第2話 ここから?え?ここから??


ジャジャジャ!!ドボンっ!



久しぶりの海、しょっぱくて、痛くて、死にそう


神様の助けで地球へのワープが簡単にできたけど足場はないし崖を滑って海に落ちた


服は重いし、思ったように動けない


打ち寄せる波でつかむことも難しい崖を必死につかむ



「ボゴゴゴゴ、げほっゴホッんんっ、何な、ん!?」



岩をつかんで登ろうとするも手が滑るし、服が重い


なんども崖に叩きつけられながら横に伝っていく


荒れた息を整えるのに時間がかかった


なんとかたどり着いた岩場に寝転び、周りを見る


周りは斜面の急な森、登れるかもわかんない崖


兎に角息を整えた



「なにこれ」


<貴方が召喚されたのはあのあたりですぅ>



指がさされているのは崖の上、崖の途中に松の木が横に生えている


うっすら半透明の女神を見て、いつものことだと思いつつ、二度見してしまった



「ついてきたの!?」


<はい、本体じゃないですぅ>



半透明の女神は、倒れて息を整えている僕のすぐ上にいた


ちいさい、いや、いつも話しかけてくるときは手の平ほどの大きさしかなかった


いやそこじゃなくて女神って来てもいいの?!



もうちょっとまともな場所にしてよ



青い空に明るい太陽、気持ち悪い衣服


ちょっとまだ苦しいが一応岩場で寝て息を整えた


ぜー・・はー・・・


まぁいっか


どこから上がれるのかわかんないけど周りは岩場で急な斜面の崖、落ちた場所は軽く10メートルは上だろうか?落ちてすぐ下が岩場じゃなくてよかった


転移魔法は魔力を神様に差し出して神様任せだった


家をイメージしてたのにまさか地球から僕が消えた地点


ガードレールを突っ切って岩肌に激突した場所だった



あそこで頭が割れたのかなー・・

 


何もないこの場所だけど久しぶりの日本を感じた


崖の上は車が通ってて、向こうにはない音がする


飛んでるのはタカかな?いやトンビだっけ?どうでもいい



家に帰るのには3日迷った



何年前、いつもの海沿いを走って遊園地に行くはずだった、と思う


よく通ってた道だ、あんまり覚えていなかったが歩いて帰ればすぐだろなんて思ったのが甘かった


道がなんか新しい、建物も見覚えがない、こっちで合ってるかわからない


話し相手の女神様もいたし、食べ物は持っていた、怪我もすぐに癒やしたし問題はない


ただ、とにかく帰らないといけないと思って歩き続けた



<ふーん、そのてれびってどうぐでいろんなものがみれるんですねぇ>


「そうなんだ」



ずっと歩いて歩いて、段々と見覚えのある家を横切って、学校を見つけ、公園を見つけ、いつの間にか走って、走って走って、やっと帰れた



僕の家だ!僕の家だ!!僕の家だ!!!



ドキドキする、僕の家、ずっと帰りたかった


震える手を一度握って、それからドアノブに手をかける



ガチャンっ!!



ドアノブをひねるも開かない


裏に回ってもシャッターが閉まったまま


鍵の隠し場所に鍵はなかった



どうしよ・・



とりあえず裏の水道の蛇口を捻ってホースで体を洗う


着替えは持ってたけど海に落ちてから痒かったしなんか臭い気がする


ちょっと錆びた金属バケツに着ていた服を突っ込んでついでにじゃぶじゃぶと服を全部洗った


少しザラザラした洗濯ばさみで干す


同じ服は何枚もあるし着ていた服も洗っとこう


家の敷地には入れたけど家の中には入れない


鍵はわかんないけどどこかから入れないか?



窓を一個ずつ確認する



鍵どこもあいてない、だけど知ってる


父さんが鍵を忘れたときは鍵が閉まっていても建付けの悪い窓をガタガタして開けて入ってた


ガッチャンガッチャンと窓を揺らして鍵を動かす


足場も悪いしあまり力を入れられないので疲れてきた


鍵がほんの僅かに揺れて、あく、かも知れない



がっちゃがっちゃがっちゃがっちゃ・・



これ開かないの?



「んー!」



多分もうひと頑張り!


力を込めてがっちゃんがっちゃんと音を立てて揺らす



「こらっ!なにやってんの!!」


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