第544話 領地の商売6


お父さんがいきなり国王を連れてきた


前触れ無く、しかも二人


黒葉お母さんの作ってくれている[新異世界辞典]で調べると、お父さんのいるニホンは世界名ではなく国名だった


ニホンは経済大国でお父さんのいる国でその国の王が一人、もう一人はアメリカと言う世界最大、最強の国らしい


数人の従者が居たが全員を暗部に見張らせることにした


まさかのお父さんの父上が居て驚いたが従者の一人と敵対してるらしく、殺されないように軟禁した


この土地でお父さんを慕わないものは居ない



・・・・・だから激しく怒っていた



暗部も、周りの数人も今にも殺してしまいそうな威圧を向けている


重要人物だけに絶対に手を出すなと手を出せばお父さんの迷惑になると強く言いつけておいた



こらっ!すぐ外で処刑道具を磨くんじゃない!!



遥お母さんと黒葉お母さんが更に広めてくれたウドン文化、実は全部がウドンではなくパスタや中華麺、うどんやきしめん、そうめんというそれぞれ別のものであったらしい


商品の確認で読めるようになってきて後から知ったが・・既に全てウドンで定着してしまっている


異世界の麺『ウドン』お父さんに出すと「これじゃない・・・いや、うん、美味しいよ?」と微妙な顔をしていた


今は使い方の分かったカレーコウドンが人気である


充分に美味しい気もするが・・やはり、元のウドンを知っているお父さんには物足りないのだろう・・・もっと美味しく作らねば


ガムボルト前王陛下、いえ、ヨーコお母さんはタコヤキを普及しようとしているがなかなかうまくいっていない


変な丸い穴の空いた板を使ってつくる食べ物らしいがそれに合う燃料を毎回持ってくるのは危ないから止められたのだとか、酒の肴にもなると聞いてドワーフ達が加熱に使う魔導具を作っている



「タコヤキの街にしてみせますわ!」


「タコ無いよ?」



タコというのはクラーケンの幼体のようなものらしいがここは内陸で海はないし勿論クラーケンも居ない


味付けした肉や果物をいれても美味しい料理だそうだけど、それは肉入りのヤキであってタコではないのではなかろうか?


後に、お父さん、まさかのクラーケン討伐に行った・・・・・本気でここをクラーケンヤキの街にする気なのか?



ドワーフ製クレーンは失敗した


重さに耐えきれずポッキリ折れてしまった


既に壊れた第一号のコンテナを使って入っていた中身の重さを正確に計算して持ち上げようとしたが無理だった


普通は木で持ち上げられるからと木製で試したのがいけなかった



「純人族しか居ない異世界人にドワーフが金属で負けてなるものかっ!!」


「まっちょれ!すぐに作ってみせるからの!!!」



なにやら気合を入れているドワーフ達、次は金属製でとにかく頑丈に作ってくれているが、いつになることか・・いや、ザウスキアから錆びた鉄製の武具が大量に届いているし案外すぐ作ってしまうかもしれない


今はお父さんが空を飛んで持ち上げてゆっくり下ろしてくれている


大きな丸太がへし折れる力を空で持ち上げるなんてとんでもないな・・



コンテナを整備した土地に規則正しく置いていき、そこで食料を取り出す


困窮した難民の目の前で行うのは酷かも知れないがそれも仕事になる


異世界の王様はとても友好的で、よくわからない仕事をその玉体が汚れても手伝ってくれた


お父さんは大分重宝されていると見える



光る魔導具は素晴らしい


デンタクと同じく光の力を吸収して夜を照らす


やはり新たな難民の中には奪おうとする犯罪者もいるし夜道も歩けるというのは素晴らしい


夜目の効く種族にとって夜は犯罪のしやすい環境であるしそれを防げるだけでも素晴らしい


大量に増えたコンテナに取り付ける事もできて領地は夜でも普通に歩けるようになった


色を塗った木は腐りにくくなるらしく、街灯として使われているがボブとダート国王の名前から変な色の・・じゃない素晴らしい色の柱は目印となり、コンテナ街のボブ通りとダート通りというわかりやすい名がつけられた


お父さん帰ったのにおいていかれたランディさんは酒場で荒れていたが仕方ないだろう


お父さんの客だから国賓のような扱いでも良かったのだけど・・・なんか働いてた


異世界の品々の使い方を教えてくれて助かったし、なんか酒場の娘といい感じになってた・・異世界人凄く友好的である



コンテナは数も増え、様々な区画が出来た


これだけの資産を集めるだけの金を返せているわけではない


お父さん、実はとんでもなく商才があったのかもしれないな



人も増えてコンテナからも様々な訳のわからないものも増えている


お父さんはニホンだけではなく向こうの世界中で食品を集めているらしく、とんでもない負担になっているのではないかといつもヒヤヒヤする


本人は「大丈夫大丈夫」とばかり言うからむしろ心配になる、騙されてない?借金とか利権売ってない??



ある日、お父さんの仲間である数人が荒野を突っ切ってきた


巨人の血が先祖返りした『巨将』アダバンタス・レーダ・レス・ザウスキア

獣の神の末裔『氷姫』フィルフェリア

エルフの貴族『勇者』エゼルリーリャ・ノッセ・アラレウム・バイセン

黒きエルフの狂犬姫『破壊王』シーダリア

賢人の恥『子供と女性の味方』ニロン・ドマイヤーズ・イセイケ


お父さんの旅の仲間、錚々たる面子である



戦闘後であったのだろう、三人が負傷していた


幸運にもお父さんが居たので治ったが強い呪いがかかっていたらしくなかなか治りが悪かった


それよりもお父さんへの死の予言をした女がいる


死の予言には恐怖したが言われているお父さんが冷静でいたから落ち着けた


お父さんはこれまでに何度も神々や精霊からそういう忠告をされていたらしいし回避すればいいだけと考えているようだ


これまで多くの戦場を駆け抜けてきたお父さんだから落ち着けていたのかもしれない


我々の立場では、心臓が掴まれるほどに恐ろしい予言であったというのに



お父さんはこちらに来る時間は減った



これまでもそうだったけど、ミルミミス様がついているから大丈夫なようにも思うが用心のためだ


来る度にお父さんは使う武器や攻撃方法、防具をケテスティア様にしつこく聞いてから帰る


今は毒を使った戦法を考えているようで常にまっ黒の仮面をつけている



「シュコー・・・シュコー・・・」



毒除けの道具らしい


こちらの世界からも毒という毒を集めるように言われてエッサイ神官長にも話を通すと[ヒュドラゾンビの毒腺]と[死の目前に呪いを撒き散らそうとした妖精の鱗粉]それと[超高濃度の惚れ薬]などを渡された


他にも[リッチーの背骨の剣]や[死神の爪][薬神の全回復するが1分後に死ぬ薬]などもあるそうだけど封印を解くのに時間がかかるし、受け渡しには特定の加護がないと骨まで崩れると・・・必要ならお父さんにとってきてもらおう


今はとにかくカンヅメの販売を頑張ろう、モモやミカンという果物や肉入り、ご飯入りなど、種類も数もある


犬と猫の絵の描かれたカンヅメも大人気だが・・絶対これ人用じゃないよな


軍によっては好みもあるがどれも飛ぶように売れる、食べ物が年単位で腐らないなんて、とんでもないもんな


金はきっとお父さんの役に立つだろう


アゴー王やダート王のような人の助力を得られていることを考えると必要ないかもしれない


それでも、いざという時に何もないよりかはなんでもあったほうが良いはずだ



「さぁらっしゃいらっしゃい!新商品のカンヅメだよー!!」



・・・戦争もあって、どうしても不安はある


それでも良くしようと働き続けることには変わりはない

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