第5話・後悔と改心


「ごめんなさい、父さん、母さん、ウォルト兄さん、アラン兄さん……ごめんなさい、オウンドーラ王……」


「やっと、理解できたか。そうか……」


 今さらトマスが後悔しようが反省しようが、オウンドーラ王はどうでも良かった。

 今の状況を引っ繰り返してこの国を救う術など、無いに等しかったからだ。

 いや、正確には無いに等しいだけで、方法はあった。

 ただ、それが成功する確率こそ、無いに等しかったのだ。


「オウンドーラ王……僕は、どうすればいいですか? どうしたら許されますか? どう償えばいいですか?」


 今さら許してほしいのかと、オウンドーラ王は呆れたようにトマスを見つめた。


「そうだな……この国が救われれば、お前の罪も多少は許されるかもしれんな」


「この国を救う……どうしたらいいでしょう……誰か、魔物たちを倒してくれるような人が居れば……」


 そう呟いたトマスは、突然目を輝かせてオウンドーラ王を見つめた。


「そうだ、ギルベルト・ガンドールに戻ってきてもらえばいいんですよ!」


「お前は、簡単に言うなぁ。一体誰のせいでギルベルト・ガンドールが出て行ったと思っているんだ……」


 ギルベルト・ガンドールに助けを求める事――それはもちろんオウンドーラ王も考えた事だったが、オウンドーラ王には、自分がギルベルト・ガンドールを怒らせた自覚があった。

 それに、ギルベルト・ガンドールは、この結末まで理解して出て行ったのだから、戻ってくるはずがない。

 それをトマスに教えてやると、彼は落胆したが、再び顔を上げて言った。


「でも、一生懸命頼めば! もしかすると!」


「トマス……」


「オウンドーラ王、僕、この間は、自分が悪いなんて全く思っていませんでした。だけど今は、本当に反省しているし、なんて事をしてしまったんだろうって、後悔しているんです。だから、僕が一生懸命に頼めば、ギルベルト・ガンドールは考え直してくれるのではないでしょうか?」


 確かに、今のトマスは以前のトマスとは違うのかもしれないと、オウンドーラ王は思った。

 今の彼は、自分が犯した罪のせいで、家族を失ってしまった事を理解して、反省している。

 オウンドーラ王には、今残っている兵士たちには、できるだけ国民たちを守らせたかった。

 それなら、無理を承知で、手が空いているトマスをギルベルトの元へ行かせるのも、一つの手かもしれない。


「お前は体が弱いと聞いていたが、一人で馬に乗れるのか? お前がギルベルトの元に行くとしても、誰も供につけてはやれないぞ? それに、王都を出たとしても、ギルベルトの元に行くまでには、まだ魔の森を抜けねばならない。お前に行けるのか?」


 オウンドーラ王の言葉に、トマスは少し考え込んだが、頷いた。


「馬には、昔、少しだけ乗った事があります……。上手くはないけど、乗れない事はないはずです。それから魔の森は……怖いけれど、そんな事を言っている場合じゃないです! 僕はなんとしてでも、ギルベルト・ガンドールに会いに行きます!」


 そう言ったトマスに、わかった、とオウンドーラ王は頷き、馬の手配をしてくれた。

 そしてトマスは与えられた馬に乗り、ギルベルト・ガンドールに会うために、魔の森の先を目指す事になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る