選別ゲーム〜私立松林高等学校編〜

丹野海里

【宮城県】私立松林高等学校1年4組編

プロローグ

—1—


 友達とはどんな人のことを言うのだろうか。

 一緒に居て楽しい人。

 自分のことを真剣に考えてくれる人。


 意識をしていなくても話をしていれば自然と友達になっているって?


 果たしてそうだろうか。

 こちらが友達だと思っていても相手はそうは思っていないかもしれない。

 周りに敵を作りたくないからとりあえず全員にいい顔をしているだけなのかもしれない。


 友達というのは実に難しい。

 簡単に友達をやめることもできるし、何年も会わないと忘れてしまうことだってある。

 結局のところ自分にとって都合の良い人間かそうでないかではないだろうか?

 利用する価値があるかそうではないか。

 

 そして、人には表の顔と裏の顔が存在する。

 良い人そうに見えても、実は犯罪者なんてよくある話だ。


「そんなことする人じゃなかったのに」


「会ったら挨拶もしてね、感じの良い人だったと思ったんだけどな」


「まさか! あの人が!」


 報道番組のインタビューなどで聞く、友人や近所の人の声が大体これだ。

 こう答える人の多くは、犯罪者の本当の顔を見ていなかっただけに過ぎない。

 いや、上辺だけの外面しか見せられない関係だったのだろう。


 生きていく上では、どんなに人と関わらないように立ち回ったとしても、どこかで必ず関わらなければならないときがくる。

 そのとき、私が今話したことを1度でもいいから思い出して欲しい。


 互いに疑い合うような関係ではなく、そんなことなど考える暇など無い、心から楽しいと思わせてくれる友達を作るべきだ。



「はい、そこまでで結構です。洋一よういちくん、ありがとうございました」


 ロングホームルームの授業中、担任の半田はんだ先生に指された俺は、プリントを読み終えて席に着いた。


「今回の題材は考えさせられる内容でしたが、みなさんには何の問題もないですね」


 半田先生が1人1人生徒の顔を笑顔で見る。眩しい、優しい顔だ。

 ふと横に目をやると、隣の席の石塚蓮いしづかれんが難しい顔をしてペン回しをしていた。


「では、プリントに感想を書いた人から提出して終わりです」


 蓮がペン回しを止め、感想欄にスラスラと書き込んでいく。

 その様子を蓮に気付かれないように黙って横から覗き込む。


 蓮の感想欄には、『文章の最後に筆者の強い想いを感じた。このクラスのみんなと最高の友達になる』と書かれていた。

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