第6話プレイキャッチ

 何度もダッシュを繰り返す僕たち。そろそろ本気で死人が出そうなぐらい走り続ける。今、僕らの体を動かしているのは気合いと根性だ。


「よし。いいだろう。これからも毎日、陸上部か!と言うぐらい走らせてやるからな。それでは『プレイキャッチ』を始める。それぞれグローブをはめろ」


 信長監督の言葉に誰一人として理解できてない。そして三年生のキャプテンである市井さんが信長監督に訊ねる。


「ハアハア…、監督!『プレイキャッチ』とは何のことでしょうか?」


「ん?『プレイキャッチ』は『プレイキャッチ』だろうが。お前らが普段やってる『キャッチボール』のことだ。俺は野球に関しては本場アメリカの言葉を使う。向こうでは『プレイキャッチ』と呼んでおる。だから『プレイキャッチ』だ。市井。キャプテンのお前が率先して声を出せ」


「はい!プレイキャッチぃーーーー!」


「おう!」


 市井キャプテンの掛け声でそれぞれがいつもの相手とキャッチボールを始める。そして僕は『あること』に気付く。多分他の多くのものもそれに気付いているはず。それはあれだけ走ったことで体力が消耗し、余計な力が入らず自然なフォームでボールを投げようと体が勝手に動くことである。


「一球を大事にしろ。イメージすることが大事だ。同点の九回裏ツーアウト満塁。自分がさばいた打球を投げてアウトにするのをイメージしろ。漫然と投げるな」


「はい!」


 余計な力が入らないと体全体を使ってボールを投げようとなる。硬式球は正しい握りで正しいスピンをかけてやると綺麗な軌道で相手向かって飛んでいく。


「相手の胸へ正確に投げろ。胸に来たボールは一番捕りやすく、また、投げる動作へ移しやすい」


「はい!」


 どんどん距離を伸ばしていく。遠投も体全体を使わないと相手までノーバウンドでは届かない。でもあれだけ走った後だから余計な力が体にかからないから。綺麗なフォームで投げられる。


「おい。『プレイキャッチ』に遠投は必要ない。塁間を正確に投げることが大事である。そしてとにかく一球も無駄にするな。漫然と投げるな。一投一投に集中して投げろ」


「はい!」


 そして『プレイキャッチ』が終わってから信長監督が一度全員を集める。そして送球が苦手な元山が信長監督に言われる。


「元山。お前のボールの握りを見せてみろ」


「はい!」


 そして握りを見せる元山。僕と同じ二年生でファーストを守っている。そして元山は高校から野球を始めた。そしてその握りを見て信長監督が言う。


「その握り方は間違った握り方である。正しい握り方はこうだ」


 そう言って信長監督が正しい『フォーシーム』と呼ばれるボールの握り方を見せた。


「これは通称『逆C』と呼ぶ。アルファベットの『C』を逆にした上の縫い目に人差し指と中指をかける形である。この形だと長いはずの中指と人差し指がバランスよくボールの縫い目にかかる」


 そしてボールを真上に投げてはそれを片手で掴む信長監督。そしてその掴んだボールを僕らに見せる。信長監督の握ったボールは『逆C』で握られている。何度もボールを頭上に投げては掴んでそれを僕らに見せる信長監督。ボールを捕った瞬間に素早く右手の中で握り替えをしているのだ。


「この握り方を体が自然と覚えるようにしろ。基本的にピッチャー以外、野手は全員この握りに持ち換えたらすぐなるように。意識すれば一週間もかからず身に付く」


「はい!」


 それでも『送球』に難がある選手は多い。また信長監督が言ったことは多くの選手がすでに身に付けている。


「それではこれから『ペッパー』を行う。三人一組となれ」


 え?『ペッパー』って塩コショウのことを連想してしまう僕たち。とにかくこれから『ペッパー』が始まる。

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