第12話 ショタ神官と国家権力<神官サイド>


看板を持って歩くが周りに人がいない


ちょっと気合を入れて大きめの神官服にサンダル、神官用の帽子も装備してる


いつもの動きやすいものではなく少し重たいし生地がチクチクするが大きめで目立つやつにしてみた


いつ誰が話しかけてきても大丈夫なようにだ!


遠くに歩いている小さい子供とお母さんかな?子供がこっちを指さして・・あれ?別の道に行っちゃった



<いつか見てくれる人がいますぅ>


「そうですね」



とはいうものの、むしろ遠くに人がいたらちらりとこっちを見ると大きくそれて歩いて行く


それにしても少し暑い、下は薄着なんだが上着は膝まであって分厚い、熱気が少しこもってるのがわかる



「んんん?」



少しこっちを見てくる警察の人がいた


若くて髪をまとめてるおねーさん、藍色でビシッとしていてカッコイイ、肩のやつ無線機だっけ?



「こんにちは」


「こんにちは」



元気よく挨拶を返す、やっぱりこの看板が気になったのかな?信徒になってくれないかな?



「何してるの?」


「いま病院に行ってるとこです」



向こうでこんな看板持って歩いてたら祈らせてくださいって言われるだろうし、ちょっとワクワクする、ごくり



「一人で?お父さんとお母さんは?」



父さんと母さんは亡くなったんだけど、言葉にすると少しだけ思い出してしまう



「5年前にふたりとも事故で」


「っごめんね!でも職務上の質問だから、あ、そうだ、そこが交番なんだけどお茶でも飲んでいかない?話が聞きたくてね」



気を使わせてしまったなぁ


でも少し暑くて汗もかいたし、お茶は飲みたい


急いで病院に行くものではないし、それに交番の中って少し見てみたい



「いきます」



カランカランと氷の中の麦茶が音をたてた


麦茶は正直好きでもなかったんだけどずっと飲んでなかったからすごく美味しそうに見える


ごくごく飲んでしまって、やっぱりこの味だと涙が出そうになる


向こうのお茶はそもそもの味が違ってたなぁ


大っくて丸い金色のやかんからもう一杯入れてもらえた



「病院にはなんで行くの?」


「伯父さんがガンって病気で入院してて」



ちびちび飲む、やっぱり麦茶って良いなぁ


机においてあるお菓子も食べていいかな?



「ステージフォーっていうらしいんです」



確か病院でちらりと聞いたのはそんな病名だったはず


向こうにはない光沢の包装、つばが出てしまう、ゴクリ


そういえば昨日のお風呂上がり、アイス食べてなかったなぁ



「お、お菓子も食べるといいよ」


「いただきまーす、あ、こんな美味しいの初めてかも」



人生で一番美味しいお菓子かもしれない


向こうでみんなが喜んでかじってたサトウキビみたいなのはお菓子とは認められません


青臭いし固くて筋っぽくて、どうしてもお菓子とは認められません



「じゃあご両親がなくなった後はその伯父さんと一緒に住んでたの?」


「いえ、色んなところに行ってました」


「ふぐっ」



異世界で勇者兼任神官やってたなんて言っても信じてもらえないしね、こっちのクッキーのもすごく美味しい


麦茶を飲んだからか少しトイレに行きたくなった



「ちょっとトイレ借りてもいいですか?」


「いいよ、奥の右ね」



丸い椅子から立ち上がる



「ありがとうございます、よっと」



コックみたいに長めの尖った帽子を机において服を脱ぐ、この服結構ゴワゴワするし暑い


ちょっと抜いで涼しくなって僕はトイレに行った


なんか警察の人の顔が悲しそう?なんだろ?



トイレでスッキリしてかえると色々聞かれた


向こうでは色々あったけど、できるだけ隠して話す


色々あった、潰されたり、焼かれたり、埋まったり・・でも僕はしたいことがあったからがんばれた


頑張って頑張って魔王も倒せた


隠して話せたはずだが、あれ?警察の人泣いてる?



「あの、泣いてます?」


「ーー花粉症でね」


「あぁ目が痒くなるやつ!大変ですね」



あの目が痒くなって鼻がつまるやつ!


かーさんが春ぐらいになるとティッシュ持ち歩いてたっけ、箱で


話し終わるとビニール袋いっぱいのお菓子をもらえた



「わっ、こんなにもらっても良いのかなぁ」


「んっ・・・病院行くんでしょ?持っていくと良い」


「わー、ありがとうございます!あなたに神の祝福を!」


<わー!ありがとうですぅー!>



お見舞いとかってやつかな、すごく気が利く人だった!


お菓子だし、善意だし、神様と僕への寄付と考えて祝福しておく、花粉症治ると良いなぁ


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