第307話 ドワーフの鍛冶


目標が近くなったことで一度休憩を取って疲労をとることにした


少し疲れた気もする



「あ、気づいた?気づいちゃったぁ?少しずつ魔力が減るようになってるの!イタイ!」


「・・・」



この邪神憑きブローチどうするかって思ったけど奈美に返すことにした


奈美はレアナービルで騒がしい中でも寝れるし、このブローチは大切なものだ


起きたみたいだし返さないとね


カロリーのとれる携帯食料を食べて寝た



「ずずずずん♪ぶぉんぶぉんきききぃー♪」



隊員のいびきにも負けず騒ぐレーマ煩い


付け髭に白い手袋に帽子、タクシー運転手のような格好でドリフトのような仕草をしている


至近距離の奈美もよく休めるな



「ぱらりらぱらりら~♪ぱらりら~♪ゔぉんゔぉんゔぉんゔぉん♪グゥエッ」



あ、ムチで捕まえた・・・


結構疲れていたのかすぐに寝落ちできた、ルールの体温は優秀だね








少し寝るととてもスッキリして周りを見る


関羽はへそまでありそうな立派なヒゲに櫛を入れていた



「おはようございます」


「おはよう・・・そうだ、ドワーフってどんな種族なの?」


「どんな、とは?」


「地球では人間以外いないからね少し知ってる程度で興味があってさ」


「少し、とは?」


「んー、お酒が好き、鍛冶がうまい、背が低い、ヒゲが凄い・・・ぐらいかな」


「なるほど、某も父上の生誕地での生活というものにも興味がありますし、似たようなものでしょうな」



日本には獣人とか亜人とか全くいない


なんとなくルールにもブラシを入れながら話を聞く



「コルルルルル」



少し低い音が喉から鳴っている


気持ちよさそうに目を細ませているし気持ちいいのだろう


ブラシで撫でていくとモコモコと抜け毛が出てくる



関羽の話すドワーフは興味深かった


だいたいのドワーフのイメージは正しかったが水に浮かないから水場にはいかない


地神の加護を授かって金属を見分ける力に長けている、なんてのは面白い


ブラシに目が行きながら話してくれる関羽・・・・ブラシが気になってるんじゃないよな?



「ドワーフがなぜ鍛冶が得意なのか?我が部族の言い伝えですが」


「面白そう」



酒はドワーフの血潮、酒は魂、酒こそが絶対正義


そう言われるほどにドワーフは酒が好きだ


好きなだけにとどまらずにあるだけ飲んでしまう


酒が出来上がる前のものまで飲んでしまう、腹を壊す者も居る



『酒をきっちり管理するものが必要だ』



それは酒を飲んでしまうドワーフも感じていた


酒を飲むものもわかっていたから酒を護る何かが必要ではないか?



故にまず酒を保管する部屋に鍵をつけた


あっさり木のドアが破壊された



だから鉄の扉を作った


頑丈なドア、ドワーフといえども破壊している間に他のドワーフが止めに来るだろう


しかしドワーフは酒がそこにあるとわかっているのに我慢なんて出来る筈がない


破られた金庫の鉄板は頑丈な鋼鉄にした


鉄板を破られることはなくなったが代わりに蝶番を壊された


蝶番も頑丈になった


とにかくドワーフから壊されない頑丈さが必要となった


分厚く頑丈な高鉄の塊がドアとなり蝶番も大きな物となった


出来た酒用の金庫はとても頑丈なものとなった



もうこれで大丈夫だと安堵したのは甘かった



今度は鍵を破られた



怒り狂ったドワーフは何度も金庫を破る同朋達の頭をかち割ろうとしたが「酒がうまいのが悪い」と言われ、それはたしかにと納得した


だから鍵も精巧な鍵を作りやっと破られることはなくなった


酒の熟成が進み、やっと飲み頃になったとき、期待に胸を膨らませて鍵を差し入れた



今日ばかりはどんな剣よりも素晴らしい鍵だ



そして鍵を差し入れ・・・金庫は開かなかった



頑丈な鋼鉄の扉、重さに負けない蝶番、精巧な鍵


だが酒の熟成の長い時間に錆びきっていてガチガチで使えなくなっていた


焦ったドワーフは扉を壊して・・・衝撃で酒樽も壊れてしまった


ドワーフは我慢しないことで起きる大惨事を、そして金物を鍛えるだけではなく金物の維持の大切さを学んだ


良質な油を探し出し、金物の真髄を学んだ




かなり興味のある話だ


話を聞いてみるとドワーフの鍛冶の上手さは酒が好きなところから来ているといいたいようだ



「じゃあもうそれで酒は勝手に飲まれなくなったの?」


「いえ、それどころか穴をほって飲みに行くものもいましてな・・・」



頑丈な破れない大型金庫だが何度も破られたそうだ



頑強な扉も無視して穴を掘るものもいれば警備のものに賄賂を送るものもいたし魔法でくすねる者もいた


更に他の神の使徒に盗まれるなどで地神への信仰が活発になり警備も増えた


そうしてそこにあることがダメなのだとダンジョンの奥底に隠されるなどもあったそうな



「どんだけ酒が好きなのよ」


「ドワーフの発展には酒はつきものですな、他にもいろんな説もありますしなにが正しいかはわかりかねます」



なにかに使えるかもと持ってきたお酒の中でも良いものを出して渡した



「これは・・?」


「ブランデー・・だったかな?ごめん、私は奈美みたいにお酒に詳しくないから、それのすごくいい物?っぽい」



渡したのは琥珀色の酒だけど贈答用のすごくいいものらしい


そこまでドワーフって生き物がお酒を求めるのって何かの栄養を摂取するのにお酒が必要なんじゃないかなって思った



「本当に・・よろしいのですか?」


「あー、今飲んでって意味ではないけど飲むほうが力が出るなら良いかなって、ちきゅ、じゃない、異世界のものだから体に合わなかったら捨ててね」


「そんな勿体ない!!?」


「ドワーフがそんなにお酒を求めるのなら飲んだほうが力が出る?好きにしてね」



20年ものらしいけど梱包材あっても壊しそうで怖い


こっちでなにかに使えそうだと考えたけどこの先に洋介が居るのなら使い道はないし、もしも関羽の力になるのならこれは有意義な使い道だろう

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