第二話

『おはよう』


「えんちょーせんせーおはよう!!」

「はーい、おはようございます」


 快晴の翌朝。

 今日も園児達が元気良く通園し、門前で出迎えてくれる青い髪の女性園長先生に挨拶しています。

 園長先生も挨拶を返していると昨日入園してきたソリトくんとファルちゃんがやってきました。


「ソリトくん、ファルちゃんおはようございます」

「おはようございます」


 ファルちゃんはすぐに挨拶を返します。

 しかし、ソリトくんはぷいっと園長先生にそっぽを向いて素通りしてしまいました。


「おっふ」


 その時、何故か園長先生の体はビクッと挙動を起こし、のぼせたように顔をほんのり赤くしながら体を縮こませました。


「クティシュリージェてんてー」


 可愛いらしい声に、クティシュリージェ、もとい〝クティスリーゼ〟園長先生は顔を上げます。

 するとそこには昨日オレンジ髪の男の子にいじめられていた銀髪の女の子が体を縮こませながら目の前に立っていました。


「お…おおはようございましゅ!!」

「っ!?」


 突然、目を開き驚いたような表情になった園長先生はそのまま固まってしまいました。

 ですが、すぐに園長先生は鼻から鮮血を流し、後ろに倒れてしまいました。


「ルティアちゃん…尊いです、わ………」


 クティスリーゼ園長先生が撃沈。その後、他の先生に運ばれていきました。

 ですが、〝ルティアちゃん〟と呼ばれた先程の銀髪の女の子は今まで挨拶出来ずにいたそうですが、この一回でまた門前で挨拶をしなくなってしまったそうです。


 その事に挨拶された翌日に分かってしまったのか、クティスリーゼ園長先生は名残惜しそうに名前を呟いたそうです。


「ルティアちゃあん……」


 ―――――――――――――――――


『ガキ大将』


「よぉし、じゃあおまえらオーガなあ」

「がんばりなさいよ」

「じゃあぁ追いかけるよぉ」


 クロンズくん。

 フィーリスちゃんというエルフの女の子とアリアーシャちゃんという魚人族の女の子が背後両隣に付いている幼稚園内でガキ大将的存在のオレンジ髪の男の子。


 遊びの最中に一緒に遊ぶ子達に嫌がらせをしている悪い子達です。

 今も強引に遊びの役割を決め、その園児達三人は嫌そうに頷いています。


 少し前までは、時々き弱い性格のルティアちゃんを幼稚園の建物の裏に連れていって、遊んでいるという屁理屈な理由で砂を掛けたりしていじめていましたが、最近は全く行われていないようです。


「へぇおもしろしょうだな。おれもまぜてくれよ」


 その理由は新しく入園したきた男の子ソリトくんが悉くを防いでいるからです。


「おまえはダメだ!」

「せんせーあのオレンジがおれをノケものにしてきた」

「オレンじじゃねぇ!!」


 いつの間にかソリトくんは先生の元へ行っていました。


「君達何故駄目なんだ?」

「しょ、しょれは…」


 ソリトくんが連れてきた先生は筋骨隆々で褐色肌が特徴な男性の幼稚園先生、グラヴィオース先生。


「遊びはたくさん子達とやる方が楽しいぞ!ちなみに何をしようとしてたのかな?」

「オ、オーガごっこ、です」


 クロンズくん達に付き合わされそうになっている園児の一人がグラヴィオース先生に遊び内容を告げました。


「おぉ、ならば尚更多くいる方が良いではないか!!」

「じゃあ、おれオレンジの方に入る。ああでも、これだと追いかける騎士やくがふえりゅから、オーガやく俺たちにしようぜ!」

「その方が良いだろうな!」

「で、でも僕たちは…」

「さっきはかってに決めてたんだから良いだろ?」

「うぐぬっ…」


 そのあと、ソリトくんは三人の園児達に、やり返すのは止めておけ、と言って何事もなく普通のオーガごっこをして終わりました。


 ――――――――


『ひみつ』


 あれから、クロンズくん達は建物の裏でなにやらこそこそし始めました。


「あいちゅ、いちゅも僕たちのじゃまするっ!」

「たのしくなぁいしぃ、あいちゃきらぁい」

「こんどはあいちゅに嫌がらせしてやる!」

「……あ、や、それはやめない?」

「なんでだよ!」

「だ、だって…」

「いまソリトをいじめるって、言った?」

「ひっ!」


 裏に現れたのは、転入してきたもう一人のファルちゃんでした。

 いつもはソリトくんと一緒か、一人大人く分厚い本を読んでいますが、話し掛けられると明るい雰囲気に一変。何を考えているか分かりません。


「まえもだけど、悪いのはおまえたちなにょに。万死というのにあたいしゅる」


 それから一日クロンズくん達は大人しかったそうです。


「どこいってた?」

「………トイレ」

「トイレはおくだぞ」

「ひみつ……」

「………ど」

「ひみつ……ひみちゅ………ひ、ひみつ!!」


 噛んだのが恥ずかしくなったのか、ファルちゃんは顔を真っ赤に染めて何処かに行ってしまいました。


 ともかく、何をしたのかはファルちゃんとクロンズくん達だけの秘密です。


『あいちゅも、嫌いだ!うわああああん!!』









―――――

どうも翔丸です。


なんか本編より先に外伝で制裁が下ってしまいましたので、ここで一旦止めますね。あはは……。

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