第330話 関羽と聖王


増えたタヌカ


なるほど勇者タヌカから数代にわたっているのなら子孫は多くても不思議ではない


1人目のタヌカを見てタヌカの不死性の絡繰はもうわかっている



どこからか武器を出してくるタヌカ兄弟


スズキは杖、ハナコは槍、オオサカは棘は短めのモーニングスター



背と腕を走った熱は毒、ハナコの槍が刺さり、こめかみはモーニングスターの持ち手で殴られたのか



スズキはブツブツと何かをつぶやいているが杖がわかりやすい



ゴォウ!!



火炎特化の杖だが、密封空間で使うなんて何を考えているのだろうか?


迷宮であるし別の法則が働いているかもしれんが・・


身の丈ほどある巨大な火焔球が地を焼いて迫ってくる



甘い、甘すぎる



前に出て火焔球を無視し、槍使いのハナコの顔面を殴り、迫って来る鉄球が胸に当たっても無視し、両手で顔面を防いでいるが手を下げて顔に一撃入れる



「おまえっ!?よく、も・・・!?」



範囲重視の火焔球などドワーフである某に効くものではない


霞む視界も強い毒ではない


杖を持ったスズキにも顔に一撃入れて気絶させる



「スー、ハー・・・・!」



髭についた火を払ってタヌカから包帯を剥ぎ取りミスリル製の針金を手甲から取り出してタヌカ兄弟の首に巻いていく


寝かせたタヌカ兄弟の首に針金を巻いて動けなくし、タヌカ達の包帯を自らの傷に当てて傷を治す



彼らの不死身とも言える強さの秘密がわかれば恐れることはない



1人目のタヌカには手こずったが倒れている彼を見て気が付いた


黒い布地の下の傷はすぐに治るが顔の傷は治っていなかった


全身を覆う黒い布地には父上の治癒する力が付与されている


だからこそ父上の気配が部屋の中にいてもわかりにくかったし、この布で覆われた身体の傷はすぐに癒えた


流石に顔まで覆うと見えないし戦えない


だから顔を晒す他なかったのだろう



顔に拳が当たった瞬間に魔力を拳から放出し、意識を飛ばすことに重きをおいた


1人目なら顔への攻撃は偶然の一撃かもしれない、2人目は鉄球なぞ効かぬことを知らなかったのでこれで勝てると思い込んだのだろう



某が絡繰に気付いたことに気がついたようだがもう遅い



3人目は魔導師、近接戦闘は慣れてなかったのかあっけなく終わった


普通の英雄であれば火炎は無視できぬし、火炎に紛れてとどめを刺しに来た槍使いも悪くない、鉄球使いも胸の中央を狙っていたのは外してしまうと隙きの多い武器だから仕方ないだろう


狙いも悪くなかった、普通であればそこで終わっていた



ただ・・



「相手が某だったことが不運であったな」




自分の肩や頭を黒い布地の魔道具で治癒した後背骨を折って瀕死の糸使いのタヌカの腹にも包帯を掛けてやる


火炎の魔法のせいで酸素が薄いがドワーフである某には問題はない



下がってこの部屋を塞がれた壁に近づく



ズガンッ!!!



壁を殴って削ることはできても母上達のいる場所には届かない


位置を変えて殴るも繋がらん


向こうにもタヌカ兄弟がいるかもしれないと心配である


ミーキュを待つしか無いのか?壁の向こうに敵がいるとしてすぐに戦闘ができるように息の切れぬようにゆっくりと壁を破壊し続けて待つ


そのうち毒もこの魔道具で収まるだろう



ぐにゃりと壁が動いた


ミーキュがなんとか開けてくれたようだが状況は悪い


ちらりと見えたが人影が地面に飲み込まれたことから敵はまだいたようだ



母上達は負傷し、ミーキュも青い顔をしている


3人には怪我一つなく迷宮から返したかったのだが



「こちらをお使いください、傷が癒える魔道具のようで、ぬ!?」


「あら、ヴァンでしたか」



いつの間にか影に潜られていて剣を向けられた


反射的に拳を握って打ち据えてしまいそうになってしまったがお互いを確認して剣を下げてもらえた


まだ毒による影響が抜けきってないのかも知れぬ



「ガムボルト母上ですか、肝が冷えましたぞ」


「元杉を起こす魔法は手間がかかります、治療は任せてもいいですか?」


「わかりました・・・が、父上?」



どう見ても父上ではない


父上は小人のように小さいはずだが今は某のような体格をしている


しかしその風貌はたしかに面影があるし某との繋がりも感じられる



何をされたのだろうか?父上の苦難に何もできなかった某の不甲斐なさに心が苛立つ


母上の腕に一番破れていない黒い魔道具を巻いていると後ろから声がした



「やめてよ、その人は私のだ、僕のだ、俺のだ、さわんなさわんなさわんなさわんな」



瓦礫の散乱した床から聖王がでてきた、横に転がっているハルバードを手にとって


某が前に出る


某には武器はないが仕方ない



ちらりとミーキュを見るが気を失っている、限界だろう



「 さ わ ん な !!!」



母上の治療は途中だが向かってくる聖王を迎え撃った


上段で斬りかかってくるが半身になって避けて喉に一撃入れる


普通なら英雄であろうとも倒れるだろう喉への一撃


しかし怯むこともなくそのまま斬りかかってくる


下からそのまま横への薙ぎ払い



しかし、動きは素人だ



捌くのは容易い、が



「邪魔しないでよっ!!」


「ぬぅううう!!!??」



振り回されるハルバードの長柄に当たった


無視してそのまま意識を途絶えさせるように魔力を込めて一撃を入れようとしたのだが勢いのない長柄であるにも関わらず某が数歩分飛ばされた



「返して!返して!返して!!!」



それに、喉にいれた一撃、全く効いていない


先程のタヌカと違って怯むこともない



タヌカ達を倒せた理由、それは『重さ』だ



某は重いドワーフ族であり、更に巨神の加護を授かっていることもあり150貫は超えている


父上10人分の重さは超えているだろう


たまに床板を踏み抜いて困るが戦闘においては無類の強さを発揮する


軽く見える一撃が鎧袖一触できる一撃とは思わないだろう


そんな一撃であるにも関わらず、全くというほど傷や痛みによる鈍重な動きにならない



「どいてぇえええええええええ」


「行かせん!!!!!」



そして素人の動きであるにも関わらず魔力に差がありすぎる


某を容易く弾くなんてなかなかできることではない、当然素人の動きとは言え無視はできぬ



暴風雨のようにお互い打ち合う



某のほうが聖王を打ち据えている筈なのに聖王には全く傷がつかず、某が傷ついていく


だが後ろには傷ついた母上方がいる、絶対に引く訳にはいかない



「愛の邪魔をするな!!!!」


「うぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」



根比べだ、聖王の魔力が切れて倒れるか、某が打ち倒されるかまでの

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