-Summer- 結成、目線、疑念-1

 聖地巡礼から3ヶ月

 あっという間に俺たちの町は、真夏を迎えていた。


 jubeatへの熱は俺も、そしてみんなも全く冷めることはなく、和気あいあいと各拠点で盛り上がりを見せていたんだ。


 いつも通り、愛や雄介と一緒に、そして翼さんも忙しい中を縫っては、拠点に来てくれて

 暑さも忘れながら…な〜んてのは嘘で、暑さに勝てないのか、汗をダラダラ流しながら俺たちはjubeatに向き合っていた。


「ゆ、ゆゔずげぇ~!あづいよぉっ!!」


「お前が暑いなら、俺もあづいわぁ!!」


「愛もあづいでじょ~?」


「暑いって言ったら暑くなるから言うな!!」


「ええっ?みんな、そんなに暑いかい?俺は…汗かいてないけど…」


「…翼さん、なんであづぐないんでずがぁ~っ?」


「俺さ?暑さを感じても、汗ってあまり出ないんだよねぇ~♪」


 汗ひとつかかずに、淡々とハイスコアを叩き出す翼さん。

 くそぅ…そろそろ、抜かしてやりたい…!俺だって、少しは上手くなったんだから…!


 こんな灼熱で暑っついゲーセンで、頭がどうかしていたのか、俺は翼さんに「マッチングしてください!ぜってぇ負けない!」


 ちょっと強めに、挑戦状を叩きつけてやったんだ。


「…勝てるかな?俺に♪」


「やってみなきゃわかんないです!」


「そう…じゃあ、本気で行くからね?」


「…望むところです!!」


 俺らは2つの筐体に、それぞれ銀色に輝く100円玉を投入し、いつも通り2曲ずつ投げ合った。


 でも空気感は、いつもと少し違っていて、お互いという気持ちが愛と雄介にも伝わっていたようだった…


 1.2.3曲目は、全く歯が立たない…やっぱり憧れの翼さんは強い…

 手を抜いて勝ちを譲るなんて絶対にしてこないし、手加減もしない。

 それでこそ、俺が追いかけたい憧れの背中だったんだ…!!!


 -4曲目、選曲は俺の番。

 俺がずっと練習してきた曲を、翼さんに投げ込んだその瞬間、翼さんの表情も変わった。


「勝負、仕掛けてきたね…?」


「この曲なら…勝てる気がするんです…!俺の…なのでっ!」


 嫁曲よめきょく

 音ゲーの曲は、本当に色んな曲があって多種多様。その中で自分が1番大好きで愛して止まない曲をみんな、嫁曲と呼んでいた。


「それでも、絶対…俺も負けないよ?」


「…俺だって!ぜってぇ勝ちます!」


 1曲でもいいから…難しい曲で翼さんに勝ってみたい…!その一心で俺は、嫁曲を仕上げてきたんだ…!


 観戦している雄介と愛も


「…これ、もしかしたら、もしかしてあるぞ?」

「傑、ほんっとこの曲好きで、私も何回も付き合ってたからね〜?」


 俺たちの対戦をドキドキした面持ちで、ヒソヒソと話していた。


 筐体のインフォメーション画面に選曲した楽曲名が流れ…スピーカーの音が一気に静かになり…本気の戦いを始めるアナウンスが…俺たちの空間に響き渡る…!


 ''Ready…''


 パネルへそっと手をかざす俺と翼さん

 手の配置は、お互い形でスタンバイしていたんだ…絶対に…負けたくないっ!!


 ''Go!!''


 勝てるかもしれない勝負の幕が上がった。


 俺が選んだ曲…《Sweet Rain》の音色が俺らのプレイや周りの空気を包み込んでいったんだ…

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