第421話 お年玉と毒


「あけまして、おめでとうございます!」


「「「「あけましておめでとうございます」」」」


「<これからもよろしくですぅ>」



どうせなので信徒を集めて挨拶することにしました


それと行事でお決まりの【清浄化】を空に打ち立てる


僕だけじゃなくてせーちゃんと黒葉が結構大きい


一般神官はまだお箸ぐらいの光しか出せない


竹村は顔を真赤にさせてプルプルさせながら【清浄化】を保ってるけど・・・違うそうじゃない、筋力でやるんじゃない



向こうでは行事だけではなく常に【清浄化】を神官が立てるのはあるあるだった


空気は綺麗になるし瘴気は減る


訓練になるし人に害がないのがいい


光の粒はその土地にゆっくりと散らばって行って土地に染み込む


雲のような軽い物体なら散らすことが出来るので僕は遊んでいたのだけど絵を描いていたりしたら怒られていたので真っ直ぐ立てるようによく言われていた


旅では移動する方向や瘴気に侵されてそうな土地、ダンジョンや魔物の巣、アンデッドの住処にぶち込んでいた


瘴気は減らせるし、瘴気のある場所で生活する魔獣や魔物には少し効果がある


アンデッドの住処なら遠距離から安全に対処できる


人の領域であれば入り込んだ魔物を倒せるし人が生きやすく出来る


うん、何をするにしても悪いところのない魔法だ



はるねーちゃんもやっているけど全く出来ていない


魔法には適性や技量もあるので神官たちには続けて練習してもらいたい



<お年玉ですぅ、よーすけからうけとって行くですぅ>



というわけで配っていく


お年玉、正月に貰っていた、と思う


目上の人間という言葉が日本にはある、地位や階級や年齢が上の人という意味だ


年齢は僕が下だけどこっちのレアナー教では僕が一番偉いことになる


もしくはせーちゃんだけど、レアナー様判断だ


お金を渡しても良かったのだがレアナー様と相談して決めたお年玉はちょっと別のものだ



「はい、はるねーちゃん」


「ありがと、これは?」



渡したのは向こうのお金だ


お金に【幸運】の魔法をかけただけのもの


効果は多分気持ち程度


金運や恋愛運というものがあるが多分恋愛運の向上と不運の回避、ほんの僅かに運が良くなるぐらいしか効果はない


いや、効果があるかも怪しい


だけどこういうのは縁起物だしね


その後はレアナー様や神に祈って、皆でおせちやお雑煮を食べた


お雑煮は地域で違うらしく色んな種類が美味しかったけど



「どれが美味しかったですか?」


「<この豆のやつがさいきょーですぅ!>」



ふむ、お雑煮は肉や大根、もちが入ってたりするものが多いが・・・・


なんだか茶色い、赤茶色い



「けほっ!?甘っ」




食べてみると思った味じゃなさすぎてびっくりした


小豆の甘い汁にお餅が入っている



「ぜんざいね、それはお雑煮じゃないわよ・・・ついてる」


「ありがと」



咳き込んで少し顔についてしまったのかはるねーちゃんが拭ってくれた


ぜんざいはお雑煮と同じでお餅を入れた汁だけど、甘い


ゆっくり食べてみると甘いだけじゃなくてお餅がアクセントになって美味しかった


少し焼いたお餅とトロトロした柔らかいお餅の2種類があったけどトロトロの方が好みかな



「私はお雑煮には反対だったんだけどね」


「なんで?」



はるねーちゃんは肩をすくませて苦笑していた


持っているお雑煮を見ているがなんだろう?こんなに美味しいのに



「心配のし過ぎだったかもね、あのね」




「キャーーーーー!?誰かぁ!!?」




「やっぱりか」



会場内を見ると何人か苦しんでいた



「んっぐっ!!!??」


「吐きなさい!頑張って!!」



ヨーコの背中を黒葉が叩いて・・・吐かせていた


え?なに?毒??


倒れてる他の人にも黒葉をまねて対処する


僕はあまり毒は効かないけどなんだ?


全員なんとかなったが原因がわからない



「やっぱり、こうなったか」



苦い顔をしているはるねーちゃん


治癒魔法を倒れた数人にかけておく



「何なんですのあれは!?」


「喉をつまらせただけよ」


「なんて?」



聞いてみると


・お餅は喉をつまらせやすい食べ物

・外国人も多く初めて食べる人もいる

・わかっていても喉がつまることがある

・毎年何人もこれで死んでしまう



「・・・・・・・・お餅怖いな」


<ですぅ>



お餅を食べる時は三人以上で食べること、そもそもお餅は推奨しないことを皆に言っておく


美味しいからと命の危険のある食べ物を食べるのは良くない


そもそも毒を持たないものを食べればいいのに、そう思うが



「日本だとそういう食べ物って結構あるのよ」


「だよね、むしろ毒があっても食べに行くのが日本人だよね」


「「えっ」」



はるねーちゃんと黒葉は当たり前のように言うがそれめちゃくちゃ怖いんですけど・・・


喉からお餅が無くなったヨーコと声が揃った



「怖いですわ・・くれいじーですわ」


「なぜ毒をわざわざ・・・日本人凄いな」


「元杉も日本人ですわ」


「そうだった」



喉の構造が少し違う獣人も居るし日本人以外にはお餅禁止令を出すべきかな


これが異文化というものか、あ、僕日本人だった

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