第3章

17.ある冬の朝

 そうこうしてうちに三学期になって。

 奈緒と弘樹がクリスマスに何をしたかは、敢えて秘密にしておきます。だって、人さまのプライベート、勝手に暴露しちゃいけない。でも、聞きたい人のために、ちょっとだけ。

 お昼過ぎに待ち合わせして、クリスマスプレゼントを交換して。こないだの遊園地よりも大きいテーマパークに行って、ライトアップされたツリーを見て、奈緒は弘樹に家まで送ってもらったそうです。

「ほんとに優しいなぁ、弘樹は」

 始業式後の教室で、私は奈緒と喋っていた。

 クリスマスを一緒に過ごした二人は、お正月は会わなかったらしい。二人とも、家に親戚が集まって忙しかったとかで。ちなみにうちは、行くほうで、お正月はおばあちゃんの家で過ごしました。

「なーんか……懐かしいな」

「なんだよ? なに笑ってんだよ?」

 弘樹を見て笑う私。

 今、奈緒と弘樹はものすごく仲良しにしているけど、一番最初は私が弘樹と仲良くなった。というか、話しかけられた。でも実は、弘樹の最大の関心事は、奈緒だった。

 というのを思い出して、つい、笑ってしまった。

「だってさ、奈緒聞いた? 最初のときに弘樹がどんなだったか」

「言ーーわなくていーよ!」

「なに? 何かあったの?」

 私の言葉を遮ろうとする弘樹と、興味津津の奈緒。

 話の続きをしようとすると、弘樹はそそくさとクラブ活動へと逃げてしまった。

「夕菜、なに? 弘樹、どんなだったの?」

「ん~……別になんもないんだけど……なんかね……最初、私に話しかけてきた時点で奈緒が気になってたみたいで……ほんとに好きなんだなぁって」

「夕菜は弘樹を……どう思ってたの?」

「えっ、うーん……クラスメイトだよ。ちょっとくらいは気になったけど。奈緒、私は奈緒に幸せになってもらいたくて弘樹を紹介したんだからね」

 本当は好き、かもしれないけど。

 奈緒がせっかく手に入れた幸せを、いまさら奪うなんてとんでもない。そんなつもりもない。

「ごめんね、夕菜」

「なんであやまるのー。それに、弘樹が奈緒を選んだんだよ」

 そう言い聞かせて。


 バレンタインの日は、もちろん。

「ごめんね夕菜、今日は……」

「いいよいいよ。楽しんでおいで」

 奈緒と弘樹はクラブを休んで、どこかへ出かけて行きました。私はそんな2人を見送って、一人で下校。

 の、つもりだったのに。

「夕菜ちゃん!」

 久しぶりの声にびっくりして振り返ると、牧原君が走ってこっちにやってきていた。

「どうしたの」

 牧原君は少し息を切らしている。

「今日、何か予定ある?」

「別に何もないけど……どうして?」

 なんとなく想像はついたけど、一応聞いてみた。

「お願い! 今日だけでいいから、僕の彼女になって!」

「はあ?」

 牧原君と付き合うことは、しばらく前にお断りしたはずなのに。嫌いではないけど、踏み込めない。って言ったのに。

 想像していた答えではあったけど……。

「やっぱり、ダメ、かな……」

 いろいろ考えて何も言えずにいたら、牧原君はため息をついた。

「ごめんいきなり。今の、忘れて」

 そう言って彼は歩きだしたけど、

「待って、教えて」

 歩きだした彼の腕を掴んで、動きを止めた。

「なんで今日だけなの? 明日と明後日と……もっと先はいらないの……?」

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