第318話 問答騎士、乙女の怒りに触れた代償


後ろからパシュパシュと音が聞こえた


膝をついて倒れるガレティレ


肘の少し上になにか刺さっている、鎧の隙間だ



「行こう」



奈美から魔力があふれている、よほど恥ずかしかったのかお怒りだ


その手には小銃が握られている



「ま、待てぇ、こぉこぉはぁ、とおさ


パシュパシュパシュ・・パシュ


「チッさっさと寝ろハゲ」



私も関羽も、皆それを見守るしか無い



奈美がガレティレの尻にほぼゼロ距離で3発、首筋に1発麻酔を追加した


尻は尻の半分まである鎖帷子を銃口でずらして服の上から3発


そして有効ではないかもしれないとわかっているのだろう、むき出しの首筋に冷静に1発撃ち込んでいた





冷ややかな目でガレティレを見下ろしている奈美・・・・・ちょっとこわい





日本で元スパイを部下にしてから私たちはそれなりの訓練をしてきた


眠らされそうになった場合の対処、自分が護衛対象としてガードされやすい動き、薬品に対する知識、それに戦闘訓練だ


私は近接格闘が得意だったけど奈美は銃撃が得意だった


幸いと言って良いのかはわからないが銃は洋介を攫おうとしたスパイたちが持っていたし取り扱いに長けた専門家が講師だ



「こういうのって1発ずつ撃つんじゃないのね、こう、ジャキってやるやつ」


「それは銃の種類が違いますね、HunterがBearやLion、そしてMoose相手に使うことがあります、1発1発の安定性はこちらのほうが良いです」



講師のGは横においてある単発銃を持って銃弾を横からいれてレバーのようなものを引いて的に当てていく


ターン・・ジャキッ

ターン・・ジャキッ

ターン・・



「こちらのアァ・・自動チョウジュウはAutoのマガジン式ですので連発できます、ただPowderの量も減らしましたが相手のWeightも考えないといけないのでよく気をつけないといけません、撃つ場所も」



残念ながら言語の神様の翻訳魔法も専門的な銃に関する日本語と英語を網羅しているわけではなく微妙な英語交じりだったがそれでも充分だった


銃には後付のパーツを付けることで音は激減したし連射できるし弾込めも簡単


弾丸まで自作する元スパイ達、頼めば何処からか銃だって手に入れてくる


ロケットランチャーなんて使う場面があるのだろうか?



奈美が容赦なく何発も麻酔を打ち続けるのには心当たりがある



1発で成人男性を眠らせることが出来る即効性の高い薬だけど10発までなら後遺症は出ないそうだ


その上で毒や麻痺など、身体の異常を治す魔法を使えば20分以内なら何発でも問題ない、何人も協力で調べた



「な、ナイス奈美!」


「いくつもの魔法を同時に使うのは難しいって知ってたからね、条件が良かっただけだよ」



まだ奈美の声が冷たい


隊員の手を借りてガレティレの装備を脱がせていく


どんな人でも拘束できるようにえびぞりの状態で足首と首を結んでいる



「あ、ちょっと待って」


「はい?」



隊員を静止した奈美、スマホを取り出して半裸で情けない姿のガレティレを撮影した


身体に超強力な接着剤を垂らして金属繊維の編み込まれたロープで絶対に動けない状態にしていく奈美



「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「そこもっと緩まないようにして」

「はい」



奈美の指示に無言で従っていく隊員たち


最後はズタ袋なようなものにいれられて袋の口から顔だけでた状態になったガレティレ


本来、人の肌に使ってはいけないような接着剤だ


だけどレアナー教の聖騎士、それも隊長を名乗るこいつを無力化出来たかはわからない


奈美が魔法を使って麻酔については問題ない状態にまで治癒してくれた






「ぬ・・ぅ・・・ぁ・?」



パシュパシュ



「治しすぎたか」





追加で麻酔を打ち込んだ奈美


奈美を怒らせないようにしよう・・・

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