第185話 ヨーコとのデート


「この異世界は幸せですね」


「そうだね」



ヨーコと一緒にソファーでゴロゴロしながらテレビを見ていた


この世界に争いはあっても種族を滅ぼそうという邪悪なものはいない


夜でも公園ではデートしている若者がいる


それも他人や獣、暗闇に中になにかいるかもしれないなんて警戒していない


追い剥ぎや盗賊、闇討ちの可能性なんて考えもしていない


ヨーコはこちらの安全をすごく驚いていた、僕もはじめはびっくりした



「ここはお城?ですの」


「ショッピングセンター」


<人がいっぱいですぅ>



今日来たのは大型ショッピングセンターだ、一度はるねーちゃんと来たお店だ


欲しい物もあったし買い物で来たのだ



「ついでに見て回る?時間もあるし」


「はい!」



嬉しそうに人を見ているヨーコにちょっと嬉しくなった


僕もこのおっきな施設にとーさんとかーさんと一緒に来るのが好きだった



「なんですの?!階段が動いてますわ!??」


「エスカレーターだね」



レアナービルのエレベーターにも驚いていたがエスカレーターにも驚いている


たしかに珍しいよね、後ろに列ができていたので背中を押してエスカレーターに載せる


上の階の服と靴を見に行く



「これは・・・値段はいくらぐらいですの?」


「1500円だね」


「せんごひゃく・・・嘘ですよね!?」



なにやらシャツに触れて驚いている


そうだよね、向こうでは衣類はすごく高い



「それに簡素とは言えほとんど同じ見事な作りで・・・職人を引き抜いてはいかがでしょうか?」


「よくわからないけど服選んでてね、試着室はあそこだから」


「一緒に見てくださいまし」


「えー、うーん、分かった」


<私にも選んでください!>


「わかりました」



レアナー様にも人のサイズになってもらう


レアナー様とヨーコについていく


服を選ぶというのにこれが良いあれが良いとキャイキャイ言っている


同じ服を一緒にずっと見たかと思えば別の服を裏返してまでよく見てまた最初に見ていた服を見直している



「これはどうです?」


「可愛い、かな」



たまに意見を求められる



両方買って帰ろうよ・・服なんてどっちでもいいよ・・・



買い物かごに山のように服を入れて試着室の横で着替えを待つ


このお店ははるねーちゃんが言うにはりーずなぶる?で質もいいらしい


スマートフォーンをチェックするとちょうど2分前に信徒から連絡が入っている



「レアナー様、ヨーコちょっと信徒のところ行ってくるね」


「これはどうです?」


「わっ、かくして!?」


「この国では海でも肌を晒してましたし・・・」


「水着と下着は違うからっ!!?」



下着で試着室を開けたヨーコだがすぐにカーテンを閉める


恥じらいってものはないのか?!



「ちょっといってくるから待っててね!」


「「はーい」」



レアナービルでも見た女性信徒の1人にここは任せておく


注目を集めていたし目の合った信徒の店員さんも近付いてきたので一言伝えて先に行く



「任せたよ」


「はい、お任せ下さい」



服のコーナーをでてまっすぐ進んで狭い通路に入って、2度曲がる


先にあるのはトイレだ



「何のよう?」


「チッ!!?ぐぁあああっ!!!??」



トイレにまでついてきたサングラスの男を曲がり角で待った


懐に手を入れたので武器を出すつもりだったのだろう


最近練習している電撃の魔道具をまっすぐ喉に当てて使った


ついでに拘束できる魔道具で麻痺させておく



脇の銃を奪ってスマートフォーンで信徒を呼んで介護用のトイレに入れておく


財布も携帯も持っている、スマートフォーンはパスワードがかかっているようだ



レアナー教の活動をしている信徒の中にはヨーコに鍛えられた戦闘要員がいる


聖騎士と言うにはまだ弱いが毎日防御魔法をかけているし魔道具も持っている、彼らにすれ違いざまに銃を渡しておいた


気を取り直してフードコートの信徒を見る


机の上には箱に詰められて更に袋に入ったドーナツだ



「まだ続きが来ます」


「わかった」



収納に山ほどあるドーナツをいれていく


今週1個100円らしいのでお店が困らない程度に欲しいと連絡していっぱい買うことにしたのだ


【収納】にガンガンいれていく


周りの客が【収納】にいれていくたびに「おー」っていうのは面白い



「すいません、一般のお客様がおられますので予定数には残り30分ほどかかりますが」


「わかりました、彼にはこのままいてもらうので引き続きわたしてもらえますか?お金は先に渡した分で足りますか?」


「はい、大きく余ります、ちゃんと精算しますのでお待ち下さい」


「ちょっと他のお店にも用があるから行ってもいい?」


「勿論です!」



信徒には先に100万円ほど持っていってもらっていたし足りてよかった


先に渡してお金の計算してもらうように店長さんに言っておいたし・・・誰とでも話せるスマートフォーンってすごいな


靴屋に寄って店員さんに話してすぐに服屋に戻る



「決まりましたわ!」


「どうですぅ?」


「女神様は何を着ても似合いますね」


「ありがとうございますぅ、でも、そういうときはお嫁さんから褒めるものですぅ」



ニヤつくレアナー様におでこの真ん中を人差し指でつつかれた



「よ、ヨーコも似合ってるよ」


「嬉しいですわぁ!!」



女神様もヨーコも涼しそうな薄めの色のドレスを着ていた


さっき見せられた下着はなんとなく「恥ずかしいもの」って知ってたしなんかヨーコを見るのが気恥ずかしい気がする


店員さんがレジに山ほど服を持っていって畳んでいるのでお金を払って収納していく


普通のお客さんが困らない程度に全部買うっていったんだけど売り場がガランとしている


やけに笑顔の店員さんと引き付いた笑顔の店員さんがいるのは不思議だったがお金を払った


レアナー様とヨーコの分は混ざるといけないからヨーコに収納袋にいれてもらった



「ありがとうございました!またのお越しをお待ちしております!!!」




フードコートに帰ってもまだドーナツは出来切っていないのでたこ焼きを買って食べる



「これはなんですの?」


「たこ焼きっていう食べ物、熱いから気をつけてね」


「「んんぅ~~~~~!!???」」



レアナー様もヨーコ熱かったんだろう、こっちの食べ物は何でも美味しいから油断したようだ


すぐに水を信徒が差し出していてそれを飲んでいた



「~~~~~~っ!」



あまりの熱さに警戒したのかゆっくり食べているようなので僕はまた離れて靴屋でも靴を収納していく


靴は初めから箱に入っているので収納が速い、レジに通して店の空きスペースに出してもらっていてよかった


フードコートに戻るとたこ焼きが熱かったのかまだ冷まして食べている



僕はたこ焼きはほんのり温かいぐらいが好みなんだ


甘辛いソースに青のりとかつおぶしがよく合う


熱々のカリッとしたものよりも少しソースが染みたしんなりした生地が好きなのだ


紅生姜は添えられていたがあってもなくても良い、出汁が生地から香るように感じられて美味しい


ただ生地とソースがメインで美味しいのは確かだけど多分それだけだと飽きる、食感のクニュっとしたタコが入ってるからこそ飽きずに食べられるのだ


マヨネーズ付きも食べる、マヨネーズのこってりした美味しさが追加されてこれはこれで合う


マヨネーズの有無もどちらでも美味しく食べれるのだが両方買ってよかったと思う



美味しいものって食べてると幸せだな


ふとヨーコを見るとふにゃりと笑顔を返された



「ねぇヨーコ、ヨーコは幸せ?」


「はいっ、わたくしは元杉といれて幸せですわ!」



本当に嬉しそうにヨーコは言う


旅をしているときは気付かなかったけど本気で好かれているのはわかる


いつだって僕の役に立とうと頑張ってくれている、よく空振ったりポカをやらかすけど



「本当にこっちにいてもいいの?」


「わたくしは元杉といるのが幸せですし、元杉を幸せにしてみせます!元杉のいない世界になど意味はありませんしどこまでもついていきますわぁ!」



あまりにもまっすぐ言われて少し恥ずかしくなった


照れ隠しに最後のたこ焼きをヨーコに差し出すと食べてくれた



「じゃあ帰ろっか」


「はい!」


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