第316話 問答騎士ガレティレ


「この先に敵が居る、です!」



扉を見てミーキュちゃんがそういった


扉の言葉をそのまま読んでもらう



-この先敵がいます!気をつけて!-



「罠かな?」


「敵に注意させておいて上から天井が落ちてくるとか?」


「管理してる精霊とかが助けてくれてるのかも、です!」



次の扉は十分に休息をとって開けることにした


先程までの青白い魔王と光る洋介の戦いを見て少し疲れていた


遥には目で追えていたみたいだけど私には何がどうなっていたのかさっぱりだ


ネオンライトみたいに光る元杉神官と黒いモヤを噴出する魔王が戦って、お互いが傷つくと光とモヤが金属を削る火花のように飛び散ってよく見えなかった


目に魔力を集めてこれだし向いてないのか訓練が足りてないのか


それにしても魔法とはわかっていても空から落ちる映像は怖かった


どちらにせよ目的は1つだ、この先に居る元杉神官の救出


罠があって敵がいても進む他無い



「行くよ」



遥が開けると男が立っていた



「我が名はガレティレ!!レアナー教聖王直属第四聖騎士隊長ガレティレである!!!」



中年のおじさん、薄毛のM字ハゲで神経質なのか眉間にくっきりと皺が寄っている


鎧も派手で兜を脇に抱え、巨大な剣を鞘に入れて床につけている


2メートルを越える関羽さんよりは小さいがよく鍛えられている


分厚い筋肉の盛り上がりが鎧を着ていてもわかる


プロレスラーやアメフトのラインマンを想像してしまう


しかし筋肉よりもあふれる魔力がこの男の強さを示している



「母上、お下がりください!」


「関羽、行ける?」


「あれは高名な問答騎士です」


「強いの?」


「わかりません、しかし問答に嘘偽りなく正当性があれば道を譲ることもある清廉潔白な騎士であると聞きます」


「問おう!!貴様らはこの先に居る聖下になんの用があってきた!!」




バカでかい声だ



でも元杉神官がいると言われて少し安心する


隊長と言っていたし身分のある人がここを守っているってことは重要なのだろう


敵の言い分を信じる訳では無いが元杉神官の居る可能性は上がったはずだ



「私は!洋介の婚約者だ!!婚約者の洋介が誘拐された!!!だから助けに来た!!!」



遥も大きな声だ


距離は20メートルはあるだろう



「私も!私は!黒葉奈美!!元杉神官の婚約者です!!だから来ました!!!」


「そうか!!全くもって正しい行為だ!!!」



あれ?進めそう?


ムチと杖に手をかけていたのだけど必要はないのかも?



「しかし!聖王にここから先に人を行かせないように申し付けられている!!!」



兜を頭に被って鞘に入ったままの大剣をこちらに向けてきた



「で、あるなら!ここを通さない私の行いにも正当性はあるはずだ!!!」



少しガレティレの身体が光った


魔力が溢れている、やる気満々かもしれない



「下がりましょう」



数歩下って前の部屋までジリジリと戻る


・・・あれ?この人全く動かない?



「噂通りの頑固者ですな、これ以上先に行こうとしなければ彼の者が動くこともないでしょう」


「なるほど」



見える距離で戦闘になってもおかしくないのにこちらを視線は向けても襲いかかってくる様子はない



「作戦タイム!」



扉は閉じずに隙間からガレティレが動かないことを確認する


遥が手をT型にして作戦タイムとなった、スポーツのやつかな?



「どうやって倒す?やつが得意なことは?」


「あれは【神の裁き】という魔法、です!」


「どんな効果があるの?」


「他の身体強化魔法と違って神様に力を借りる、です!」


「彼の騎士は神の意志に近ければ近いほど強くなる、正しい行いであればあるほどそれが如実に出るそうな」



倒す以外のやり方はどうだろうか?


食べ物に毒を入れて差し入れるとか別のルートは・・ないか


日本で考えた強い相手をどうにかする方法、いくつか考えてはいたがそれであの人がどうにかなるだろうか?



「毒、かぁ・・・」



あれ?皆ドン引きしてる?


つい言葉が口から出てしまった



「う、上手くいけば味方になってくれることもあるそうです、試しに説得してみませんか?」


「そうね、奈美、後ろは任せたから」


「わかった」



遥は自信有りげだ


レアナー教国内では元杉神官の拉致は世間では知られていない


だが上層部では元杉神官の拉致は知られた話で元杉神官を助けるためにも助けになってくれる信徒や神官は居るらしい


そう考えると勝ち目は充分にあるだろう



関羽さんは実際に槍を合わせた事はないとかで実力はわからないがこのガレティレと言う男は噂では他国からの侵略をたった1人で跳ね除けた実力者だそうだ



「しかし噂は噂、何処までが真実かはわかりません」



基本的には戦力は関羽がトップ、次に遥、その次がミーキュで後は隊員だ


隊員は一般的な兵士ぐらいの強さはあるそうだけど戦闘力よりもトラップの解除や後方との連絡要員であって基本的に戦闘は関羽さん任せだ



「ミーキュは魔法を使えるのもありますが2神の加護持ち、某も2神の加護を授かっておりますが神の加護持ち自体、とても少ないのです」



そもそも勇者領地には元難民ばかりであり希少な加護持ちは少ない、それも戦争によって戦闘向けの加護持ちは更に少ない


数少ない加護持ちは戦闘に使えない加護持ちの方が多い


戦闘に使える加護を持っているものは連合軍に参加している者が大半であるしこの先に待ち構える聖王と戦えるとしたら関羽さんしかいないそうだ


他の戦闘系の加護持ちも居るには居るが別の仕事をしているかレアナー教国に直接向かった


彼らとは音沙汰が無くなった、きっと捕まったのだ



とにかくあの人を何とかするのに毒はダメらしい・・・育毛剤とかで釣れないかな?

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