第23話

 このキャビン弁護士と一度面と向かって話をしてみたい、と私は思った。

 今日、外で他家のメイドと話しただけでも、相当な情報が得られた気がした。

 色々ミュゼットに頼み込んでも出てこない情報というものは沢山ある。

 少なくともペットに関しては、ある程度皆よくあることと思っている。

 それに「送り主の書かれていない」ものは、送り主=宛先という可能性も高いということ。

 そうすると、そもそもあの瓶、そして「ペット」を送り込んできたところ=「うち」。

 ハイロール男爵家ということの可能性もある。

 違うかもしれない。

 だからこれは、私の#信じたい__・__#可能性だ。

 父に何かしらの罪を見つけたいという。

 そしてキャビン弁護士の資料。

 送ってきたそれらをそのまま信じるならば、当時のハイロール男爵家がしていた買い付けルートはそのまま残ったまま、その上にペット売買をしている……

 そんな可能性。

 だけどペット売買は裏では当然の様に行われている。

 それを罪に問うことができるのか。

 それに、向こうの子供を売買するのはこの国において罪になるのか?

 ああもう本当に、私には知識があまりにも足りない。

 ふう、とため息をつき、気分を変えるべくミュゼットの手紙の方を開いた。


「元気かしら?

 私は最近とても元気!

 というのも、時々スリール子爵の家に招かれることが多くなったの。

 で、今度の件、男爵のこと、スリール子爵のお母様、もしかしたら私のお祖母様かもしれない方から、なかなか面白い話を聞いたの。

 そう、世代ね。

 資料の方、見てくれたでしょ?

 貴女のことだから、私の手紙よりまずそっちだと思うの。

 やっぱり怪しいわよね!

 スリール母夫人は、そもそも学究肌の家に嫁いできた関係なのか、元々のハイロール男爵家の人の中に、知り合いが居たんですって。

 これは生の証言よ!

 母夫人はどうしても、今の男爵は昔の男爵家の人々と雰囲気が違う、っておっしゃるの。

 じゃあどういう方々だったのですか、と私は尋ねたわ。

 すると。


『ともかく浮世離れしていた人達でね。

 当時結構大きな領地を持っていたんですがね、全部金に換えて東へ行ってしまったんですよ。

 だから向こうの商売なんて、本当に道楽で、ただもう違う文化のところで、のんびり観察したり遊んで暮らすつもりだったんだと思いますよ。

 だから今の男爵の貿易や商売に精を出すというのがどうにもぴんと来なくてね……』


 ですって。

 その一族の中の#黒羊__はぐれ者__#だったんじゃないか、と尋ねてみたんだけど、そこは母夫人、断固として違う、とおっしゃるのね。

 それほど皆揃って浮世離れしていた人々みたい。

 あとお人好しだったんですって。

 ……何かそれって、絶対国外に出てはいけないひと達じゃないか、と思うんだけど、私」

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