第213話 みんなさいてい
「娘の真莉愛が、すいませんでした・・・!!」
「すいませんが謝罪は受け入れられません」
護衛するにあたって人間関係は頭に叩き込んでいたがこれは酷い
彼女の父親がドゲザで謝り始めたが少し同情してしまう
俺も娘がいるがもしも娘がこうも間違った道に進もうものなら娘のために何でもすると思う
「いくらでも支払おう・・!だから裁判は裁判だけは!!」
「パパ!何やってるの!!!??」
ドアをバンと開けてマリアが入ってきた
ちっ!ちゃんと見張ってろよ
インカムを確認するとバッテリー切れなのか無線の範囲外なのか動かない
テストもしていない装備はこれだから嫌なのだ役立たずめ
スマホによる連絡で全体の情報を聞きながら部屋の状況把握をしておく
護衛としてはもうこの学園祭には用はないだろうしさっさと撤収してもらいたい・・・うちの人間が誰か殺さないかと心配だ
マリアはまだ怒りは収まっていないようだがそれよりも自分の父親が床に手をついてドゲザしているのが気に食わないらしい
「真莉愛、なんでこんなことをしたんだい?」
「春樹をとられて、ムカついたからしたの、それよりもそんな女に頭下げないでよみっともない!!」
土下座したままの父親に向かってドアの近くで羽交い締めにされたマリアが叫んだ
みっともないとは見苦しいという意味だったか?たしかにな、だがあのドゲザは愛する娘のためのドゲザだろう?
みっともないドゲザを人前で娘のために行う父親
この部屋には彼の部下もいるし会場のスタッフや娘の彼氏、遥様の頬を治療している学生、そして我々がいる
地位のある人間は謝ることができなくなってくるものだと思う
彼は大きな会社の重役だと調べが出ている
自分に厳しく実績もある、人からも好かれている素晴らしい人間だ
俺にはあのドゲザは愛しているからこそ出来る父親らしい行為に見えるのだが娘には伝わらないのか
「もうお金の問題じゃないんです、それに本人の謝罪は意味がありません、これだけ私の名誉が傷ついた以上、裁判で打ち負かさないといけないんです」
「パパにこんな真似させて!どうせ金目的なんでしょうが糞女!!」
「真莉愛、俺、真莉愛のことがわかんないよ」
「裕也までなんで」
今のボーイフレンドがマリアのもとにフラフラと近づいていった
マリアを解放させようとするのなら俺が2人共取り押さえよう
少し前に出ておく
「春樹はストーカーだったはずだろ?なのにスマホには「私のほうが春樹にお似合いだしね」なんてあった・・・・・俺、俺はお前のために親友の春樹と喧嘩したんだぞ」
「春樹が悪いのよ!私は春樹のためにやったのに春樹は私を護ろうともしない!!愛してないからじゃない!!」
「だからってさ、やって良いことと悪いことがあるだろう?な?真莉愛、謝ろう?」
「絶対に嫌だ!!!あんたも嫌い!パパも!遥も!春樹も!!!みんな死んでよ!!!!きらいきらいきらいきらい!!!!!!!大っきらい!!!!!!!!!!」
パァンっ!!
「・・・・っ!!!??」
遥様の傷を見てくれた女の子だがあまりの修羅場にポロポロと泣きはじめたかと思ったらマリアの方にゆらりと歩いていった
あまりの女のブチギレ具合から落ち着かせてくれると期待したのだが猛烈なビンタをした
口笛を鳴らしたくなったがそれをしたら後で遥様にボコボコにされるだろう、状況を見守ることにした
「最低です!!あなた達も!!!私も!!!!!」
待機命令を出し、彼女のことをデータで知らせるように伝える
アジア系の女性、遥様の頬の傷を消毒してくれた
大学の関係者に見えていたがもしも治療ではなく毒だとすれば一気に危険人物となる
傷は魔法で治るのだが血がにじむ傷の写真は撮ったとは言え裁判を有利にすることを考えればドクターの診断はあったほうが良い
故にこの場では治癒の魔法はしないようだ
一般的な治療ならしておいてもいいと考えて好きにさせていたのだが未知の彼女は危険だ
腰の魔道具に手をかけてスマホで情報を待つ
「貴方、裕也さんですよね!?」
「え、はい」
「春樹は駐車場の隅で夜まで倒れてましたよ!!勘違いで手を出すなんて最低ですし、下手したら死んでてもおかしくなかったんですよ!わかってますか!!!??」
「あ、う・・・」
彼女は関係者なのか?
遥様のブラックリストには居ないようだがそれで逆に危険度が上がる
彼女はボロボロと涙を流しながらキレていて叫んでいる
「春日井先輩!貴方も最低です!!」
「わ、私!?」
「なんでイベント無茶苦茶にしてこんなことしてるんですか!!?」
「え、それは真莉愛が突っかかってきたからで」
「避けられましたよね!?クライミングで見ましたよ!!春日井先輩の筋力なら別の場所にも行けましたよね!!?」
「ま、まぁそうだけど逃げたくなかったし」
「さいっていです!!!」
度胸あるなこの娘
下手したら即死するようなパンチを繰り出せる遥様にくってかかっている
彼女の情報がまだ上がってこない
遥様周辺のブラックリスト入りしている存在ではないということだけは逆にわかった
「もっと言ったげてこの糞女に」
「糞女は貴女ですよ坂上真莉愛さん!!!」
「え?私??」
「友達を騙して!1人の人間をどん底にまで落として!それで春樹を略奪して!!ちょっと人に責められたからって春樹をぽい捨てですか!!!??しかもすぐに男乗り換えて!!!今でも幼稚な書き込みして!!人様に迷惑かけて!!!春日井先輩怪我させて!!!!!イベント台無しにして!!!!!!今も謝ってるお父さんは貴女のために謝ってるのがわかんないんですかぁっっ!!!!!!!!!!」
絶叫だ、窓がピリピリするほどの大声である
言い分はどれも的を得ている
俺が怒られているわけではないのに思わず身が引き締まりそうだ
「それで!!わたしもさいっていです!!!」
「先輩ってあんたは誰よ?」
「私、私は薬学部1回生の星野律子です、春樹さんをファミレスで拾ってからお付き合いさせて頂いてます」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「私もあんな男と付き合って、ほんともう、みんな、みんな!さいっていです!!!!」
うわぁ・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます