第四十二話 それぞれの書簡
『前略。
ミーナに文筥を渡しておきました。改めてお礼の手紙が届くと思います。
ただ、今後、贈り物をする時には、もうすこし、わかりやすいものの方がいいと思います。
ミーナとオヅマはとても……気づきにくい人達なんです。 オリヴェル』
◆
改めてオリヴェルから文筥を受け取ったミーナがヴァルナルに送った謝礼といつもの報告
『
厳しき暑さの中に神の影宿りし
若君様より文筥が私への贈り物であったことを聞いて、大変驚いております。
このような物をいただいてよろしいのでしょうか。誠にご無礼を致しまして、申し訳ございません。また、ありがたく頂戴して、大事に使わせて頂きます。
本当に、有難う御座います。
今月は
執事のネストリ様から直々にお声がかかり、若輩の身でございますが、領主様始め公爵閣下、騎士様方、それに何よりレーゲンブルトの領民が健やかに過ごせたことへの感謝を捧げ、年神様に真摯に礼拝させていただきます。
今回は、オヅマが子供ということもあり、剣舞を舞うことになりました。
そのことでご報告がございます。
若君がどうしてもオヅマの剣舞する姿を見たいと
申し訳ございません。
本来であれば、領主様からの承諾の可否を訊くべきところですが、おそらくこの手紙が帝都に届く頃には、神事は既に終わっていると思います。若君の体調については、万全の注意を払う所存です。どうかお許しくださいませ。
若君は大変勉強熱心であられます。私がお教えできることも、もう
できれば早急に、よき家庭教師に教えを乞うことが必要と考えます。
僭越なことを申し上げているかもしれませんが、何卒ご一考頂きますよう、宜しくお願いいたします。
この一年の豊穣と平和に感謝して、
◆
ミーナの手紙と一緒にオリヴェルからの短信を受け取ったカール・ベントソン卿からオリヴェルへの手紙
『
新たなる年の燦々たる
わざわざのお手紙痛み入ります。
早速、若君の世話係であるミーナへの贈り物の件ですが。
今月ようやく新年で帝都にも様々な市がたち、他国からの珍しいものも多いので、その中から髪飾りを選ばれました。前回の贈り物でよほど反省されたのか、先月来、色々と悩まれておられました。近日中に送られるようです。
もし、ミーナが恐縮して受取を渋るようであれば、若君からもそれとなく後押しいただけると幸いです。
若君が父君の幸せを願って下さっていることに、
また、最近では騎士団の修練を見学されているとの事。騎士諸輩を代表しまして、御礼申し上げます。
若君の関心あることを知って、騎士達の士気も上がることでしょう。
ただ、この暑さの中であります故、くれぐれもお体にはお気をつけください。
年末の神殿の儀式にもお目見えされたと聞き及んでおります。日に日に健やかになられる若君のご様子に、ヴァルナル様も大変喜んでおられます。
今年は、おそらくですが、レーゲンブルトに戻るのも早くなる気がしております。再び
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