第3話・国の終わりの始まり


 商人たちの逃亡により、食糧難に陥った国民たちは、再び王宮に詰め寄った。


「このままではみんな飢え死にしてしまう! オウンドーラ王! いったいどうなっているんだ!」


「オウンドーラ王が大丈夫だって言ったんだぞ! どうして商人たちはみんな戻って来ないんだ! どうしてくれるんだ!」


「この国はどうなっているの! これからどうなっていくの! 納得できる説明をして!」


 押し寄せる国民たちに納得できる説明ができないまま、オウンドーラ王は王宮の食糧庫を開放し、国民たちに食料を配布した。

 食料が手に入った国民たちは、少し落ち着きを取り戻したが、長くは続かないだろう。

 王宮の食糧庫にある食料は、無限ではないのだ。


「こんな事になったのは、やっぱりオウンドーラ王とコールド伯爵のところの息子のせいじゃないのか? やっぱり、ギルベルト・ガンドールではなく、オウンドーラ王とコールド伯爵の息子が悪いんじゃないのか?」


 国民たちの怒りは当然、コールド伯爵家とトマスにも向けられた。


「あぁ、きっとそうだ! コールド伯爵たちはどうしたんだ? あいつらに責任を取らせよう!」


「でも、コールド伯爵たちは、全員第二砦に向かったらしいぞ!」


「なんだと、あいつら、逃げやがったな!」


 正確には、第二砦に行ったのは、両親と兄二人だけなのだが、トマスは国民たちの目から逃れるために、自分も第二砦に行った事にして、ベルと暮らしていた屋敷の倉庫に閉じこもった。


 ここでしばらく大人しくしていれば、やがてこの暴動も収まるだろうと彼は思っていた。

 そして、自分から去って行った、愛するベルを想いながら、彼女のために用意したワインを飲み、酔って眠った。




 それからどのくらいの時間が経った頃か。

 数時間かもしれないし、数日なのかもしれなかったが、酔って眠っていたトマスには全くわからなかった。


 久しぶりに外の空気を吸おうかと思った彼は、倉庫の扉を開け、外に出た。

 そして、ずっと閉じられていた窓を開け、目を見開いた。


「え?」


 トマスは窓を閉じ、嫌な感じに鳴る胸を押さえながら、玄関に走り外に飛び出した。


「これは、一体、どういう事だ?」


 屋敷の外に出たトマスは、王都の至る所が破壊され、火の手が上がり、人々が魔物たちに襲われているのを目にした。


「た、助けてくれっ!」


 呆然とするトマスの前に、一人の兵士が現れた。

 魔物たちから隠れつつ移動していたらしい兵士は、トマスに助けを求めてきて、屋敷に駆け込んでくると扉を閉めて座り込んだ。


「あ、あのっ……一体これはっ!」


「わからない……今日の朝になって、いきなり襲ってきて……」


 兵士は説明をしながら、トマスの顔を見て目を見開いた。


「お前は、コールド伯爵家の……コールド伯爵家の人間は、みんな第二砦に行ったのではなかったのか!」


「ぼ、僕だけ残ったんだよ」


「そうか、問題のお前だけが、残ったのか……」


「うん、そう、だけど……」


 今の兵士の言葉は、「トマスだけがこの王都オフレンドに残った」という意味だけではないように、トマスの耳に届いた。

 不安になったトマスは、震えながら兵士に問う。


「あ、あの……こんなに王都に魔物が居るっていう事は……砦は……第二砦は、一体どうなっているんですか?」


 トマスの問いに、兵士はわからないと首を横に振った。


「詳しい事は俺ではわからないが、もしかするとオウンドーラ王には正確な情報が届いているかもしれないな」


 兵士はこれから王宮に王都の様子を報告に行くのだと言う。

 詳しい情報が知りたいトマスは、兵士と共にオウンドーラ王の元へ向かう事にした。

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