第21話 乙女の尊厳


最悪も最悪、人生のどん底を体験して手術して寝てた、はず


夢の中で最後に春樹と真莉愛をボコボコにできたのかな?よく覚えてないが病院だった


まるで自分が洋画の悪役みたいに大暴れして、悲しむ母にひっぱたかれ、何故か癌で同じ病院に入院していた康介おじさんがアクション映画のように私を取り押さえた


そんな夢を見た気がする


夢だと思いたい



「おはよう、はるねーちゃん」


「おはよ、よーすけ」



ベッドの横にいたのはあの日死んだ洋介だった


背丈もそんなに変わってない、元気そうだな、周りもやけに静かで、それでいて少し眩しく見える


・・・・・そっか、これがお迎えってやつか



「早速だけど、はるねーちゃん暴れないでくれる?」


「・・・・・へ?」



腕を動かすと動かせない!!?



「洋介!?なんなのこれ!!!??」


「はるねーちゃんが大暴れするから」


「ふぁ!!?」


「暴れないって約束できる?」


「分かった約束する、これ外してよ、それよりあんた生きてるの?すごい嬉しいんだけどなにこれ?ええ?なにこれぇっ!!!??」



全身動かしてみるもギシギシガチャガチャベッドやロープがなるだけで身動き一つできない


ビチチ


いや思い切り動けば外れるかな?



「ねーちゃん?暴れるとみんな悲しむよ?外したげるから落ち着いて?ね?」


「わかった、すぐ外してくれたら落ち着く」



洋介はもたもたと鎖やロープを外していってくれた


ま、まずい、早くしてほしい



「おねがい、とにかく早くして欲しいの、誰よんでも良いから、ね?」


「僕の魔法でここ誰も入れないよ、ちょっと待って結び目が固くてさ」



魔法?そんなことよりちょっと、いや、かなりトイレに行きたい



「じゃあ人呼ぶね、待ってて」


「早くね」



洋介が杖を振ると周りの光る壁が消えた


魔法?さっき聞いたけど意味分かんないんだけど


洋介がでてくと母さんたちが入ってきた



「お願い、トイレ行きたいから外して」


「わかったわ、でも暴れないって約束できる?」


「うん、もう、ぎりぎりっ」



父さんが洋介を連れ出してくれて母さんと戻ってきた父さんで拘束は解けてトイレに駆け込んだ


なんとか洋介には乙女の尊厳を保てたようだ



・・あれ?



スッキリして違和感に気づいた


いつものように体を傾けるだけで痛みが走るわけでも、吐き気がおさまらない、胃腸の位置がわかる程の気持ち悪い違和感もない



手を洗って、鏡を見る



眉毛がある、髪がある、肌も黄色黒い感じはなく元の肌色だ



「え?うそ?なにこれ?」



コンコン



「遥?大丈夫?」


「うん、いま出る」



しばらくぼーっとしてしまった


治った?魔法?洋介?いやとにかく治った?何ヶ月も寝てたの?私?


顔も洗って確認する、化粧でどうにかしてるわけじゃない



「わたじ、なおっだぁぁぁ!!!!???」



ドアを開けると疲れた顔の母さんが待ってて、思わず泣いてしまった


グスグス泣く私を母が抱いて頭をなでてくれた



「そう、ところで大暴れしたの?覚えてる?」



ちょっとお母様、お笑顔が怖いですわ

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