41日目 毛

『毛』

 それは身体を守るために日々成長し、皮膚の表面に鎮座するもの。

 彼らはいわば身体を守る兵隊ともいえよう。


 しかし、世の中には無駄毛と呼ばれる毛がある。

 毎日無惨に剃られていく毛もある。

 ダンディーさをアピールするために、選別され伸ばされる毛もある。

 永久に脱毛される毛もある。

 溶かされて排水溝に消えていく毛もある。

 朝剃っても、夜には存在を主張する生命力にあふれた毛もある。


 毛 それは赤ちゃんにもご老人にもあるもの。


 時として、自在に色彩変化し、人々を楽しませ、また悲しませる。


 それはある34歳の女性の毛の物語。


 ◆


 最近サボってたから、何か短くなった気がする。

 高校生位のときからずっと大事に育ててるのに。

 液ずっと塗ってるのに。


 なぜー?


 こまりはまつ毛に美容液を塗っていた。


 髪の毛、眉毛、脇毛、腕や足、指の毛


 色々な毛が生えているが、こまりが20年近く、大事に毎日美容液を塗り続けて、育てているのはまつ毛だけだ。


 お化粧めんどいし、マスカラ塗るの苦手だし、私は何よりも長い期間君たちを育ててきたのよー?


 ふいに目を擦って、選りすぐりの長めの子が役目を終えて抜けていくと悲しくなる。


 毛差別、毛区別は申し訳ないけど許してよ。ごめんね。エチケットなのよ。


 こまりは丁寧にまつ毛美容液を塗った。


 ぬりぬり。


 塗っていたブラシの方に毛がついてきて、こまりはため息をついた。


【今日できたこと】

 ・役目を持って生えてきてくれた毛に謝る。


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