37
とにかくかまくらから拡張鞄をとってきて雪熊の死骸を集めて入れた。ギルドでがっかりされるかもだけど一応まだ素材取れる筈だ。そして、毛玉たちはもうわずかに血と毛が少々落ちているだけ。上から土と雪をかけて手を合わせた。
カーバンクルと俺をまとめて抱えたシュロはかまくらに戻ったけれど、みんな戦闘の後で血まみれだし擦り傷なんかはいっぱいあるし。水の魔石で出した水を沸かして布を濡らして雑に拭ったくらいで、疲れて眠ってしまった。
起きたらシュロの膝枕で、すぐ謝る。
「ごめん、シュロ!結局昨夜から寝てないんじゃ…」
「おー平気だぜ、これくらい。それよりな」
ぺしっと頭を叩かれた。
「不用意に出るな。トワは攻撃できねえだろ」
「…はい。ごめんなさい」
助かった、勝ったとは言え、辛うじてだしかなり危うかったのはわかってる。俺がつい、で忘れたことが重要なことだった。俺のせいでシュロが…。
「トワ、ちゃんと反省できてるならもう忘れないだろ?」
「ごめんなさい…っ」
「よし、よし。もう大丈夫だ」
抱き締めてあやしてくれるシュロの胸が暖かい。血の気を失って呻くシュロの姿に恐怖を感じた。あんな思い二度としたくない。
「絶対、忘れない…!」
「ああ。それとそのカーバンクルをそばにおいて離れないように」
「キュッ!」
「そいつはトワの守りになるだろう」
「…うん、お願いするね。カーバンクル…って名前じゃなく種族?だよね」
「キュキュウキューゥ!」
「名前、トワに付けて欲しいみたいだぜ」
「うーん、…名前、久太郎きゅうすけキュー…」
「…」
「キュ、キュウゥ…」
考えながらぶつぶつこぼしていると微妙な顔をされてしまった。わかってるよネーミングセンス無いって!でもカーバンクルって長いから短くしたいと、必死で考えて結局白兎の音読みでハクトになった。
「ハクト、よろしくね!」
「キュル!」
「よし決まったな、さっそく朝飯頼む!徹夜は平気だが腹減ってよ…」
「え…あっはは、わかった!すぐ作るね」
今朝は素早く、サンドイッチにしよう。大家さんに教わったタレ漬け肉を焼いて薬草にもなる野菜と一緒に温めたパンに挟んだ。
「はいどうぞ」
「この恵みに感謝を。…っ、旨い」
「ふふっ、ハクトも食べる?」
「キュッ、………キュウッ!」
ガツガツ食べる二人に顔が緩む。作ったもの美味しそうに食べてくれると嬉しいなぁ。本当に、無事で良かった。目が潤むのをごまかすように俺も出来立てサンドを頬張った。
火の始末をして鞄を肩から斜めにボディバッグみたいに掛けたら二人と一匹で出発だ。ハクトは俺の肩に掴まって足をバッグに引っ掻けてる。これで安定するらしい。後ろから見ると二足立ちっぽく胴が伸びてるけど…本人がいいのならいいか。吹雪いてはいないけど昨日より雪の量が多い。俺はしっかりシュロのマントを掴んで歩く。
「あのな、トワ」
「ん、何?」
「トワの魔力は質が良いって言ったろ?」
「…うん」
「良すぎるんだ」
「?」
「質も良いし量も多い、過剰なくらいに」
「………」
「…トワ、どこから来たんだ?」
「俺、は…」
責める口調ではなく穏やかなシュロの声と優しく手を撫でる尻尾に勇気をもらい、今こそと俺が口を開いた時。
街道をガタガタと走ってくる荷馬車が見えた。
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