元気な孫の姿を見れるのは嬉しいものだ

 さて、取り合えす政治の手綱は握り続けるにしても、俺自身は軍事の最前線から引くことにした。


 揚州東北部は董越に孫堅、陶謙、朱治、陸康などを配下につけて劉繇などと戦わせ、献帝の保護は曹操を洛陽に忍び込ませ様子をうかがわせ、董旻には呂布をつけて弘農や河東を押さえさせるよう指示を出した。


 荊州に関しては蔡瑁をつかって士大夫達を従わせ、黄忠、黄蓋に江夏郡と予章郡を押さえるよう指示を出した。


 やるべきことはまだまだたくさんあるが、それでも孫とのんびりと過ごせる時間なども少しはできてきたのだ。


「よし! ようやく今日の政務が終わったな」


 農民や商人、軍の代表からの陳情なども含め書類に目を通して決済する仕事がようやく終わった。


 そこへ小さな子どもの声が響き渡る。


「お祖父様ー」「お祖父様ー」


 そして小さな子供が部屋に入ってきた。


「おお、董玄とうげん董白とうはく、病気などはしていないかね?」


 二人はコクと頷いて笑顔で元気に答える。


「はい!私はとても元気です!」「私もです!」


 孫の顔を無事見れるのはやはり嬉しいものだ。


 史実では董卓の一族は90歳という高齢の董卓の母から幼い孫まで全員惨殺されて遺体に火を掛けられるのだが、そうはならないですみそうだしな。


「うむでは今日はどうしようかな?」


 俺が二人に総声を掛けるとぱっと顔を輝かせてそれぞれ答えた。


「馬の遠駆けがいいです!」


 董玄はそういう。


「象棋のお相手をしてください!」


 董白はそういう。


 実際として孫は他にもたくさんいたりもするのだが、この二人は特に俺になついている。


 しかし董玄は肉体派、董白は頭脳派っぽい感じなんだな。


「うむ、どっちも一緒にやることはできないしどうしたものかな」


 そこへ書類仕事を手伝っていた張昭がいう。


「では象棋のお相手は私が務めさせていただきましょう」


 続いて張紘もいう。


「では遠駆けのお相手は私が」


「玄と白もそれでいいかな?」


「ウーわかりました」「わかりましたー」


 本当は俺が遊んであげたいのだが片方だけ俺が相手をするのも不公平だしな。


 張昭と張紘ならうまくやってくれるだろう。


 それはそれとして洛陽では強硬派な皇甫酈と穏健派の皇甫堅寿の間で意見対立が起こり、皇甫酈が皇甫堅寿を排除しようと動いているようだ。


「恐怖政治では政治的危機を脱することはできんのだがな」


 水面下では皇甫嵩に対する失望が民衆などの間で静かに拡がっており、朝臣たちもこのまま皇甫嵩の恐怖政治を放置したら、漢が危うい状態になると考えているものも多いようだ。


 本来は霊帝の死後の政争で混乱し荒廃した洛陽を復興するために安定した政治を行うことを期待されていたのに冤罪で無実のものも逮捕して処刑しその財産を奪うようなことをやっていてはそりゃ失望もされるだろう。


「青州黄巾と戦うよりも皇甫嵩たちが先に暗殺される可能性もあるかもな」


 権力者に対して暗殺が行われるのは中国の歴史では本当に珍しいことではないしな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る