48日目午後 自らのために身を捧げる②


 こまりは早めに家を出た。到着したのは予約の15分前。少し早いが、事前にすることがあるのはわかっていたので中に入った。


 こまりは献血センターに来ていた。

 質問事項に答えて、体重測定をして医師の問診を受ける。事前の採血で問題なければ、献血が行える。


 今日は成分献血予定だ。身長が低いこまりは、体重が足りないので400mlの全血献血はできない。成分献血をすることが多い。


 薬を飲んでいたり、体重が40キロに満たないと献血は行えない。できた時はあったはずなのに、何だかんだしていたら、6年もご無沙汰してしまった。


 人様に自分の身体の成分を捧げるのだから、当然下手なものは差し出せない。今は薬も飲んでいないし、体調も申し分ない。そのため、ようやく献血に来ることができた。


 献血前後は至れり尽くせりだった。事故が起こらないようにスタッフの方がずっと見ていてくれる。水分補給も推奨される。成分献血は多少時間がかかるので、テレビやDVDを観ることができる場合も多い。


 ただ、別にこまりは献血が好きな訳ではない。針で刺されるのは苦手だし、血が抜けていく感覚はもっと苦手だ。刺されるときはいつも顔を背ける。


 では、何故献血をするのか。それは自分のためだ。それは別に自分が今後献血を必要としたときのためではない。自分の周りの人が献血を必要としたときに、引け目を感じず、自分が後悔しないようにするためである。別に人に良く思われようとか、人のためになりたいとか、そういうのではなく、ただ、自分のために献血をする。


 献血はしようと思ったときにいつでも出来る訳ではない。年齢も体重も既往歴も海外渡航歴もその他もろもろも、基準を満たしていなければ献血はできない。


 また献血をしたら、一定期間をあけなければ、献血はできない。つまり、人生で献血できる最大の回数は決まっていて、それは減ることはあっても増えることはないのだ。


 だから、暇人の今がチャンス。こまりは今献血をする。自分が後で後悔しないために。


 100回位してみたいな。

 簡単な採血結果も時系列で確認できるし。


 帰宅したこまりは本日の夕御飯を決めた。


 トマトと梅の冷製カッペリーニ


 すでに作ってある副菜は一緒に食べればいい。


 献立理由は単純。ただ、食べたくなったから。


 こまりは今日も欲望のままに生きている。



【今日できたこと】

 ・外に出て少し人と話した(問診等)

 ・ありがとうといわれた





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る