追放された聖女は、捨てられた森で訳アリ美青年を拾う~今の生活が楽しいので、迎えに来られても帰りたくありません!~

別所 燈

第1話 プロローグ

 二年にわたり国の為に戦い、聖女としてのつとめを精一杯果たしてきた。


 王都にもどれば、褒美はなくとも、歓迎され、労いの言葉をかけてもらえる。


 そんな期待があった……。


 戦場で疲弊しボロボロになり城に到着した私は、渇いた喉を潤すことも着替えることも許されず、衛兵たちに謁見の間に引きずり出される。


「リア、そなた、戦場で何をしていた?」


 何の労いもないニコライ王太子殿下の第一声に目を見開いた。初めて見る彼の冷たい眼差しに体がすくむ。


 気付けば、かつて一緒に戦った仲間から裏切られ、いつの間にか私の手柄は無いものにされていた。「役立たずの聖女」次々と心を抉る心無い言葉が、投げかけられる。私は、ただ呆然とするばかり……。


「無駄に戦闘を長引かせた罪で極刑に処したいところだ。だが、今まで神殿で聖女としてけが人をいくらか癒してきた功績は認めよう。お前の処分は国外追放が妥当だろう」


 どうしてそうなるのか、まったく意味が分からない。


「そんな、私達の婚約はどうなっているのです?」

「私達だと?」


 殿下が不快そうに美しい顔を歪める。


「貴様が討伐隊にはいって成果を上げなかった時点で婚約は破棄となっている」


 新たな婚約者は姉のプリシラ。残酷な現実にじわりじわりと絶望感が押し寄せる。 


 婚約者も聖女の地位も姉に奪われた私は、その後正式な処分が下されるまで、地下牢に入れられた。





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