卒業証書は渡せない

玲莱(れら)

プロローグ

0.ねぇ──

 ねぇ──。

 あれからもう1年経っちゃったんだね。


 毎年この季節になると、いろんなことを思い出す。幼稚園で知り合って、奈緒は私を遊びに誘った。それが最初。奈緒の家は大きくてきれいで、私にはお城のように思えた。それからどんどん仲良くなって、小学校から中学校、高校までずっと一緒だった。


 ねぇ、奈緒──。

 また私を遊びに誘ってよ。あのときみたいに。


 明るくて元気な奈緒は、クラスみんなに好かれてた。グループで何かをするとき、奈緒がいるグループが一番賑やかで、楽しそうだった。奈緒がいれば何でもできる、みんなそう思ってた。学年でも、奈緒を知らない子はいなかった。


 ねぇ、奈緒、帰ってきて──。

 ずっと一緒だったのに、どうしてひとりで行っちゃったの?


 クラスやクラブが違っても、時間が合う日はいつも一緒に登下校した。私のこと、奈緒のこと、クラスのこと、2人で喋る時間がとても楽しみだった。奈緒はみんなのことが好きって言ってた。嫌いな人はいないって。


 ねぇ、奈緒、帰ってきて、いろんな話をしようよ。


 ねぇ、奈緒──。

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