第24話
【まえがき】
コメント返信できず申し訳ない。全部読んでます。嬉しいです! 楽しみなので気軽に書いてください。思いつかなかったこともあり、最新話で使わせてもらうこともあります。読者さんと一緒に物語を作れるのはWEB小説の特権ですよね。
【アレン】
ネクの話によれば【怠惰】の魔王を襲名することのメリットとして、配下強化【眷属化】が与えられるとのこと。なんと固有スキルである。
【再生】に加えて二つめです。羅列すると絶対俺TUEEEなのに、そうじゃないという。もはや詐欺である。
【眷属化】によりただでさえ優秀なシルフィ、ノエル、アウラをもう五段階ほど高めることができるとのこと。
五段階⁉︎
はい、来ました! いよいよ俺TUEEEのターンですね。もちろん俺も強化されるんですよね⁉︎ と確認したところ、魔王は襲名の前後で特に変わらないらしい。
なぜだ——⁉︎ 意味が不明である。
そもそも魔王候補の名に上がる時点で対象は天元突破した存在であることが圧倒的らしい。
例外が怠け者ゆえに配下を強化できる【怠惰】。だからこそ最弱の魔王は【怠惰】らしい。
それ襲名しても大丈夫なんやろな? 数日後に、ククク……奴は魔王の中でも最弱。痛くも痒くもない、みたいなテンプレだったらお断りですよ? 瞬殺されとるがな!
とはいえ、シルフィさんたちに食べさせてもらっている俺ぴったりというわけである。
やかましいわ! 俺だって最初はな、張り合おうと頑張ってんだ! なのにドンドンドンドン、手の届かない領域に行っちゃってさ。
置いてかないでよママ! 僕はここだよ! ママー! である。枕をびしょ濡れにしたことも一度や二度じゃない。いや、枕はまだ開発してないけど。
デメリット、というほどではないが、魔王は何かしらの形で人間社会と繋がりを持ち、支配者としての顔を持つのが良いらしい。
これが俺の頭を悩ませる最大の種となった。
【色欲】の魔王であれば花街による性、【強欲】の魔王であればダンジョン運営による業、【暴食】の魔王であれば年貢による食糧など。
【怠惰】なのに支配……?
俺の頭上に?が浮かぶ。
だが、案がないわけでもない。脳裏に浮かんでいる理想が一つだけある。
そもそも俺は魔王になんて一切の興味がない。食っちゃ寝ボディタッチリバーシの日々が続けばそれでいい。
ただ、そんな俺でも可能であるならば生活水準を上げていきたい、という願望があったりなかったり。
いえ、シルフィさんたちがよくやってくれていますので不満や文句なんて一切ないんですよ? 口にする資格が俺にないことも重々承知の上。それは間違いなく本音である。むしろ彼女たちの活躍は出来杉くん。
たとえば料理。
シルフィたちのおかげで自給自足が可能となったとはいえ、どうしても味が劣っている点は否めない。
異世界転生者あるあるだが、前世の外食店の偉大さが身に染みてわかる。
前世だと美月ちゃんが育ち盛りでよくおねだりされたものである。頭に回す分の栄養分も全てたわわに行ってしまったのが残念ではあるが。
要するに俺は某柱のように「美味い!」と唸りたいのである。「そうでもない! そうでもない!」と口にするのは材料を栽培してくれたシルフィたちにも失礼である。
さらに修道院。雨風凌げるだけでも素晴らしいことではあるのだが、やはりまだまだ改善の余地はある。欲しい家具など挙げ出せばキリがない。
娯楽だってそうだ。やはりギャンブル。競馬や競艇、カジノなど。ふらっと立ち寄り尻の穴の毛まで毟り合うのはそれはそれで一興である。
すなわち、統合型リゾート(IR)という存在に憧れているのである。
男なら一国一城の主になってみたいと思ったことはあるだろう。
この場に美月ちゃんがいれば「お兄ちゃんはバカ殿だね♪ ちょんまげ付けてあげる。それで外を出歩きなよ」と言うに違いない。鬼畜!
統合型リゾートというのは国際会議場を始め、ホテル、商業施設、ショッピングモール、レストラン、カジノ、劇場、映画館、アミューズメントパーク、スポーツ施設、温浴施設などが一体となったアレのことである。
その総支配人となれば、人間の幸福感や楽しみを支配していると言えなくもないだろう。
どうして俺がこんな思考に至ったかといえば、軟禁命令が下されたからである。
「お前弱いくせにすぐに拉致されるんだから引きこもってろよ! 面倒かけさせんな!」なんてヒロインズに言われてみ?
そりゃ現実逃避の一つや二つ、妄想するよ。軟禁された場所の範囲内で全てを賄いたいと考えるのは当然でしょうよ。
間違っていたのは俺じゃない。世界の方だ!
とはいえ、IRを設立、運営できるだけの能力、気力が俺にあるのかと問われたら、もちろんない。即答である。
あるのはせいぜい【再生】の恩恵である体力ぐらいだろう。
さらに資金、人手も圧倒的に不足することが目に見えている。
たった五十人の奴隷を養うことすらままならず、リストラ計画を企てるような甲斐性なし。誰がどう考えても夢物語である。
そして俺は身のほどを弁えられるバカだ。
バカというのは己を客観的に評価できず「なんかできる気がする」などと根拠のない自信と浅いリサーチで大きな壁に突進し、盛大に砕け散っていくのが常である。
俺はそんな冒険をしない。平々凡々。地に足をつけて生活していく所存である。
そもそも額に汗を浮かべて働いているのはシルフィたちである。
俺は彼女たちの意志を尊重したい。
修道院に篭って食料を恵んでもらい、開発や錬成で日々快適になっていくおかげで、案の定、俺は見事に堕落した。
さらに加えて、生脚を堪能しようなどと男の欲望も隠さないという、クズ男っぷりが留まるところを知らない。
おそらく俺が未だ捨てられていないのは、俺の現代知識が大金と交換可能であり、利用価値があるからだろう。
もしかしたら、私たちが見放したら、彼はどうやって一人で生きていくんだろうという同情、母性によるものかもしれない。
もし後者ならおっぱいを吸ってみたいです。口が裂けても言えませんが。
俺ができることと言えば、いやらしいことなど全く考えていませんよ、という素振りで服を作ったり、石鹸を作ったり、温泉を提案することだけ。
シルフィさん、貴女本当に綺麗な脚してますよね。今度舐めさせてもらえないですか。
後に統合型リゾート(IR)総支配人兼【怠惰】の魔王が実現してしまうことなど夢にも思っていない俺は「HAHAHA」と笑い飛ばし、一蹴してもらおうと理想を口にした。
結論から言うとこれが良くなかった。
知事並みの殺人業務(といっても決断の連続なだけなのだが)を背負うことになったのは他ならぬ自らの発言である。
諸君。以前忠告したことを覚えているだろうか。
口は災いの元である。
「——なーんちゃって」
と統合型リゾートについて口にした直後である。
「面白そうじゃない! やりましょアレン!」
とシルフィ。
チミ、最近ほんま自重せえへんな。なんなん。エンシェント・エルフってうつむかない種族なんか?
まさかとは思うが俺は脇役で『無能再生士アレンはうつむく』始っとんちゃうやろな?
勘弁してや。
あっ、こらちょっと。腕に抱きつきのは卑怯ですよ! ふわおおおおおお!
横乳! 横乳! よこちちちちちちちち!
えっ、柔こ! 柔こおおおお! すごい! 噂は偽物だったんだ! 二の腕の比じゃないよこれ⁉︎ しかも絹に近いチャイナドレスを着用しているおかげで手触りが良すぎる!
しゅっ、しゅごい……! (語彙力消滅)
これは後で冷静になったときの分析なのだが、統合型リゾート(IR)というのは知識や知恵の集合体である。情報量は膨大である。
ちまちまちまちま、俺が小出しにする現代知識(これが尽きたときがバイバイアレンだと踏んでいる)を一気に吐き出させる算段だろう。
さらに言えば【眷属化】により強化されるのはただでさえ主人公であるシルフィさんたちである。
普通こういうのってボスが最凶の上で配下も最強っていうのがお約束のはずで、最弱ってあまりにもあんまりだと思うの。
女の武器を使ってまで金の卵を吐き出せようという魂胆。恐れ入るシルフィ……!
やはり陰の黒幕は伊達じゃありませんね!
「造れるものがたくさん。面白そう。ワクワクする」
いつになくノエルがやる気である。
最近わかったが、彼女はモノ作りさえできればそれでいいところがある。
作成バカ。製造バカ。錬成バカなのかもしれない。
いや、あのちょっと。腕掴んで抱き着いてこないでもらえる? 柔らかい感触で理性が吹き飛んじゃったらどうする気?
そんなぎゅっとして……そんなわかりやすい色仕掛けてで籠絡されるアレンさんではないわ!
——今度なにが造りたい? いくらでも言ってね。
極めつけはアウラである。
「ふふっ。ならわたくしは美を使って世界中の女性を虜にしてみますわ」
諸君。むにゅうううう、である。むにゅううううが背中に広がっている。
なっ、なんという乳圧!!!!!! アウラさん! アウラさん! 貴女なんちゅうものを押しつけていらっしゃる……!
そんな色仕掛けてしても俺に通用すると思ったら大間違いだからな⁉︎
——なにか欲しいものある? なんでも言っていいよ。
「【色欲】の魔王自ら足を運ばれるのよね?」とシルフィ。
言葉が耳に入ってくるものの、意味が理解できない。俺は突然のラッキースケベ発生により全集中。
鼻息荒い呼吸、壱の型、大興奮! だ。
現在、俺の生殺与奪の権はシルフィさんたちに握られています。この幸せ過ぎる感触を堪能できるならそれで構いません。どぅふふ。判断が遅くてすみません。
「そうよ〜」
「少し期間をもらいましょう。そして私たちがいまできるおもてなしでアレン推薦の是非を決めてもらうのはどうかしら」
「おおっ! それはいいじゃねえか。ラア様的にも良案だと思うぜ」
「うーん、そうね。いいんじゃないかしら〜。その方が面白いそうだし」
「それじゃ何から取りかかるか、方針を聞いてもいいかしらアレン……アレン? ちょっと、どうしたの⁉︎ 立ったまま気絶してるわよ!」
俺はいつの間にか西川くんになっていた。
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