかりの畑もたっぷりと湿らせてみた。じっと眺めてみるが、あまり変化は見られない。
「まあ、そうだよね。そんなにすぐ効果が出るわけないよね」
苦笑しながら立ち上がる。
残ったポーション入りの水をビニールハウス内で小雨に変えて、さて夕食用に野菜を収穫して帰ろうと先程の畑に戻ったところで、目を疑った。
「さっき植えた種がもう芽を出してる?」
耕したばかりの畑の土から、かわいらしい双葉がちょこんと顔を覗かせていた。
「嘘でしょ……? あ、待って。こっちの野菜、今朝収穫したはずなのに、葉っぱが復活してる⁉︎」
慌ててビニールハウスに駆けて行き、そちらも確認してみるが、同じように成長していた。
「ここのミニトマト、今朝半分ほど収穫していたはずなのに……」
なぜか、同じ場所に艶々とした真っ赤なミニトマトがすずなりに成っていた。
他の野菜も同じく、種は芽吹き、苗は成長し、収穫したはずの実や葉は元通りに育っている。
「これ、ポーションの能力……?」
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