揚州はほぼ制圧できたようだ
さて、伝令からの報告によると皇甫嵩は兗州の陳留郡で青州黄巾残党の大軍を蹴散らして、青州黄巾残党は散り散りに逃げているようだ。
黄巾残党の兵数はたしかに多いが、彼らは鎧も身に着けず武器も刀一本などというものも多く、対する皇甫嵩の兵は最前線に立つものは鉾や鎧や盾をもしくは弩などの装備を支給され隊列を組んで戦っているようだから、青州黄巾側が数だけを頼みにそれにぶつかっても蹴散らされるのが当然ではある。
だが、決して士気の高くない兵士を率いて陣を崩さずに戦えるのは、やはり皇甫嵩の歩兵運用能力の高さによるものなのだろう。
「やはり一軍の将軍としては優秀なのは間違いないのだろうな」
そして蹴散らされた青州黄巾残党の一部は豫州に逃げ込んだようだが、陳国へ逃げたものは劉寵・駱俊に撃退され、沛国に侵入したものは、徐庶・荀彧・鍾繇・淳于瓊・程普・韓当と言った俺が派遣した者たちや兗州から追い出される形となった張邈・張超・王楷・許汜・鮑信・韓浩それに陳宮も青州黄巾残党と戦っているようだ。
「ふむ、陳(宮)公台も兗州から逃げ出しているのか」
俺の言葉に賈詡がうなずく。
「はい、そのようです」
陳宮といえば曹操に仕えた後に張邈や呂布と共に反乱を起こして、兗州をめぐって曹操と戦うことになったが、その後曹操に敗北し続け徐州に逃げ出し、最終的に呂布などと共に曹操が捕らえたときに、曹操は陳宮の老母ら家族を引き取って厚遇し、陳宮の娘も嫁ぐまで面倒を看たという。
ただこれは必ずしも陳宮の才能を惜しんだだけではなく、陳宮が兗州の名士であり地元の顔役として若いころから天下の英雄や高名な学者たちと交友を結んでいた事からその家族に恨みを買えばまた兗州が乱れる可能性があったからでもあるとは思うが、曹操がその才能を認めていたのも事実であろう。
「できれば、陳(宮)公台らはそのままこちらに引き込みたいところであるな」
何れにせよ豫州南部を青州黄巾から守ることには成功しているようだ。
また豫州の沛国と隣接している徐州東海郡の独立勢力である
臧覇宣高、史実においては、黄巾の乱の頃に黄巾賊を討ち、その後は独立勢力となって、呂布と敵対したり協力したりしているが、呂布が処刑された後に曹操に採り立てられ臧覇は青州・徐州の統治を実質的に委託され、曹操が袁紹との戦いに専念できたのも臧覇の徐州統治や青州への攻撃によるものだったし、曹操の死後は一度徐州に戻っているが、その後は張遼と共に孫呉との戦いでも活躍しており演義ではほぼ目立たないが実はかなりの重要な人物であったりする。
俺は臧覇よりの使者に伝えた。
「ふむ、了解したと伝えよ」
そして俺は張遼を呼び出した。
今までは董超や呂布たちと共に行動させていたのだが、今回董超は動いておらず一緒に残っているのだ。
「張(遼)文遠、徐州東海郡の臧(覇)宣高のもとへ赴き、黄巾残党を打ち破ってきてくれ」
「かしこまりました」
彼の能力であれば何も心配はいらないだろう。
揚州では孫堅の先走りもあるようだが劉繇の下で冷遇されていた太史慈を仲間に加えたりして、劉繇の軍を打ち破って劉繇を丹楊軍および呉郡から追い出し、劉繇は王朗を頼って会稽に逃げたようだ。
その後に呉郡の厳虎も打ち破っており、ほぼ同時に黄忠、黄蓋が江夏郡経由で塀をすすめ予章郡の笮融の攻撃に成功し彼を討ち取って予章郡の制圧に成功した。
会稽以外の揚州の制圧にほぼ成功したところで揚州の豪族や民に対して布告を出させた。
「いままで戦ってきた劉繇・笮融の配下の中でも、我々に帰順する者は、快く歓迎して今まで戦ってきたことに対しての一切の罪を問わぬ。また、従軍を希望する者にたいしては、その家族の賦役を免除する。しかし従軍を拒む者に対しての強制はしない」
こうしておくことで豪族の降伏を促し、兵の現地での盗賊化も防ぐことができると思う。
一方洛陽の曹操は人質とされていた皇甫堅寿の妻子などの救出に成功したようだ。
まあこの時代は一般住宅は竪穴式で屋敷に対しても鍵などのセキュリティが万全なわけではない上に、皇甫酈をよく思わないものも多いようだったからのようだが。
党錮の禁の際でも結構な数の人間が逃げ出していたりしたが、案外警備などはゆるいんだな。
「これで皇甫堅寿と戦わずにすむかもしれんな」
俺と皇甫嵩との関係も史実においては結構険悪だったが、現状では確かに敵対はしているものの特にお互いに悪い感情はないはずだ。
最も皇甫嵩が皇甫酈の意見に耳を傾けてる限りは皇甫嵩とも仲良くはできないだろうけどな。
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