43
シュロに抱き上げられたまま宿まで戻ってきました。所謂、お姫さま抱っこ。部屋ではさすがに下ろされたけど今度はバンブーソファに座ったシュロの膝の上で、恥ずかしくてハクトの腹毛に顔を埋めてる。
「キュゥ」
「うぅ…」
なんか街の人も宿の人も俺たちのこと微笑ましそうに見て、新婚さんかーとか仲良くていいねーとか声かけられて。しかもシュロが…嬉しそうに答えるからっ。
「おーすげえ赤いな」
「うぐぐ」
「さっき目抜通りの店で祝いに貰った食い物で夕飯にすっか」
「うぎゅ」
「それとも、一緒に風呂」
「ご飯にします!」
「じゃあこっちの蒸し焼きと麺どっちがいい?」
「…半分こ」
「くくっ、了ー解」
なんかシュロにいいようにされてる感がなくもないけどまあいっか。いいこととする。蒸し焼きは野菜とお肉を温泉水で蒸したやつで、肉の旨味に野菜の味が負けてない。甘味がじんわり舌に広がって、本当に野菜が美味しい。麺にもたっぷり野菜が入ってて絡んだ甘酢あんとさっぱりいただけた。
「ご馳走さまでした!」
「おー、旨かったな」
「うん!本当に野菜の味が濃くて美味しいんだね」
「あとちょっとで村につくし、野菜も買ってくか」
「いっぱい買って野菜料理もしたいな」
「楽しみにしとくぜ」
「…うん」
相変わらずシュロの膝の上だ。ハクトは鞄の上で丸くなって寝てる。
恥ずかしいけど…本当は嬉しくて。こんな幸せがあるなんて。噛み締めるように目を閉じたらシュロのキスが降ってきて。照れ臭いから止めろよなんて言ってしまうけど本当はずっとこうしてて欲しい。
言葉に出してもいないのにそれを叶えてくれるシュロに出逢えて、この世界にきて良かった。こんなに幸せなことがあるなんて信じられないくらい。
でもさすがに二人一緒にお風呂とかレベルが高いんで遠慮させていただき、一人で洗面室使います。
出てくるのは温泉水だけど蛇口はやっぱり魔石を使ってるんだ。温泉引くのも魔石を使って大掛かりな魔法陣を組んであるんだとか。
たらいを設置してお湯をためるとそこに浸かって体を洗う。さっぱりしてお湯を替えてもう一度浸かって温まったらシュロと交代する。
竹でできたソファにはきれいな薄い布が掛けてあってすでに寝る支度は整ってた。ここで二人で寝るのかと思うとちょっとそわそわする。もしかしたらもしかするのかな。でも、そうなってもいい。
どきどきしながら横になって、シュロが洗面室から出てくるのを待つ。眩しくないくらいの細い窓から月の光が差していた。あれ?もう満月なのか。この世界の月の満ち欠けって早いんだなぁ。
「…トワ?」
「シュロ…」
満月の光を浴びてたら何だか頭がぼーっとしてきて夢の中にいるみたいにふわふわして。
「…やっぱり俺の見間違いじゃなかった」
「え?」
呟きに首をかしげると、シュロはおもむろに俺の肩から背中を撫でた。変だ。俺はソファーベッドで横になってた筈で…起き上がってないのになんで触られるの?
意識がとろとろと眠りに落ちる寸前みたいに溶け出しそうなのを押さえて目を凝らすと、すぐ下にある筈の竹の寝台まで妙に距離が空いてる。空間が隙間で、つまり、俺の体は宙に浮いてた。
「………っ!?」
「おっと」
気付いたらぐらりと視界がまわって落ちそうになった。シュロが受け止めてくれたから良かったけど。そういえば寝てるのにシュロと目線の高さが合ってた。
「なんでっ、俺、浮いて!?」
「落ち着け、大丈夫だトワ」
シュロに抱き締められて、俺も胸にしがみつく。世界がひっくり返りそうで声が悲鳴のようになってしまう。
「でも俺ただの人間なのに!」
シュロは優しく、だけど強く俺を抱き締めて。
「あのな、トワ…多分お前は人間とは種族が違う」
「…え?」
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