インターミッション
26.もう一つの真実
生命あるものが全て輝く惑星、ステラ・ルークス。
国中の人々は楽しく暮らし、王宮の中は希望が溢れていた。それはすべての草花も、生き物たちでも同じことだった。
──小さい子供が二人も姿を消して、十五年になるにもかかわらず。
十五年前のあの事件の後、ステラ・ルークスの王・ラックは、アルラとパフェット、そしてその夫・コールに恐ろしい事実を告げた。
この惑星には決して埋めることの出来ない穴があり、それは何百年もの昔、オブスクルムが開けていったものだ、と。
「何が目的だったのかはわからない。穴をあけた時に自分たちまで消し飛ばしてしまったのだろう。あの惑星へ行っても誰もいないことは、調査でわかっている」
ステラ・ルークスを滅ぼそうとして造り出したものは威力が大きすぎて、自分たちまで滅びることになったようだ。
「ところでコール、この王宮の庭に禁断の森があるのは知っているな?」
「はい。あそこには決して近づかぬよう、両親からきつく言われておりました」
「では、何故だ? 何故あそこに近づいてはいけないのだ?」
「それは──」
コールは答えることができなかった。何故あの森が禁断なのか、気にしたこともなかった。あれほど近づくなと強く言われていたのに、何故なのかは一度も聞いたことがなかった。
「知らなくて当然だ。あそこに何があるのかは、今まで歴代の王にしか知らされていなかったのだからな」
「一体何が……まさか、あそこに穴が?」
「そうだ。しかもそれはただの穴ではない。人を吸い込むのだ。それもすごい威力でな。大人であれば持ちこたえることも出来るのだが……子供らに言っておくべきだったか」
二人の子供は十中八九その穴に吸い込まれたのだろう、とラックは言った。
「じゃあ、この惑星はどうなるの? 跡継ぎがいなくなったら滅んでしまうって……」
アルラが心配して言った。生まれた時からほぼ確定していた王の後継ぎがいなくなった今、考えられるのはこの惑星の滅びだけだ。
パフェットも同じことを考えていた。自分たちはもう死んでしまう。
けれど、王はそれを否定した。
「アルラ、前に言わなかったか? もしもこの惑星が滅びるならば、それは王位を継ぐものが本当にいなくなった瞬間だ。しかしアルラ、あの子達が消えたのはいつだ? もう何時間も前のことだろう」
ラックは両手で球状のものを創ると、その中心が青く光り出し、やがてそれは青白い水晶へと変わった。
中にはステラ・ルークスで生まれたと思われる大人が三人、意識を失った二人の子供を連れていくのが映っていた。
「これからどうなるの?」
「子供たちはあの者たちが育ててくれるだろう。心配ない」
「じゃあ、王位は……」
「それも心配ない。その時になったら私が迎えに行く」
「どこへ? これは……あの子達はどこにいるの?」
何が一番心配なのかわからなくなってしまったアルラとパフェットに、王はもう一つの真実を告げた。
王が造った水晶は十五年間絶えることなく、この部屋に浮かんでいた。アルラとパフェットは毎日ここを訪れて、子供たちの成長を見守っていた。
「そういえば、ねぇアルラ、あの子達がこっちに戻るのって来年よね?」
「そうね。でも、来てくれるかしら? こっちのことなんかどうでもいい、とか言わないか心配なのよ。あっちですごいことになってるでしょう」
「大丈夫よ。あの子達なら……。一時はどうなるかと思ったけどね」
数ヶ月前にアルラが娘に会ったことを、パフェットは良くは思っていなかった。一緒に王位を継ぐことが決まっている自分の息子ではなく、他の男と仲良くさせたからだ。
「わ、私はただ、会いたいっていう願いを叶えてあげただけよ……」
「そうね……。あっ、ほら見て。あの子たち……ふふ、来年が楽しみね」
二人が部屋から出て行ったあと、水晶の中でバタンと音がした。
大きくなった子どもたちが、荷物を持ってどこかへ向かっていた。
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