第94話 神殿と邪教と中立


神殿の他の部屋に入ると偉そうな服の人が寄って来た


学校の校長先生のような威厳を年齢や皺からが見て取れる



高齢に見えるが恐ろしく鍛えられた体つき、袖なしの服から覗く腕は僕の胴程もある



禿げ上がった頭も薄っすらとだが傷跡だらけで歴戦の勇士だというのが見て取れた


不機嫌そうな顔つき、目の下に隈がはっきり見れる


衣類からおそらくこの神殿の偉い人だろう、うちの信徒ではない



「洋介聖下、お帰りを心よりお待ちしておりました!こちらの冒険者は?」


「洋介です、よろしくお願いします、こちらは遥、異世界で僕の婚約者と部下の奈美です」



普通の子供だったらこの神官を見て泣きそうだな見て泣きそうだな、まるでオーガである



「なるほど、あおきちきゅーの方でしたか、私はチーテック教、エマンスです」


「よろしくお願いします」


「よろしくです、あの、言葉通じてますか?」


「はい、ちゃんと通じてます、この出会いをサシル様、エレロミア様、そして我が神チーテックに感謝します」



チーテック様は戦神の一柱で民を護ることで加護を授かることがある


槍と盾を使うのが得意な者が多く、僕の仲間にも加護を得られたものはいた


自己治癒能力や耐久力も凄いはずだが疲れて見えるのはどういうことだろうか



「何かありましたか?」


「魔王軍残党狩りで苦労してまして、邪教徒と結託してなにか企んでいるようです、先程拠点を潰したので大丈夫だとは思いますが・・」


「そうですか、我が神レアナー様の治癒を受け入れますか?」


「いえ、我が神チーテックは護民の加護、これも試練として乗り越えることこそ我が信仰と心得ております、お気遣いには感謝します」


「そうですか、では私たちはレアナー様のもとへ行きます」


「では私も仕事に戻ります」



気を取り直してレアナー神殿に向かおう


ここは複数の神を祀る神殿である


町の入口からも比較的近く、中心部からは遠い



神様によってはある程度決まった場所に神殿があることを好まれる



防護と安寧の神ケシーの神殿は必ず街の中心にあるし、風と鳥と友の神などは街で最も高い位置が好まれる


レアナー神殿は特徴として街で安全性が高くかつ交通の便の良いところにある


大通りを歩いていくとすぐにわかった


というよりも先程の兵士たちが道を開けていてくれた


歓声の中を歩いて中に入る



「おかえりなさいませ、聖下、ささっ、こちらへどうぞ、神殿長がお待ちです」


「はい」


「そちらの者達は?」


「こっちは遥、僕の婚約者でこっちは奈美、僕の部下」



ニマーっと笑う神官たち


要件はわかる、あれ程僕が避けていた婚約だ


結婚や婚姻というワードを絶対に逃さない我が教徒共だ


せめて歌を捧げさせてくださいとか祝福あたりで勘弁してほし・・・


「なるほどなるほど、では今日は婚姻の儀としましょう!であえー!聖下が婚姻なされたぞー!!であえであえーー!!!!」



このじじい・・・・!??

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る